弁護士倫理と「ブラック企業大賞」について考える
いわゆる「ブラック企業大賞」について、色々と考えることがあるのですが、ある種の法的問題として思うところを述べてみたいと思います。
「ブラック企業大賞」に引越社を選出した実行委員の一人が引越社の相手方代理人弁護士
平成29年、ブラック企業大賞として、株式会社引越社が選出されたことは、多くの方がご存知かと思います。その適否については、(そもそも、実行委員の大部分が、社会運動家などの一方的な思想に基づいて活動されている方であるということもあり、)「その方たちにとっては、その会社がブラック企業なのでしょうネ……。」、としかいえないので、特に争いません(w)
ところが、私が気になるのは、その「ブラック企業大賞」を運営する「実行委員」に、労働弁護団としての活動で知られる佐々木亮弁護士がいるということです。
佐々木弁護士は、プレカリアートユニオンの顧問弁護士でもあるのですが、同時に、プレカリアートユニオンと引越社の紛争において、プレカリアートユニオンの代理人を務めていました。
ここまでは問題ないのですが、当然、この紛争を、法的手続を通じて解決する立場である佐々木弁護士が、法廷での紛争とは別の場外乱闘的なものとして、「ブラック企業大賞」なるイベントを開催し、相手方である引越社を「ブラック企業」と断定するのは、弁護士倫理の問題として如何なものでしょうか。
「ブラック企業大賞」の運営者がユニオンの代理人であるということを明示しないことの問題性
弁護士は、他人を代理して法律事務を手掛けることの専門家であって、他人を代理せず、自ら相手方を攻撃することの専門家ではあり得ません(「弁護士は,不当な目的のため,又は品位を損なう方法により,事件の依頼を誘発し,又は事件を誘発してはならない。」 (弁護士職務基本規定10条)との規定がございます。)。
軍隊や特殊探偵、あるいはスパイのように(SPYxFAMILY素敵ですよね!)、相手方の家に不法侵入して盗撮したり、相手方を誘拐、暗殺したり……といったルール違反は許されず、あくまでも、主として裁判所で、既に起こったことに関するベストな解釈や釈明をしてくれるというのが弁護士のお仕事で、社会生活の現実や実体を”現状変更”することではない、という意味では限界がある(暴力団とか半グレ集団とかに依頼すれば、解釈も説明も無用で“現状変更”をやってくれそうですが……)半面、そうであるからこそ、国民は、弁護士という職業を信頼しているところが大きいと思います(弊所も、相手方代理人に弁護士が立つと、恐れるというよりもまずは安心します。法的な趣旨を明確にすれば、まず話ができるという安心感。これは間違いないです。)。
しかし、仮に、佐々木弁護士が、プレカリアートユニオンの代理人という立場で、そのことを明言しないまま、一般的には中立的に見える「ブラック企業大賞」という団体の「実行委員」をつとめ、ユニオンが引越社に勝訴すれば多額の成功報酬を得られる立場で、引越社を「ブラック企業大賞」に選出したとすれば、この構図は、一般の読者の目からすれば、引越社と対立するユニオンの代理人であるということを表明して断っておくこともできたのに、あえてそれを行わずに、自らが成功報酬を得る目的で、「ブラック企業大賞」なるイベントを作出し、適正な法的措置以外の手段まで使用して引越社を追い詰めたという見方もありうるのではないでしょうか。
弊所が調査したところ、佐々木亮弁護士がプレカリアートユニオンの代理人を務めていた平成29年~平成30年頃の時点でも、佐々木弁護士はブラック企業大賞の実行委員に名を連ねていたようです。当然、引越社をブラック企業大賞とした平成29年12月23日の時点でも実行委員で、しかも、その「授賞式」では、
「今年は過労死や長時間労働が多く報じられた。報道で、社会に問題が明らかになるのはいいことだ。しかし、我々がしなければいけないのは、そういう事件や事故そのものをなくしていくことだ。」
佐々木弁護士のコメント
とコメントしたというのです。
ユニオンの代理人という立場で「ブラック企業大賞」の実行委員を務めていたとすれば、そうした断り書きがあっても良いはずですが、記事中にはユニオンの名前すら出てはおらず、授賞そのものを報じる記事にも、実行委員の佐々木弁護士が引越社の相手方(ユニオン)の代理人である旨の表記はありません。
引越社としては、このような形で、中立的なものに見える「ブラック企業大賞実行委員会」から、「ブラック企業大賞」であるとしてマスメディアにも紹介される形で批判されれば、もはや和解してユニオンに多額の解決金を支払うしかない、という判断に傾くことにはなると思います。
もちろん、「ブラック企業大賞」の授賞後、プレカリアートユニオンのブログ・メールマガジンでも、その”授賞”は自分たちの代理人がやったことではなく、あくまでも中立的なものとして、大々的に宣伝されているのです(え〜〜、「ブラック企業大賞」を開催した人も授賞した人も自分たちの代理人だけどそれはオトナの秘密なの!?)。
「ブラック企業大賞」選出の後、支払われた1億円の「解決金」と成功報酬
プレカリアートユニオンと引越社の事件では、プレカリアートユニオン代理人の佐々木弁護士が実行委員を務める「ブラック企業大賞」に選出された後、引越社は、中央労働委員会で和解を余儀なくされ、実際に、プレカリアートユニオンに対し、1億円もを解決金を支払っています(この時のユニオン代理人も佐々木亮弁護士です)。
当然、この1億円から、プレカリアートユニオンの代理人である佐々木弁護士の成功報酬も出ているものと考えられます(万が一、報酬ゼロのプロボノでしたらゴメンナサイ。)。
こうしてみると、引越社が解決金を払えば多額の成功報酬を得ることができる立場にある佐々木弁護士が、そのような利害関係を公表しないまま、第三者のように見える立場から、「ブラック企業大賞実行委員」であるとして、引越社を「ブラック企業」と断定し、それを公表することは考え物かなと私は思います。
「運動とカネ」——ユニオン特有の矛盾と悪夢
ユニオン絡み、労働弁護士絡みの問題は、本当に色々なウラがあるものだと、私は、経験に照らして思います。
弊所の団体概要でも書きましたが、自分の実力を頼りとしては「勝者」となれず、また誰からも「あなたは正しいですよ」と言ってもらえず、劣等感の中で生きてきた人たち(弁護士、一般人問わず)が、自分ではなく、自分を認めてくれなかった社会がおかしいのだという歪んだ正義感の中で、暴力とウソを手段として、「自分が正しい!」という一方的な表現を重ねているんです。それが過激なテロであり、暴力であり、内ゲバであり、街宣車であり、一方的に怒鳴り散らす異様な団体交渉であり……諸々の様相を見せるだけで、根本的には同じものなのです。
そのような人たちにも、グツグツと沸き立つような承認欲求と、人並み以上に稼いで贅沢したいという欲望があるわけですが、それが、社会においてその人たちが受け容れられなかったという総体的な結論を、(広義の)暴力で無理矢理覆そう、という趣旨の「社会運動」という形で表出し、そこに、学生運動、成田空港反対闘争などを介して、結局は社会において主張を棄却された(色々な事情はあったとは思うのですが、最終的には全体として主張を容れてもらえなかった、という結果は大変重要です。)学生運動世代のロートル活動家たちが加勢し、いつまでも「支援」「連帯」しているという、悪夢の筑前煮のような構図がそこにはあるわけです(学生運動ってもう半世紀前とかですよ!!資本主義社会に問題があることは共感しますが、だからといって自分たちは一切変わらずに、全て会社や国が悪いって言って一生抗議だけしているのはどうなのでしょうか。というか執念深いですよね……。)。
その上にも、それを票田や資金源にしている色々な政党の議員とか、専従とか、その子弟が弁護士であるとか色々と絡んでくるので、本当にややこしいと思います。唯一分かっているのは、その誰一人として、お天道様に恥じない手段で堂々と商売はできていない、ということだけです。(やましいことするぐらいだったら普通に就職すればいいのに……。「自分が正しい!」って気持ちよいのでしょうね……。)
かかる悪夢の筑前煮の中で、ある企業を、自分たちが勝てば数千万、数億円が入るのだという利害関係を秘して一方的に世間を味方に付け、「ブラック企業」と批判しながら、それが実際には公共性の高い中立的な労働問題の提起ではなく、特定の弁護士が、億単位の事件をまとめて成果報酬を得るための商行為でしかなかったとすれば、そのような悪意の商行為によって、多くの株主や従業員、そして顧客が大切に育ててきた事業体が不当に踏みにじられたという結果は、やはり重大なものであると指摘せざるを得ません。
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