訴状

訴    状

令和2年6月18日

麻生簡易裁判所民事部 御中

原  告           O

当事者の表示 別紙当事者目録のとおり
損害賠償請求事件
 訴訟物の価額 金40万円
 貼用印紙額 金4000円

(少額訴訟の申述)
原告は,本件について,少額訴訟による審理及び御裁判を求める。本年,この裁判所において少額訴訟による審理及び裁判を求めるのは,1回目である。

請 求 の 趣 旨

1  被告は,原告に対して,不法行為に基づく損害賠償金の一部として,金40万円及びこれに対する令和2年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うべし。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
との御裁判及び仮執行の宣言を求める。

請 求 の 原 因

1  当事者

(1)  原告Oは,茨城県神栖市に在住する自然人である。原告は,訴外DMU総合研究所(以下「訴外DMU」)の組合員である。
(2)  被告Mは,訴外DMUの元組合員である。被告は,組合内部で金銭のトラブルを起こした末,令和元年12月22日,訴外DMUを脱退した。
以来,被告は,訴外DMUの代表者及び組合員個人を逆恨みし,誰彼構わずインターネット上で攻撃し,誹謗中傷を繰り広げている。
(3)  当事者らは,いずれも,訴外プレカリアートユニオン(訴外ユニオン)の組合員でもあった。しかし,訴外ユニオンでは,平成31年3月頃,総会決議の有効性を巡る紛争が発生し,訴外ユニオン及びその組合員同士の間で,わずかの期間のうちに10件前後にのぼる訴訟や仮処分申請が相次いで提起される事態となり,活動が困難となった。
 そのため,原告は訴外ユニオンを脱退し,訴外ユニオンの元専従者である前田氏が立ち上げた訴外DMUに加入した。
 他方,被告は,訴外DMUに加入した後,訴外ユニオンの事務所に侵入し,組合員名簿を窃取したため,訴外ユニオンを除名された。

2  被告による書込み行為

(1)  被告は,正業に就いていないところ,インターネット上で,検索エンジンにヒットし,誰でも閲覧できる匿名掲示板「5ちゃんねる」上で,日がな一日,訴外DMU及びその関係者についての書込みを繰り返している。
(2)  被告は,そのような「5ちゃんねる」上での書込みにあたって,概ね,「明石の尼君◆iIa39u97KA」なる固定ハンドルネーム(本件ハンドル)を使用しており,そのことを訴外DMUの内部で公言し,代表者前田氏にも表明していた(甲2)。
 「5ちゃんねる」の仕様上,本件ハンドルのうち,「◆iIa39u97KA」の部分(本件トリップ)を出力するためには,これに対応するトリップキーと呼ばれる文字列を入力する必要がある。「◆iIa39u97KA」に対応するトリップキーを知っているのは被告だけであり,他人がこれを模倣,再現することはできない。
 したがって,書込み者の欄に「明石の尼君◆iIa39u97KA」と表示されている書込みは,すべて,被告の書込みである。
(3)  この点,被告が,①トリップは,重複することがあるので,第三者が偶然本件トリップを使用した可能性があるとか,②被告が第三者にトリップキーを教示すれば,その第三者も本件ハンドルを使用できるとか縷々反論してくることが想定される。
 しかし,①被告が使用した本件ハンドルのトリップは10文字の長さであるところ,トリップキーの組み合わせは28京8230兆3761億5171万1744通り存在し,毎秒30万個検索した場合でも,これを突き止めるには,平均約1万5000年を要するとされている(甲3)。したがって,第三者が,被告に関係なく本件トリップを使用した可能性は皆無に等しい。
 そして,②被告が第三者に本件トリップに対応するトリップキーを教示したのであれば,被告からトリップキーの教示を受けて書込みをした第三者は,被告と共謀し,被告の意を受けて書込みをしていることになる。
 そうすると,被告と当該第三者との両者が原告に対する共同不法行為の加害者となり,原告に対する損害賠償責任は不真正連帯債務になるから,この場合でも,被告の責任は何も変わらない(民法719条)。
(4)  被告が書込みをする「5ちゃんねる」のスレッド(特定の話題についての書込みを集約したウェブページ)は多岐に渡る。
しかし,被告は,訴外DMUの関係者について逆恨みをしていることから,訴外DMU関係のスレッドに執着し,毎日のように,原告ら関係者を誹謗中傷している。
 令和2年1月30日頃,「5ちゃんねる」には,「https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/kyousan/1580247964」のURLにおいて,「DMU民主一般労働組合」なるスレッドが存在した(本件スレッド)。
(5)  被告は,1月30日午前6時ごろ,本件スレッドにおいて,被告しか使用できない本件ハンドルを使用しながら,

129 明石の尼君 ◆iIa39u97KA 2020/01/30(⽊) 06:03:29.99
私とXXさんはDMU組合員・O(元プレカリ京急バス支部)を刑事告訴することができます Oが電話でXXさんに『殺すぞ』と告知した録音もありますし,Oが私を『目の前にいたらボコしてやるよ』と脅した文面もあります Oが私(M)の私信を勝手に5ちゃんねるに貼りつけた行為によって,その中に実名が出ていた人にも被害が出ています 証拠はちゃんと保管してあります(以下略)


 と書き込んだ(甲1,本件書込み)。
本件書込みに係るURLは,「https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/kyousan/1580247964/129」であるが,本件書込みは,現在も,世界中の誰もが閲覧でき,Google等の検索エンジンに常時ヒットする状態に置かれている。

3  本件書込みの違法性

(1)  本件書込みは,①原告が被告に刑事告訴されるような犯罪事実のある犯罪者であること,②原告が氏名不詳者に電話をかけ,「殺すぞ」と告知したこと,③原告が被告の私信を無断で「5ちゃんねる」に貼り付け,それによって第三者にまで被害を及ぼしていることの各事実を,公然と,かつ断定的に摘示するものである。
(2)  本件書込みが実施された本件スレッドは訴外DMUの名称を冠しているが,原告は,訴外DMUの副執行委員長を務めており,そのような原告の品位及び徳行については,あらゆる関係者が重大な関心を寄せているところである。
 訴外DMUの関係者が本件スレッドを閲覧している蓋然性が高いことは当然であるが,そこで原告の氏名を特定して誹謗中傷がなされた場合,その特定性には凡そ欠けるところがなく,原告の被害は殊更大きい。
(3)  本件書込みが摘示した事実関係(①〜③)は,すべて事実ではなく,被告が作出した虚構以外の何物でもないが,これにより,訴外DMUの関係者をはじめとする本件書込みの閲覧者は,原告が粗暴な犯罪者であると認識するに至った。
(4)  以上,本件書込みにより,原告の社会的評価が著しく低下している。

4  原告の損害

(1)  原告は,本件書込みにより,自らが犯罪者ではないこと,被告の私信を無断で公表した事実はないこと等について,本件書込みを閲覧した関係者に対する釈明を余儀なくされた。原告の元には,訴外DMU及び訴外ユニオンの関係者から,本件書込みの内容は本当かとの問い合わせが多数来ており,原告は,その度に,本件書込みに基づく事実無根の噂が際限なく拡散していることを認識させられている。これによる原告の精神的苦痛は筆舌に尽くしがたいものである。
(2)  原告は,真面目な営業職のサラリーマンであるところ,取引先等関係者が原告の氏名をインターネットで検索すれば,本件スレッドが検出され,本件書込みを目に留める可能性が高い。
 そうなれば,被告に刑事告訴されるような犯罪者であるという原告を職場の関係者が警戒し冷遇すること,最悪の場合営業職を解任され,あるいは不当に解雇されることも考えうるのであり,妻帯者である原告は,一家の大黒柱であるのに,被告の無責任な書込みがいつ職場に露見するかも分からず,途方に暮れている。
(3)  以上,原告の精神的苦痛は,到底金銭に見積もり得ないものであるが,あえて見積もれば金40万円を下ることはない。

5  被告の責任

(1)  本件書込みは,被告が,原告に対する嫌がらせとして考案し,匿名掲示板「5ちゃんねる」に書込み,そのことによって不特定多数者の閲覧に供しているものであるから,被告は,原告に対して,不法行為責任を負う(民法709条)。
(2)  被告は,原告だけではなく,多数の関係者に対して,本件書込みと同様の誹謗中傷行為を繰り返し,それをやめることを引き換えとして,なぜか,金銭の支払いを要求している。
 例えば,被告は,訴外DMUの代表者である前田氏が窃盗犯であるとか,性犯罪者であるとかいう内容の書込みをした後,事態を収拾するために共通の知人を介して被告との話し合いを試みた前田氏に対して,30万円ないし100万円の金銭を払えば書込みをやめると申し出た。
 前田氏は,被告の申出を断り,東京簡易裁判所に別訴を提起したが,被告は,その前田氏に対して,紛争と何ら無関係の実家,恩師にまで嫌がらせの郵便物を多数送りつけ訴えの取下を要求するという違法行為を現在に至るも繰り返し,挙げ句の果てには,窃取した訴外ユニオンの名簿を使用し,前田氏が性犯罪者であるという内容の怪文書を300通以上ばら撒いた。
 このように,被告の悪性,反社会性は殊更高いのであるが,その真の目的が金銭の恐喝であることを勘案すると,本件書込みに正当性は何もなく,その慰藉料の金額は通常と比して高く評価されるべきである。
(3)  原告は,被告に対して,被告の私信を無断で公表した事実がないことは無論,社会的に非難されるような不法行為を何もしていない。
 被告は,金銭をゆすり取ることを目的とする嫌がらせとしてのみ本件書込みをなしたのであり,その責任は重大である。

6  結論

 以上の理由から,原告は,請求の趣旨記載どおりの御判決を求める。
 なお,原告は,本件書込みを削除させるため,「5ちゃんねる」の運営者を相手方とする別訴提起を準備している。これには相応の費用を要するが,その金額は未確定である。
 したがって,原告は,本件訴訟において,本件書込みを原因として原告が蒙った損害の一部について賠償を請求する。

証 拠 方 法

証拠説明書のとおり。

附 属 書 類

1 訴状副本  2通
2 甲号証(写し) 各1通 

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