訂正申立書(4月1日)|平成31年(ヨ)第21033号地位保全仮処分命令申立事件

平成31年(ヨ)第21033号 地位保全仮処分命令申立事件
債 権 者 前 田 史 門
債 務 者 プレカリアートユニオン
上記代表者代表者  関 口 直 子

訂 正 申 立 書

平成31年4月1日

東京地方裁判所民事第36部 御中

債権者   前 田 史 門

第1 はじめに

本書面では,債権者の地位保全仮処分命令申立書(3月19日付)のうち,第3(申立の理由)及び第4(統制処分が違法であること)を訂正し,関口氏が本件統制処分を配信した電子メールの問題に言及しつつ,より簡明かつ具体的な主張立証を試みる。

また,当初の申立書では,債務者の行為と関口直子氏の行為の分別が不十分となるきらいがあったから,本書面をもって訂正する。さらに,貴庁の示唆を踏まえ,保全の必要性(第5)についても訂正する。

本書面では,債務者の組合規約(疏甲8)を,単に「規約」という。

第2 本件統制処分の経緯(訂正前の申立書第4の1及び2)

1  債権者の入職

債権者は,平成28年6月以来債務者の組合員であったところ,株式会社Cとの係争(貴庁平成30年(ヨ)21074号事件)中であった平成30年5月19日,債務者の申込を受けて,債務者の書記局アルバイトとして勤務することになった。賃金は時給1200円とされた。これらの労働条件は,債務者が保管する執行委員会の6月度議事録に記載されている。

以来,債務者の指示に基づき,団体交渉や不当労働行為救済申立事件の手続,刑事告発,労働相談などの法律事務に従事している。11月には,時給1500円に昇給された。この昇給も,債務者執行委員会の11月度議事録に記載されている。

2  債務者の組合運営と労働条件

債権者は,債務者において精力的に職務に臨んだが,他方で,債務者の組合運営や労働条件の実態については,深い疑問を持つようになった。

債務者では,規約上,債務者組合員の直接無記名投票によって大会の議決権者である代議員を選出することができるが,実際には,登記上の代表者である関口直子氏がめぼしい債務者組合員に電話をかけるなどして代議員を指名し,出席させるか,または自らを名宛人とする委任状を提出させていた。

いっぽう,債権者を含む債務者組合員には,関口氏によってすべての代議員が指名された後,大会の開催日時が記された通知書が郵送されるだけであった。代議員選挙,大会における役員選挙ともに,選挙権,被選挙権のいずれもが剥奪されていた。

(もっとも関口氏は,大会の現場に来れば立候補できたと主張するが,大会日時の通知書にそのような案内はないし,規約・選挙大会規定にも,かかる規定はない。そのうえ,結局は清水氏が指名した代議員によって,なんらの事前の選挙活動を経ずに投票されるのであるから,事実上,選挙としての意味を持たない。)

また,労組法の明文で規定された労働組合員の権利である会計閲覧権さえ剥奪されており,つまるところ,債務者の活動資金の全部を負担する債務者組合員らは,みずから選挙してもいない関口氏ら執行委員に財産をほしいままにされ,その使途さえ報告されていなかったのである。

他方で,債権者を含む職員の労働条件も,差別的かつ違法なものであった。組合の各種の集会や会議,抗議活動が「出勤日」と見なされるか否かは,その職員が実際に果たす役割によってではなく,月給制の専従者であるか否かによって決まっていた。

また,月給制の専従者であっても,有給休暇は一切取得できず,残業代や休出手当の支給もなかった。任意の活動であるはずの各種の集会や街宣活動も,任意といいながら実際には債務者の指揮監督下に置かれ,人事評価ないし査定の根拠,理由とされることがあった(以上,疏甲1の団交申入書にも詳述)。

3  関口氏による債務者の私物化

このような状況のなか,平成30年11月から12月の執行委員会にかけて,関口氏の「行動費」(一般にいう人件費,すなわち賃金,役員報酬,業務委託費を,債務者ではこう呼んでいる。)を毎月40万円に増額し,翌月には,増額後の額を前提に1ヶ月分の冬期賞与を支給する決議がなされた。また関口氏の自宅に設置するという12万円の監視カメラの代金を,債務者が負担する決議もした。

その極めつけとして,2月1日から10日にかけて,関口氏は米国の労働運動を視察するとして外遊,約30万円の費用を債務者が負担した。

執行委員会の出席率は低く,毎月,12名のうち5名前後の執行委員が欠席して関口氏に委任状を提出していたため,関口氏は常時,半数前後の議決権を握っていた。すなわち,前記の各決定は,事実上関口氏の専断であった。

債権者は,もとより書記局アルバイトとしての労働契約上の権利のみならず,債務者組合員として組合運営に参加する権利をもっていたから,折に触れて関口氏や書記長の太田曉彦氏に意見し,執行委員会の場でも発言しようとしたが,関口氏は「これ以上,私に,この問題で時間を使わせるのはやめてください。」と激昂して話し合いを拒み,むしろ債権者を警戒するようになった。

そのためか,関口氏は,平成30年11月の執行委員会以来,慣行上出席者全員に配付していた手許資料を,執行委員にしか配付しなくなった。また,平成31年3月の執行委員会では,債権者が評決に先だって質問をしても,関口氏はこれを無視した。このように関口氏は,債権者が債務者組合員としての意見形成をすることさえ妨げるようになっていった。

そのうえ,一部では,金銭解決の見込があり,そうなれば大口の拠出金(債務者組合員が使用者から得た額の2割,規約第22条3)を支払うことになる債務者組合員に,虚偽のことを述べながら和解退職をせまることまでするようになった。

このような行為は,債務者組合員の意思に反しながら選挙されてもいない執行部の利益をはかるという,労働組合の趣旨や目的に真っ向から反するものであり,事実上の非弁行為といわれても仕方がない行為であったので,債権者としては,強く遺憾に思った。

4  DMUの結成と団交申入

上記のような労働条件と組合運営の問題,何よりも,書記局の労働条件が公的な規範である労働法によってではなく,選挙されたわけでもない執行部とりわけ関口氏の一方的な評価と法の許容範囲を越えた裁量によって決定される点は,労働者たる債権者を不安に陥れるために十分なものであった。

また,労働組合員として組合の運営に参画する権利を行使すると,結果的に関口氏から警戒され,労働者としての待遇を下げられたり,仕事を外されたりする危険がともなった。

そこで債権者は,このような債務者における労働環境や,労働条件決定の枠組みを近代的なものとし,ひいては債務者組合員としての権利行使と両立できる組合として立ち直らせるためには,労働組合を結成して団体交渉を申し入れる以外にはないと考えるようになった。というのも,団交であれば,既に述べたような「忙しい」といった理由で,これを拒むことはできないからである。

3月2日,債権者は,有志をもってDMUを結成した。3月9日,執行委員会の開催に先だって労働組合結成通告兼団体交渉申入書(疏甲第1号証)を手交した。

DMUは,債務者の書記局アルバイトや専従者のほか,一般の債務者組合員でも加入することができる。

その理由としては,第1に,会計帳簿が(違法にも)非公開である以上,誰が実際に債務者から賃金の支払を受けているのかが,本人の自己申告による以外では特定できず,賃金支払の有無によって組合員たる資格を制限しても実効性がないからである。

第2に,債務者では組合活動の名のもとに,債務者組合員を,法的に許されるボランティアとしての指揮監督関係の限界を超えて無償労働させることが横行していたので,現在賃金の支払を受けていなくても,賃金を支払うよう要求しなければならない場合が考えられたからである。

第3に,現に債務者に労務を提供していない債務者組合員であっても,その者が債務者に対して抱えている問題意識は,往々にして債務者職員の労働問題と密接に結びついており,DMUの仲間として迎え入れ,共同して解決のために取り組むことが合理的であったからである。

5  団交拒否と不当労働行為

ところが関口氏は,団交申入の直後から強烈な組合嫌悪の意思を示し,「前田さん,クセが出ましたねぇ。クセが出ましたねぇ。また,焦って,不安になって,大事なものを失いましたねえ。」などと発言して債権者を威嚇しつつ,まったく合理的または正当な理由がないのに,債権者が担当していた業務である中央フードサービスの残業代算出業務を取り上げるなど,不当労働行為としてのパワーハラスメントを加えはじめた。

関口氏の不当労働行為は次第にエスカレートした。3月13日には債権者に「回答書」(疏甲11)を手交し,DMUとの団交を拒絶した。しかし,その理由は,「アルバイト」なのに(労基法だけでなく労組法上の)労働者ではないと主張するためには,あまりにも不十分なものであった(疏甲11)。しかも,その日のうちに,3月6日付で請求しており,通常は3日以内に支払っていた債権者の2月分の賃金を,3月末まで支払わないと通告した。

翌14日には,DMUの活動を非難する内容の「警告書」(疏甲12)を,債権者個人宛に送りつけた。この警告書は,DMUの結成そのものを「分派活動」と決めつけ,使用者の立場からDMUの解散を命令するものであった。これを受けてDMUは,不当労働行為救済命令の追加発令を申し立てた(疏甲3)。

6  臨時執行委員会の開催通知と弁明機会の剥奪

3月15日午後2時51分,関口氏は,債権者に「弁明の機会の付与」なる書面(疏甲4)を送りつけた。書面によれば,3月17日の午後6時から臨時執行委員会を開催し,そこで債権者を統制処分に付すための協議をするから,同日正午必着で弁明書を提出するか,または,同会に出席して弁明をされたいということであった。

しかし,この書面が到達してから,書面による弁明の機会までには,すでに45時間しか残されていなかった。また,DMUの団交申入書(疏甲1)と広報誌第1号(疏甲5)を問題視したことは読み取れたが,これらを合計すると約1万6000字,原稿用紙40枚分にあたる分量があった。

そのため,的確な弁明をするためには,具体的にどの部分が,関口氏がいうところの①事実に反する事項,②誹謗中傷にあたる事項,③名誉毀損にあたる事項なのかについて,特定が不可欠だった。

そこで債権者は関口氏にその特定を求め,あわせて,臨時執行委員会が正当であることを示すため,関口氏はじめ執行委員が任命されたという昨年度定期大会の代議員選挙の結果を開示するように求めた。この選挙結果は,規約上,適法なかたちで大会が開催されていれば,当然存在するはずのものであった。

ところが関口氏は,債権者の呼びかけを一切無視し,機械的に,繰り返し「回答したとおりです」と返信した。(疏甲6)

関口氏から応答がないので,同日の午後6時頃,債権者は,知っているかぎりの執行委員(関口氏含む6名)に電子メールを送信し,弁明すべき部分の特定と選挙結果の開示をもとめた。それでも応答がなかったので,深夜12時頃,あらためて,催告の電子メールを送信した。(疏甲7の1,2)

それでも関口氏ら執行委員は,これらの電子メールやメッセンジャーに一切応答せず,団交申入書や広報誌のうち,債権者が弁明すべき記述を特定しなかった。

7  統制処分

3月17日午後6時30分,関口氏ら執行委員は,債権者が弁明すべき事項を何ら特定しないまま,臨時執行委員会を開催した。

債権者はやむを得ず同会に出席し,団交申入書や広報誌の内容に関する関口氏らの質問に応じたが,上記のように事前の特定がなかったので,証拠を挙げながらの精緻な弁明は困難であった。他方関口氏は,あらかじめ質問リストを準備しており,これに沿って,債権者に質問していた。

なお,弁明に先立って,代議員選挙の結果を開示することを改めて求めたが,関口氏はこれを無視し,書記長の太田曉彦氏も「ここは弁明の場なので,それは別の場で話してください。」と発言し,債権者の発言をさえぎった。

関口氏らの質問に応じた後,債権者からは,統制処分の法律上の意義や,執行部の違法選挙問題について,7分ほどかけて若干の指摘をしたが,結局,関口氏の委任状行使を含む賛成多数によって本件統制処分が決定された。

その正確な時期は定かではないが,3月18日13時40分,関口氏は,債権者に「制裁の通知」(疏甲13)を送付した。書面上は3月17日の決定とされているが,その翌日午後まで通知することができなかったというのはあまりにも不合理であるから,実際の決定日も,3月18日であったと考えられる。

8  電子メールでの公告

また関口氏は,同日23時ごろ,疏甲13とほぼ同文の電子メールを,約270名の債務者組合員全員に一斉送信した。

債務者では,平成30年夏ごろにも,債務者組合員のM氏が,関口氏が同人のために周旋した嶋崎量弁護士を中傷したという理由で権利停止処分とされたが,このときは,電子メールはもとより,債務者機関誌で公告されたこともなかった。
しかも,この電子メールには,本件統制処分に関して,

「前田史門組合員の特性に配慮し,面談により自省を促すための継続的なサポートを試みることを確認して」
「今回は,前田史門組合員の特性に配慮した対応をし,権利停止期間中に自省を促すことにしています。」

との記述がある。

この文章を,債務者組合員の普通の注意と読み方を基準として検討すると,単に債権者が統制処分に付されたことがわかるのみならず,本件統制処分にいたった背景として,債権者に何らかの「特性」があり,その「特性」は,債務者による「面談」や「継続的なサポート」という「配慮」によって対処されるべきものであるという事実を摘示するものと理解される。

債権者は,債務者の職員また組合員として,執行委員会や争議団会議にも毎月欠かさず出席し,街宣活動ほかの行事にも足しげく参加しているので,債務者内では,よく知られている。

このような状況のもと,本件統制処分を客観的に報せるのではなく,あたかも,債権者が「配慮」や「継続的なサポート」といった精神医療類似のものを必要とするような「特性」を患っているかのように思わせる文面は,客観的な根拠なくして,債権者の名誉を貶めるものといえる。

(また,仮にその根拠があったとしても,本人の同意なく,数百名もの第三者に告知してよいということにはならない。)

したがって,この電子メールは,債務者としては制裁処分の事実があったことを内部で公告する慣行や,その必要さえなかったところ,債権者の社会的評価を傷つける意図をもって,関口氏が配信したものということができる。

第3  本件統制処分が違法であること(訂正前の申立書第3及び第4の3)

1  決定機関である臨時執行委員会が不存在であること

規約によれば,執行委員会は正副の執行委員長,執行委員,書記長らによって構成される。これらは,いずれも役員であるから(規約17条),大会によって選出される。大会は,債務者執行委員及び債務者組合員の直接無記名投票による代議員によって組織される。

ところが関口氏は,平成30年9月8日に開催した昨年度定期大会において,執行委員長の任にありながら債務者組合員の直接無記名投票による代議員選挙を開催せず,むしろ,自らめぼしいと考えた多数の債務者組合員に電話をかけるなどして代議員になることを依頼し,大会に出席させ,または自らを名宛人とする委任状を提出させていた。

一般の債務者組合員には,代議員がすべて関口氏によって指名された後,大会の日時が記された開催通知書が送付されるだけだった。通知書には,債務者組合員であれば大会に「傍聴参加」できる旨の記載こそあったが,役員に立候補できる旨の記載や,その手続についての記載はなかった。

(仮に立候補することができたとしても,それを選挙する代議員がすべて関口氏に指名されたものであり,なんら選挙活動の機会がない以上,実質的に,選挙と呼べるものではない。)

上記によれば,関口氏ら執行委員は規約に基づいて選挙され,その地位にあるものとはいえない。昨年度定期大会は,債務者組合員が規約や労組法をよく知らず,地域合同労組ゆえにコミュニケーションが希薄であることを利用して,規約に違反し,関口氏や関口氏が指名する者が確実に当選する違法なスキームとして関口氏が開催したものである。

労働組合は,労働者が団結し,一定の集団行動を行うことによって地位向上を実現するために結成された,自主的な団体である。そこで労働組合には,統制権をふくむ強い自治性,自主性が承認されているが,これは,執行部の意思が組合員の総意に基づくこと,つまり組合民主主義の実質的な達成を前提としている(労組法5条2項)。

組合民主主義,つまり,同法5条2項3号がいう組合員の,労働組合のすべての問題に参与する権利とは,おもに各種執行機関や委員を選出し,または自ら立候補して当選し役員になるという形において実現される。

そこで,債務者の大会選挙規定(疏甲9)2条にも,組合員の権利として選挙権と被選挙権が明記されており,債務者やその代表者も,これらの組合員の権利を保障すべき義務を負っている。

そのため,判例も,労働組合の選挙規定について厳格な立場を取っている。最高裁も,規約上解散決議の方法につき直接無記名投票にする旨の定めがあるところ,起立の方法によって解散の決議をした場合において,あらかじめ決議に参加する者全員がその採決方法によることを同意していたと認められるときのほかは,客観的にみてその採決方法によらざるをえないと認めるに足る特段の事情が存しないかぎりは無効である旨を判示している(最判昭和49年9月30日)ほか,同様に直接無記名投票による解散を定める規約のもとで起立によってされた解散決議を無効としたもの(東京地判昭和42年12月22日),規約の改定について直接無記名投票の定めがあるところ,大会における圧倒的多数の拍手による決議を無効としたもの(東京地判平成25年3月20日)がある。

また,全日本海員組合選挙無効確認請求事件(平成23年(ワ)第1471号)では,団体内の決議において違法がある場合,それが手続上のものか内容上のものかを問わず原則として無効事由となり,例外として,その違法が重大なものではなく,かつ,明らかに決議の内容に影響を及ぼさないと認められる特段の事情がある場合にかぎり,無効事由にならないという判断の枠組みが示されている。

とすれば,関口氏ら執行委員が選任されたという平成30年9月8日の昨年度定期大会は規約に基づいて開催されたものではなく,関口氏が代議員を全員指名するという性質上,債務者の定期大会というよりは,清水氏の私的集会といっても過言ではなく,不存在というべきである。

また,実質的にみても,債務者組合員の選挙権と被選挙権がいずれも剥奪されており,決議の内容に影響を及ぼす重大な違法が存在するから,少なくとも無効なものといえる。

定期大会による役員選任決議が不存在または無効であるとすれば,かかる役員による本件統制処分も,規約上,統制処分の権限を与えられていない者が統制権の発動を騙ったものに過ぎず,当然に不存在と解される。

よって,関口氏ら執行委員は,規約に基づいて授権された債務者の役員ではなく,規約に定める債務者の統制権を行使する権原がないから,本件臨時執行委員会は不存在であり,本件統制処分の決議も不存在である。

2  本件統制処分が無効であること

(1) 臨時執行委員会に重大な手続的瑕疵があること

①  招集手続が拙速に過ぎたこと

債務者において,執行委員会は,通常毎月の第2土曜日に開催される。この日程は債務者機関誌に掲載されており,すべての債務者組合員は,遅くとも開催日の40日前の時点で,その存在を知ることができ,出席すれば,評決に先だって質問し,意見を述べることができた。

ところが,本件臨時執行委員会においては,その召集から開催までに51時間しかなく,債権者以外の債務者組合員に対して,その開催が知らされたことさえなかった。

また,当の執行委員においても,このような拙速な招集に応じて予定を調整できる者は少なく,結果として5名もの執行委員が欠席し,関口氏に委任状を提出した。

②  弁明の機会が奪われていたこと

上記①のように,本件臨時執行委員会の招集があまりにも拙速であったことから,債権者には,もとより弁明のための十分な時間がなかったが,関口氏は,債権者に対して,本件臨時執行委員会の6時間前である3月17日正午までに,書面での弁明書を提出することを命令した。

ところが,その時点において,提出期限まで残すところ45時間しかなかったばかりか,統制処分を検討するという対象事実についても,DMU広報誌(疏甲5)と団交申入書(疏甲1)が「不当な言いがかりで,債務者や代表者,役員を誹謗中傷,名誉を毀損し,それらの主張をしながら債務者組合員を勧誘,組合内派閥を結成しようとする分派活動である」以上の説明がなく(疏甲4),債権者としては,合計1万6000字,原稿用紙40枚分にも及ぶ広報誌と団交申入書のうち,どの部分を詳細に主張・立証して真実であることを説明すれば的確な弁明ができるのか,まったく明らかではなかった。

そこで債権者は,関口氏にこれらの点を質問し,弁明すべき事項をより具体的に示すように求めたが,関口氏は紋切り型の不誠実な回答を繰り返し,なんら具体的な特定をしなかった(疏甲6)。

債権者は,15日の午後6時頃,債権者がメールアドレスを知っていた関口氏含む6名の執行委員に対しても電子メールを送信し特定を求め,名宛人に含まれない執行委員にも電子メールを転送するよう求めた(疏甲7の1)。しかし,なんら応答がなかったので,深夜12時にも改めて電子メールを送信した(疏甲7の2)が,関口氏ら執行委員は,一切応答しなかった。

結局債権者は,書面による弁明をすることができず,臨時執行委員会の席上においても,まったく十分な準備がないまま答弁に臨まざるを得なかった。

このように,関口氏ら執行委員は,広報誌や団交申入書の内容を問題として統制処分を付議するにあたって,容易に可能であったはずの問題部分の特定を意図的にしないという不作為によって,事実上,債権者による弁明の機会を奪った。

③  本件臨時執行委員会を開催する規約上の根拠がないこと

上記①で説明したように,執行委員会は,慣習上毎月1回,第2土曜日に開催されていたものであるし,債権者を含む債務者組合員も,これを前提として,必要に応じて出席し,意見表明をしていたものであるが,これを臨時に開催しうることやその場合の手続については,規約上なんら規定されていない。

臨時執行委員会が規約(疏甲8)に基づく執行委員会に準ずる権限を有するのであれば,定期大会に対する臨時大会と同様,規約上の手続規定と授権が必要であるのに,本件臨時執行委員会は,これを全面的に欠いている。

ところで,権利停止の統制処分というのは,組合費の納入はじめ債務者組合員としての義務は果たさなければならない一方,代議員選挙において投票し,または代議員や役員として立候補するという債務者組合員としての権利を行使することはできないという,実質的に債務者組合員としての地位を剥奪されるに等しい重大な処分であり,また,被処分者の名誉を著しく損なうものである。したがって,統制処分を決定するにあたっての手続は,規約に則った民主的なものであることが強く要請される。

しかるところ,本件統制処分に向けた一連の手続には,①から③に掲げたように,手続上,重大な瑕疵が多数存在する。
よって,本件統制処分は重大な手続的瑕疵のもと,事実上の関口氏の専断として行われたものであるから,違法無効なものである。

(2) 処分対象事実(規約違反)がないこと

本件統制処分は,債権者がDMUを結成したことが,「分派活動」であり,規約7条1項(2)にいう「統制,秩序を乱したとき」及び(3)「組合活動を乱したとき」に該当するとして,直接的にその理由とされている(疏甲13)。
しかし,DMUが結成されたことの一事をもって,現実に債務者の統制や秩序が乱れまたは組合活動が乱されたとは,にわかに考えられない。また,債務者から,現実に統制や秩序,組合活動が乱されたという具体的な事情が指摘されたこともない。

広報誌や団交申入書についても,前掲(1)②で説明したように,関口氏ら執行委員は,そのいかなる記述が規約に抵触しているのかについて,なんら具体的に特定していない。もとより,下記(3)イに示すように,3月14日,債権者は関口氏の「警告書」(疏甲12)に応じて広報誌の配布を3月21日まで停止しており(疏甲10)から,広報誌の記述内容の如何にかかわらず,現実に統制や秩序,組合活動が乱された蓋然性は乏しい。

そもそも,労働組合の統制権は,組合内部の統一と団結の維持のために必要かつ合理的な範囲で認められるものである。他方で,労働組合内における民主主義を維持することも非常に重要であり,組合員の有する言論の自由は最大限尊重されるべきであって,執行部や組合の方針を批判することも,その批判の内容が事実に基づく公正なものと評価されるかぎり,すなわち,虚偽の事実を述べたり,事実を歪曲したり,中傷や悪意のある個人攻撃と評価される場合を除いては,統制処分の対象にはならないものと解するのが相当であると解されている(東京地判平成26年2月23日)。

また,労働組合の決定事項は別段,組合運営上の一般的事項や未だ決定されていない事項については,言論の自由として幅広く批判・批評が許され,その結果として組合内部に混乱が生じたとしても,統制処分の対象とはならない(名古屋地判平成12年6月28日,名古屋管理職ユニオン(統制処分)事件)。

したがって,現実に債務者の統一と団結の維持が脅かされる事態が生じたことがないのに,関口氏の組合運営に批判的な組織を結成したことの一事をもって統制処分の対象とすることは到底できないし,仮にそのような事態があったとしても,それが債権者による,債務者の組合運営上の一般的事項に関する批判の結果として生起したものであれば,なお統制処分の対象とはなり得ない。

よって,債務者が,処分対象事実であるDMUの結成によって債務者の統制や秩序,組合活動が乱されたという事情を具体的に疏明し,それが債務者の決定事項に対する債権者の批判活動によって生起したものであることを示さないかぎりは,本件統制処分は事実の基礎を欠くというほかなく,統制権の濫用として無効である。

(3) 本件統制処分が不当労働行為にあたること

前掲(2)に示したしたように,本件統制処分は,DMUの結成を,直接的にその理由としている。

他方,債権者は,債務者に勤務する労働者である以上,当然に憲法28条や労組法に基づく労働基本権を享有する。すなわち,労働組合を結成し,使用者との団体交渉や争議行為を通じて労働条件の維持向上を図る権利を有しているものである。したがって,DMUの活動は,正当な組合活動と評価される限度において,不利益取扱を免れる(労組法7条1項)。

DMUの結成や,本件統制処分にあたって問題となった団体交渉申入書(疏甲1)や広報誌(疏甲5)も,それぞれ,団体交渉権を行使して債務者に団交を申し入れること,債務者内で広く組合員を募り,団結力を背景として労働条件の維持向上を達成することを目的としている。

その内容についても,3月14日,関口氏から分派活動である,事実に反するなどの指摘を受けた(疏甲12)ところ,その特定を求めるとともに,債務者との協議のために広報誌の配布を3月21日まで停止しており(疏甲10),組合活動の態様として,逸脱した点はない。

正当な組合活動は,憲法28条に保障された勤労者の正当な権利行使であることから,刑事及び民事上の免責を受けるものであって,労組法8条は,使用者からの損害賠償請求を排除する旨を明らかにしている。

しかし,正当な争議行為であっても,損害賠償以外の意味では免責されないものと解すれば,事実上,争議行為は不可能となる。例えば,ストライキを欠勤とみなして,労働契約上の債務不履行として解雇することが可能になるだろう。

そこで,判例は,損害賠償に留まらず広汎に正当な争議行為の免責を認める立場をとっており,例えば使用者によるロックアウトについて,労働契約上の受領遅滞及び賃金債務不履行の責任を免除したものとして,同和鉱業事件(東京地判昭和26年8月7日労働民例2巻3号258頁)がある。

つまり,DMUの組合活動は,正当である限りにおいて規約に対する債務不履行(規約違反)を構成しないのである。

ところが,関口氏ら執行委員はこれを「分派活動」と決めつけ,DMUを結成したこと自体をもって処分の理由とした。本件統制処分の結果として,債権者は債務者を立入禁止とされて出勤できず,また,債務者内の人間関係も事実上寸断され,DMUの活動は著しく困難となっている。

また,関口氏は,団交申入の直後から,「前田さん,クセが出ましたねぇ。クセが出ましたねぇ。また,焦って,不安になって,大事なものを失いましたねえ。」などと発言し,パワーハラスメントとしての仕事外しをするという強固な組合嫌悪の意思を示しているのであって,不当労働行為意思が認められる。

よって,本件統制処分は債権者が代表者書記長を務めるDMUの壊滅や弱体化を目的とした不当労働行為であり,公序良俗に反するものとして無効である。

(4) 本件統制処分が債権者の正当な権利行使を妨げる目的に基づくこと

第2の2(債務者の組合運営と労働条件)で示したように,債務者では,そもそも規約に基づいた正当な選挙が実施されておらず,他方で,かかる不正な選挙に基づいて関口氏らが利益を受け,組合財産を費消しているのである。

これを受け,団交の開催にあたって,DMU組合員の労働条件を確定させる権原のある使用者側交渉員が不可欠であることから,債務者への団交申入書(甲1)では,正当な臨時大会を直ちに開催し,または裁判所に仮理事の選任を求めることが要求事項として挙げられていた。

ところで,債務者組合員は,関口氏に対する巨額の金員の給付や度重なる浪費について,規約22条2項にいう会計さえも公表されていなかったことから,つまるところ何も知らされていないのであって,DMUがこれらの事実を宣伝しつつ正当な選挙が実施されたならば,関口氏らは,債務者組合員から既往の違法な大会運営を追及されるばかりか,過去に遡って給付された金員の返還を求められ,ひいては,自らが統制処分を受ける恐れさえあったのである。

そうすると,関口氏ら執行委員が,なんら処分対象事実を具体的に特定することなく,単にDMUが結成されたことをもって,その公然化の1週間後である3月18日に,十分な弁明や検討の機会を持つことなく本件統制処分をしたことは,組合内の民主的な手続によって関口氏ら執行委員に対する責任追及が行われることを懸念して,債権者の組合員としての権利行使を阻止するためにしたものとしか理解できないものである。

よって,本件統制処分は,権利の濫用として無効である。

第4 小括(訂正前の申立書第4の3(7))

以上のとおり,債権者が規約に違反したことはないし,債務者が抽象的に問題とする行為は,いずれも,DMUとしての正当な組合活動である。また,関口氏ら執行委員が本件統制処分に出た目的は,不当労働行為または債権者の労働組合員としての正当な権利行使を妨げることにある。

加えて,本件統制処分は,正当に選挙されていない執行委員によってなされたものであり,しかも,慣行に反して債務者組合員に対して参加の機会が排除された,規約上の根拠がない臨時執行委員会なる集会を拙速に招集して債権者の弁明を事実上妨害し,事実上の関口氏の専断によって決議されたものであるから手続的にも重大な瑕疵があり,本件統制処分は不存在または無効である。

第5 保全の必要性(訂正前の申立書第5)

かかる違法な統制処分のために,債権者は,組合費の納入はじめ債務者組合員としての義務は果たさなければならない一方,債務者組合員としての全権利を剥奪された状態に置かれており,組合民主主義の過程の中で債務者組合員に働きかけ,さらに毎年9月に開催される定期大会で役員または代議員として立候補するなどの手段によって債務者の適正な組合運営を回復するための取り組みをすることができず,組合活動上,日々回復しがたい損害が発生している。

また,本件統制処分が不当労働行為である以上,債権者が統制処分に附されたことによる債務者従業員の動揺は計り知れず,DMUに加入すれば統制処分による報復を受けるという認識に基づいた,労働者の無権利状態を前提とする労使関係が定着させられようとしており,債権者はじめ債務者従業員の団結権は著しく侵害されている。

さらに債権者は,債務者の職員として団体交渉事件を担当したことが何度もあり,各種の集会や抗議活動にも欠かさず出席しており,債務者内で一定の知名度を有している。ところが関口氏は,疏甲13同文の電子メールをすべての債務者組合員に配信し,本件統制処分を喧伝して,著しく債権者の信用を貶めている。

それ自体,債権者の名誉を著しく害するものであるし,その結果として,債権者の今後の組合活動が困難になる結果をも招きかねない。

よって,仮処分命令をもって,債権者の名誉権,団結権及び組合活動に参加する権利を保全する必要がある。

以 上

Print Friendly, PDF & Email

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)