当組合(DMU労働労務相談所)に加入する組合員で、今期の代表を務める私の事件をご紹介したい。「よさこいチャーシュー」というのは、「よさこい労務事務所」を名乗る事務所の、Googleのレビューで使われていた投稿者名だ。
高知在住で、しかもラーメンフリークの方の筆名だと思うのだが、これから述べる竹内先生の風貌と滑稽さを一言で言い得ているようで、引用させてもらった次第だ。
さて、令和5年正月、私は思うところあって、Uターンして高知で働いてみることにした。
そこで早速思い当たったのは、旧知の社労士である「よさこい労務事務所」こと竹内隆志先生に弟子入りしてみるということであった。
元来、竹内先生には良い思い出しかない。高知で、大学への進学を勧める周囲に対し、唯一、まともに就活の相談に乗ってくれたのが竹内先生であった。当時竹内先生は、ジョブカフェ高知という半官営の若者向けハローワークの所長を務めていらっしゃった。
結局、紆余曲折あって大学に進まざるを得なかった私だが、社会人も三年目にして行政書士の資格を取り、高知に帰るならば竹内先生のお役に立てないかと考え、早速、検索をしてみたところ、ちょうど求人広告も出ていた。
そこで、早速先生に連絡をとり、雇って貰ったという経緯であった。
業務過誤、相続く離職者たち
しかし、竹内先生の事務所に入れてもらうと、私が知っていた昔の事務員の女性は辞めていなくなっており、その代わりに二人の事務員がいたが、その両名とも一月中には辞めるということであった。しかも、そのうち一人の三〇代女性は、竹内先生が「大声で電話口で怒鳴るのが怖い」から辞めるのだという。
事務員に全員辞められてしまうと、業務が到底回らない——正月は、この問題で困り果て、夜も眠れなかったという竹内先生は、私を歓迎してくれた。
しかしながら、火のない所に煙は立たないという。去年(令和4年)も四名、今年(令和5年)も二名の離職者を出すという、定員1名でも離職率七〇〇%の事業場には、やはり「何かある」のである。
まず気づいたのは、業務過誤の多さと、そもそもの業務の品質の低さであった。
業務過誤というのは、例えば、時期は前後するが、ある顧問先から受けた地域雇用開発助成金について、「ハローワーク等」で採用しないと補充人員が助成金対象にならないという条件を聞いたところ、それを顧問先には「ハローワークで」と伝え、それを聞いた顧問先はほぼ諦めてしまった。今どきの人はハローワークで就活などしないからだ。
しかし、偶然竹内先生が入院になったところで、私が事務所を代表してハローワークの担当者と話す機会を得ることができた。この時、申請期限の一週間前である。
かねて、行政がいまどき、本当に「ハローワーク経由でないと全部ダメ」といった要件を課すものだろうかと疑問に思っていた私は、「ハローワーク等」の「等」の要件を具体的に教えてほしいと、詰めた確認を担当者にぶつけてみた。
するとハローワークでも本省に確認するとして待たされたが、最終的には民間求人業者の一覧表が出てきた。この一覧表を顧問先に示したところ、顧問先では、既にそこに含まれる業者で複数、人を採用しているということであった。つまり、助成金の要件は既にほぼ満たされていたのである。
この時、助成金申請期限のわずか一営業日前。
退院した竹内先生にそのまま報告したところ、「ありがとう」の一言もなく、しかし、(入院中で何もしていない)自分がそれに気づいたかのような口ぶりで、早速顧問先に電話をかけはじめた。
電話口では、顧問先の社長も怒っている雰囲気だ。つい先日まで「対象外だから諦めるしかないだろう」と言っていたのだから、どんなにごまかしても、話がおかしいと気づく。当然であるが……。
結局、勤務行政書士としては一切評価されないどころか、むしろ竹内先生の不興を買ったようだが、かくして顧問先は、一〇〇万円弱にもなろうかという地域雇用開発助成金をふいにするのを避けることができたようだ。