答弁書(4月19日)|平成31年(ヨ)第21033号地位保全仮処分命令申立事件

平成31年(ヨ)第21033号
債権者 前田 史門
債務者 プレカリアートユニオン

答 弁 書

平成31年4月19日

東京地方裁判所民事第36部 御中

〒231ー0005
神奈川県横浜市中区本町3丁目30番7号
横浜平和ビル4階
神奈川総合法律事務所

債務者代理人弁護士  嶋﨑  量

東京都江東区亀戸2丁三22番17号
日本生命亀戸ビル4階
江東総合法律事務所(送達場所)

債務者代理人弁護士  中村 優介

第1 申立ての趣旨に対する答弁

債権者の申立てを却下する。
申立費用は債権者の負担とする。

との裁判を求める。

第2 はじめに

仮処分申立書及び訂正申立書では、そもそも保全の必要性についての疎明が一切なされていない。そのため、本申立ては速やかに却下されるべきものである。

なお、申立ての趣旨に要な範囲で、以下、仮処分申立書及び訂正申立書に対する認否反論等を行う。

第3 申立ての理由に対する認否

1

(1)

平成31年3月19日付仮処分申立書第2の1(1)記載の事実のうち、債権者が債務者所属の組合員であることは認め、その余は不知又は否認する。

(2)

第1段落記載の事実のうち、債務者が東京都渋谷区を主たる所在地とすること、及び、組合員の多くが個人加盟であることは認め、その余は否認する。債務者所属の組合員数は、現在約300である。

同第2段落及び第3段落は認める。3同(3)記載の事実は概ね認めるが、債務者書記長は通称として「中野千暁」名を使用している。

2

平成31年3月19日付仮処分申立書第3は争う。債務者は、債権者が債務者内部において積極的な分派活動をしたため、債務者において正当な手続きを経たうえで、債権者を権利停止処分としたものである。

3

(1)

平成31年4月1日付訂正申立書第2の1記載の事実のうち、債権者が平成28年6月頃債務者に加入したこと、債権者が株式会社Cとの間で係争していたこと、及び、債権者が債務者事務所等において債務者がする活動の補佐をしていたことは認め、その余は否認する。

債務者は、債権者が債務者内の活動を補佐したことについて、債権者に対して、時聞当たり1200円または1500円の行動費を支払っていた。

(2)

同2記載の事実のうち、債務者の規約に記載がある事項については認め、その余は否認し、主張は争う。

(3)

同3記載の事実のうち、債務者執行委員長である清水直子(以下、「清水」という)が平成30年12月以降、毎月40万円の行動費を受領していること、同年12月に冬期分の賞与を受領したこと、債務者執行委員会が清水の自宅に監視カメラを設置する費用として12万円を支出する決議をしたこと、平成31年2月、債務者執行委員会が清水のアメリカの労働運動視察費用として債務者の代表である清水に対して約30万円を支出する決議をしたこと、及び、毎月開催される債務者執行委員会においては数名の執行委員が委任状を提出していることは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

債権者は、債務者執行委員会に参加する権利があったかのような主張をするものの、同人は執行委員ではなく、執行委員会にはあくまでもオブザーバーとして参加していたにすぎない。

また、欠席する執行委員は、清水個人に対して厳決権の委任をしていたのではなく、執行委員会の決議内容に賛成する、という形式で、委任状を提出していたものである。

(4)

同4記載の事実のうち、平成31年3月9日、清水が債権者から疏甲1号証の文書を受領したことは認め、その余の事実は不知又は否認し、また主張は争う。

(5)

同5記載の事実のうち、平成31年3月13日、淸水が債権者に対して疎甲11号証の文書を手交したこと、同月14日、債務者が債務者に対して疎甲12号証を送付したこと、及び、デモクラティック・ユニオンが債務者を被甲立人として東京都労働委員会に対して不当労働行為救済申立てをしたことは認め、その余の事実は日付が特定されていないため認否を留保し、主張は争う。

(6)

同6記載の事実のうち、平成31年3月15日、債務者が債権者に対して疎甲4号証の文書を送付したこと、同文響に債権者主張の事実が記載されていること、同文書が債権者に到達してから同月17日に開催が予定されていた臨時執行委員会まで二日間あったこと、清水と債権者とが疎甲6号証に記載されたとおりのやり取りをしたこと、債権者が清水らに対して疎甲7の1号証及び同7の2号証のメールを送信したこと、及び、債務者執行委員が同メールに対して返信しなかったことは認め、その余の事実は否認する。

清水が上記メールに返信しなかった理由は、次のとおりである。

すなわち、債務者が、平成31年3月15日、債権者に対して送付した「弁明の機会の付与」(疎甲4)において、「「労働組合結成通告兼団体交渉申入害」にて要求し、『DMU広報誌』第1号・・・に記載していることは、事実に反する不当な言いがかりで、プレカリアートユニオンや代表者役員を誹謗中傷、名誉を棄損し、それらを主張しながらプレカリアートユニオン組合員を勧誘、組織内派閥を結成しようとする分派活動であり、容認でき」ないと記載したとおり、債権者が清水に対して手交し、また債務者所属の組合員に対して配布した文書の内容が事実と異なり、これを用いて債稀者が分派活動を始めたために、債務者が債権者に対して、これを理白として統制処分をするにあたって弁明の機会を付与したものである。

そのため、債務者は債権者に対して、「回答したとおり」と回答し、それ以上の回答をしなかったものである。

(7)

同7記載の事実のうち、平成31年3月17日、債務者執行部が時執行委員会を開催したこと、債権者がこれに出席したこと、債権者が清水に対して代議員選挙の結果を開示するよう求めたこと、債務者書記長が債権者において主張する内容の発言をしたこと、及び、債務者が債権者を1年間の権利停止処分としたこと、並びに、同月18日、債務者が債権者に対して疎甲13号証の文書を送付したことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

図同8記載の事実のうち、清水が債務者所属の組合員に対して、債権者を権利停止処分とする旨のメールを送信したこと、同メールに債権者主張の事実が記載されていること、並びに、債権者が債務者の執行委員会にオブザーバーとして、及び、街宣活動や行事に組合員として参加していたことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

4

(1)

平成31年4月1日付訂正申立害第3の1記載の事実のうち、組合規約(疎甲8)に記載されている内容は認め、その余は概ね否認し、主張は争う。なお、最高裁判例を含む裁判例を摘示する部分は認否の限りでない。

(2)

ア 同2(1)記載の事実のうち、債務者における執行委員会が通常毎月第2土曜日に開催されていること、執行委員会の日程は債務者が発行する機関誌に記載されていること、平成31年3月17日に開催された臨時執行委員会について債務者執行委員及び債権者のほかには周知されていなかったこと、執行委員のうち5名が委任状を提出したこと、清水が債権者に対して疎甲4号証の文書をもって平成31年3月17日正午までに弁明書を提出するよう求めたこと、清水と債権者との間で疎甲6号証記載のやり取りがあったこと、及び、債権者が清水らに対して疎甲7の1号証及び同7の2号証のメールを送信したことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

イ 同2(2)記載のうち、疏甲13号証に記載がある事実は認め、主張は争う。

ウ (ア)同2(3)アは、否認する。債務者が債権者を権利停止処分とした理由は、債権者が分派活動をしたことである。
(イ)同2(3)イ記載の事実は、各証拠に記載がある限りで認め、主張は争う。
(ウ)同2(3)ウは認否の限りでない。
(エ)同2(3)エは、争う。債権者による疎甲5号証の配布行為は、下記第4の1(3)で述べるとおり、分派活動であることが明らかである。
(オ)同2(3)オ記の事実のうち、淸水が債権者に対して債権者が主張する内容の発言をしたことは認め、その余は否認し、主張は争う。
(カ)同2(3)力は争う。

エ 同2(4)は証拠に記載がある限りで認め、その余は否認し、主張は争平成31年4月1日付訂正申立書第4及び同第5は争う。

第4 債務者の主張

1 事実の経過

(1)債務者と債権者の関係

債権者は、平成28年6月頃、債務者に加入した。その後、債務者は、組合員である債権者とともに、債権者を解雇した株式会社Cとの間の労働争議を開始した。労働争議中、債権者は求職活動等をしなかったことや、債権者がパソコン業務に精通していたことから、債務者は債権者に対して、組合活動の一部を委託し、時間当たり1200円ないし1500円の行動費を支払うようになった。

その後、平成31年夏頃、債権者は債務者内において、会社との間の団体交渉を担当する交渉担当員となった。もっとも、債権者は、会社との団体交渉直前に突然新聞を開いて読みだしたり、団体交渉終了後に当該組合員の目の前で、同じく交渉を担当した債務者執行部役員に対して激しい口調で意見し口論を始めるなど、債務者の交渉担当員としては不適切な行動をすることがしばしばあった。

このような債権者の行動は、債務者の組合活動に対してむしろ悪影響を及ぼす可能性があった。そこで、債務者執行委員会内部で協議が行われ、同会は、平成31年11月頃、債槇者を交渉担当員から外すことを決定した。

(2)債権者による分派活動の開始

債権者は、平成31年3月9日(以下、断りがない限り、日付については平成31年を指す)午前11時頃、債務者事務所内において、執行委員会のメンパーが揃い同会を開催する直前、突然、「お話があります」と発言し、デモクラティック・ユニオン(以下、「DMU」という)代表者書記長として、「労働組合結成通告兼団体交渉申入書」(疎甲1。以下、「本件申入書」という)の内容を大声で読み上げ始めた。

清水を含む執行委員会のメンバーは、債権者に対して、執行委員会の開催の妨げになるから文書の読み上げを中止するよう要求したが、債権者が本件申入書の内容の読み上げを中止することはなかった。そこで執行委員会のメンパーが債権者を制止して債権者による読み上げを中止させたところ、債権者は、本件申入書及び3月9日付「DMU広報誌第1号」(疎甲5。以下、「本件文書」という)を、執行委員会に参加していた組合員に対して配布した。

(3)DMUに対する回答及び債権者に対する警告

本件申入書には、たとえば、債務者に所属する専従者及び書記局、さらには債権者が、事実は異なるにもかかわらず、労基法上の労働者に該当することを前提とした各要求、また、事実は異なるにもかかわらず、清水が債権者に対してパワーハラスメントを行ったことを前提として、事実と異なることを含めて清水を誹謗中傷する内容が記載されていた。

また、本件文書には、たとえば、「専従者の出動日は、週3・4日となっています」(疏甲5の2枚目左段)、「執行部は、この要請を事実上無視(返信のペースが非常に遅い)したり、話し合いを一方的に10分で打ち切ったりして、強引に街宣を継続しました。」(疎甲5の2枚目左段)、「和解・金銭解決にあたって執行委員長からすごまれた、ウソじゃないかと思うようなことを言われた」(疎甲5の2枚目右段)などと、事実と異なることを断定的に記載したり、執行部を批判したり、さらには清水の名誉を棄損したりする内容が含まれていた。

これに加えて、同文書では「組合から賃金(行動費)をもらって生計を立てている以上、労働組合法がいう「労働者」となる」としているのに対し、「プレカリから行動費をもらっている方でなくとも、DMUには加入できます」と相矛盾する主張を展開しており、労組法上の労働者に該当しないと債権者自身が認める債務者所属の組合員に対してもDMUへの加入を勧誘する内容が含まれていた。

このように、本件申入書及び本件文書の内容は、事実と異なることを記載して債務者執行部を批判するものにすぎず、また、本件文書をもって債務者所属の組合員に対して、DMUに加入するよう勧誘していることが明らかであったことから、債務者は、債権者による同文書の作成やDMU結成を分派活動であると考えた。

そこで、3月10日以降、債務者執行部は、債権者の行動に対する対応を協議した。

債務者執行委員会部における協議に基づき、債務者は、3月13日、DMUに対して本件申入替に対する回答書(疎甲11)を送付し、また、同月14日、債権者に対して「警告書」(疎甲12)を送付した。

(4)臨時執行委員会の開催

ところで債務者は平成24(2012)年に結成された労働組合であるところ、債務者においてこれまで臨時執行委員会を開催したことはなかった。

もっとも、債権者は本件文書を債務者所属の組合員に対して配布していたことから(乙1、乙2)、清水は、債務者執行委員長として、分派活動が拡大することを防ぐために早期に組合内部における統制を行う必要があると判断し、3月13日、債務者執行委員会のメンバーに対して臨時執行委員会の招集通知をメールで送信した。

そして、債務者は、債権者が分派活動をしたことによって組合内部の統制、秩序または組合活動を乱したことを理由として債権者に対して制裁処分を課すことを検討し、同月15日、債権者に対して、同月17日に開催する臨時執行委員会において弁明の機会を附与する旨の通知をした。

臨時執行委員会においては、債権者が出席し、本件申入書および本件文書に記載のある内容について、債権者に対して弁明の機会を附与した。同会において債権者は、同人が本件申入書および本件文書に記載したことは全て事実であると認識している旨陳述した。また債権者は、DMUを結成して本件申入書を作成したことについて、自身が交渉担当から外れることは、労働条件が不利益に変更されることにあたると考え、債務者に雇用されていることを前提とした交渉をする必要があった旨釈明した。

(5)処分の通知

債権者による弁明終了後、債務者執行部は協議を行った。そして、債務者執行委員会は、3月17日付で債権者を1年間の権利停止処分とすることを決定した(組合規約(疏甲8)7条2項3号。以下「本件処分」という)。

(6)本件処分後の債権者の行動

債権者は、本件処分後である3月21日以降、DMU名義のホームページ(註:このHPですよ!、以下「本件HP」という)やDMU名義のツイッター(以下「本件ツイッター」という)を開設して、これを介して、債務者所属の組合員個人を名指しして批判するようになった。

ア 根本に対する批判

債権者は、平成31年4月2日、執行委員ではない一般組合員である根本美樹について、事実は異なるにもかかわらず、本件HPにおいて、「プレカリアートユニオンの「盗聴請負人」、根本美樹(ディズジャパン・元社員)さんへの警告書」という表題の記事を掲載した(乙3)。この「盗聴請負人」という表現は、事実は異なるにもかかわらず、根本が違法行為をしていることを伝達しようとするものであり、根本の社会的評価を著しく害するものである。

また、前記記事の内容を見ると、「根本美樹氏によってディズジャパン(広河隆一氏)から持ち込まれた人権侵害のDNA。プレカリアートユニオン事務所内の秘録音を許しません」という項目では、「DMIJは、報じられているような数々の性暴力、深刻な和罪行為で知られたディズジャパンの元従業員である根本美樹氏が、秘密録音、聴盗といった違法行為ことによってDMUの組合活動を妨害し、また相談者のプライバシーを侵害することがないよう、社会的なアピールも含め、加害行為・違法行為をやめるようにとの働きかけを行って参ります。」との記載がある(乙3)。

「デイズジャパン」とは週刊誌の名称であるところ、債格者は、平成30年末頃にフォトジャーナリストである広河隆一氏が同誌編集部の女性に対してセクシャルハラスメントをしていたことについて報道されたことを受けて、「デイズジャパン(広河隆一氏)から持ち込まれた人権侵害のDNA」との記載を行っているものと思われる。

このように、前記記事の内容は、あたかも、根本が違法行為を行っていることを誤導するような記事になっている。なお念のため補足するが、根本は、債権者が主張するような秘密録音を一切行っていない。債権者は、一般組合員の個人情報をも暴露し、かつ、これと、別に報道されているセクシャル・ハラスメントが疑われている事案とを結びつけて根本が犯罪行為を行っているかのような記事を作成したものである。

また、債権者は、4月16日、本件HPにおいて、根本のことを「まるでナチスドイツでヒトラーの忠実な大としてユダヤ人大量虐殺の主導的役割を果たし、戦後も「私は指示に従っただけだ」として責任から逃れ続けようとしたアドルフ・アイヒマンのような人物」と、違法行為を助長する人物であるかのような印象を与える紹介をした(乙4)。債権者は、債権者が主張するDMUの「組合活動」という範疇を超えて、債務者所属の組合員個人を目の敵にし、中傷しているのである。

イ 中野に対する批判

債権者は、3月30日、本件ツイッターにおいて、債務者書記長である中野千暁の本名を、中野の同意なく、暴露した(乙5)。中野は、諸般の事情により、本名ではなく「中野千暁」名で組合活動を行っているものであるが、債権者による上記行為(アウティング)は、個人のプライバシー情報を個人の同意なく暴露するもので、中野のプライバシーを侵害する違法行為(民法709条)である。

これに対して、債務者は、4月1日、債権者に対して抗議文を送付した(乙6)。しかしながら、債権者は、同月2日、債務者に対して送付した回答書において、「役員がその氏名と共に批判活動に曝されることは、責組合も常日頃から他の企業(中略)に対しておこなっていることであって、何ら不自然なことではなりません。使用者としての、争議行為に伴う受忍義務の範疇かと思いますとしている(乙7)。

もっとも、組合執行部と会社役員とでは、その氏名が登記簿上に公開されているか否かという点で、そのプライバシー青報の秘匿の程度が決定的に異なる。これは以下に述べる他の債務者執行部も同様である。

また、債権者は、4月16日、本件HPにおいて、再度、中野の本名を暴露し(乙8)、中野の本名を本人の同意なく公表する理由として、中野が「現実にやってしまった違法行為が、あまりにも重大、深刻である」などということを挙げ、「実名で批判されたくないのであれば、これらの違法行為、人権侵害に最初から荷担せず、(中略)プレカリアートユニオンの全役職を辞任し、使用者でなくなれば良いだけの話です」と、中野のプライバシー情報を暴露するという過剰な表現手段を使いながら、中野に対して書記長を辞任することを迫っている。

さらに、債権者は、「アウティングされたことで職場環境が変化したり、解雇されるということは、清水直子さんがそうしない限りありません。」などと記載し、中野の同意なく中野の本名が公表されることの実害が小さいなどと主張している。

しかしながら、プライバシー情報を同意なく暴露することは、個人のプライバシー権に関わることであり、実害の大小を量ることができるものではないことはもとより、違法行為であるという評価を免れないものである。

ウ O子に対する批判

債権者は、3月24本件HPにおいて、書記次長であったO子を名指しし、「例えは、プレカリアートユニオンの職員は、誰ひとりいわゆる残業代・深夜割増を受け取っておらず、有給休暇の付与・消化もありません。」「これらが違法であることは、書記局スタッフは皆分かっています。」などと記戦し、これらに対する責任をとることを求めている(乙8)。

債権者が記載した内容については本件とは無関係であるから認否の限りでないが、債務者の書記次長であることを公にしていないO子を名指しし、かつ、「S大学教授」(なお、現時点では「某大学」と記載が変更されている)と記載した上で、O子の勤務先にも責任があるような記載をしている。このような表現方法は、O子の個人情報を同意なく暴露するだけでなく、事実と異なることを記載して、O子の社会的評価を低下させるものである。

なお、本件HP内に他にもO子に関する記述があるものの、債権者は、O子が書記次長を辞任したことを理由として、現在、O子に関する記述について「O氏」という仮名表記に修正した。

エ 武内に対する批判

債権者は、4月6日付本件HPにおいて、執行委員の武内惇を名指しして「変態盗搬パパ」と呼称し、批判した(乙1)。このような表現方法は、武内の社会的信用を低下させるものであることは明らかである。

ところで、武内が行った撮影行為は、債権者は権利停止処分を受けたことによって債務者事務所内に立ち入りが禁じられているにも関わらず、これを無視して無断で債務者事務所内に侵入したため、同侵入行為を証拠として保全するためのものであった。

そのため、「盗撮」と断じられるものではない。また、債権者は、本件HPにおいて、同人が武内を撮影した写真を紹介するにあたって、「この写真だが、股間の辺りに手を置いているのは、何か意味があるのだろうか。この奇妙な動作がDMU内部で話題となり、武内悼氏は「変態盗撮パパ」の異名を得ることになった」と記載している。

このような記載方法は、通常人をして、あたかも武内氏が性的に何らかの嗜好を有するかのような印象を読み手に与えるものであり、武内氏の名誉感情を一方的に毀損するものである(もっとも、以上の内容は、債権者においても名誉毀損の可能性があると考えたのか、すでに削除されている)。

また、債権者は、同じ記事において、「2児の父でもある武内惇氏は、愛妻と二人でミスターチルドレンのライプに通いつめているというが、桜井和寿氏も嘆いていることだろう。」と、債務者とは全く関係なく、また武内のプライベートを無断で暴露しながら、武内を論評した。

オ 被害は現時点でも拡大している

なお、債権者は、以上に述べたほかにも債務者執行部を名指しして批判している。また、上記ア乃至エで記載したようなプライバシー侵害を毎日のように継続し、債務者及び債務者執行委員長である清水をも非難し続けている。

2 保全の必要性がないこと

債権者は、本手続きにおいて保全すべき権利を「名誉権、団結権および組合活動に参加する権利」とし、保全の必要性がある旨主張する(訂正申立書21頁)が、すでに述べた通り、具体的に侵害される組合活動に関する主張や、上記各権利を保全する必要性についての疎明がなされていないため、本申立ては速やかに却下されるべきである、なお、念のため、本件においては保全の必要性がないことを主張する。

(1)

まず、債務者の定期大会は毎年9月に開催されるところ、現時点においては組合の役員または代議員に立候補する時期ではない。また、債権者は執行委員会内における出席権や議決権を有していない一般組合員なのであり、権利停止処分によって債権者による組合運営に関する櫂利が妨げられたという
ことはできない。これらのことから、権利停止処分が無効であることを確認する保全の必要性も緊急性も認められない。

(2)

また、債務者が本件処分をした理由は、債権者が分派活動をしたことである。なお、債権者においては、本件処分が債務者とDMUとの関係において、いかなる不当労働行為に該当するか、また不当労働行為意思があることについての主張及び疎明も全くなされていない。

(3)

債権者は、本件処分の内容が債務者所属の組合員に対してメールで配信されたことを理由として、これが債権者の信用を貶めた旨主張する。しかしながら、本件処分は組合規約に基づいて弁明の機会を付与した上で、債務者執行委員会において正当な手続きを経て決定されたものであるから、手続的瑕疵は存しない。

また、本件処分の対象となった債権者の行為は、債権者が債務者内において、債務者の団結を侵害する分派活動であったことから、債権者が今後他の債務者所属の組合員に対して勧誘して、分派活動が拡大することを防止するため、組合員に対して周知する必要性が極めて高かった。

そのため、債務者は、所属組合員に対して本件処分の内容を周知したものである。このように、本件処分の内容を債務者所属の組合員に対して周知することは、債務者にとって必要不可欠であったものであり、その内容も、債権者の信用を賺めるような記載内容ではない。そのため、この点をいう債権者の主張にも理由はない。

第5 結語

以上のとおり、本申立てには理由がないから、連やかに却下されるべきである。

以 上

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