清水直子氏のプレカリアートユニオンが、係争中の会社の副社長の中絶経験を悪辣な形でアウティングしています。
事件の大まかな経緯は、平成28年10月、この会社のある社員が妊娠したことを理由に、社長と副社長から暴言や嫌がらせ(マタハラ)を受けた。そのため、この社員は心身に不調を来たし、子供は未熟児で生まれてしまった。社員はプレカリアートユニオンに加入し、今月、東京地裁に労働審判を申し立てた(代理人弁護士・新村響子、伊藤安奈)というものです。
そもそも、この事件には不可解な所が沢山あります。
なぜ、最初のマタハラがあって3年も経ってから事件化したのかというのもそうですし、この当該と組合が何を求めているのかもよくわかりません。損害賠償金なのでしょうか。それなら、社長らの暴言や嫌がらせと、心身の不調→早産との間に明確な因果関係が立証されないと難しいケースだと思います。そして立証は困難を極めるでしょう。
いずれにせよ、なけなしの損賠金が取れたとしても、清水(PU)が2割、新村弁護士ら(旬報)が2割、それプラス経費で半分近くものお金が当該の手許から消えていくことになります。
なぜ団交で解決しないのか不思議なのですが、これなら、最初から自分で弁護士を雇った方がよかったケースだったかも知れませんね。通常、弁護士の成功報酬は1割だそうです。
前置きが長くなりましたが、本題です。
社長(男性)と副社長(女性)による「苛烈なマタハラ」があったということなのですが、清水氏らの主張によると、その際、副社長が「わたしも二十歳の頃妊娠したけど、仕事が大事だから堕ろしましたよ」と発言したというのです。つまり、当該社員/組合員に暗に中絶を強要しようとしたのだと。清水氏はわざわざ、副社長のこの発言を見出しにして、ビラやブログの目立つ位置に掲げています。
私はこの件に触れて、色々な違和感を持ちました。
まず、副社長が二十歳の頃に中絶したというのが本当だとしても、「仕事が大事だから」というのは二十歳の娘さんの発想ではありません。彼女がどれくらいの年代の人なのか知りませんが、本当にそんなことを言ったのでしょうか?例によって清水が歪めて伝えているのではないでしょうか?
本当であれ嘘であれ、どんな事情であれ、「わたしは二十歳の頃に堕ろした」など拡散されては、副社長の名誉やプライバシーにも関わります。何十年昔のことであっても、一般に中絶というのは女性にとって辛い経験、触れられたくない話題だからです。いくら本人が言っているとしても、会社の中でこの当該の前でだけ言うのと、ビラやネットで拡散されるのとでは全然違います。
断っておきますが、私は社長や副社長がこの当該社員に対して言ったりしたりしたマタハラが本当なのであれば、その悪質性を些かも弁護するつもりはありません。
しかし、清水直子委員長や新村響子弁護士は、この副社長のことは何とも思わないのでしょうか?「中絶って、色々葛藤があっただろうに、そういうことに触れるべきではない」とは思わないのでしょうか?
私はかわいそうだと思いますし、こんなビラを撒くのはやりすぎ、自分たちの評判を落とすだけだと思いますよ。自分たちが勝ちたいがために、副社長の中絶発言を攻撃材料に使うとは。
ビラを受け取った人のことも考えてみたらいい。「わたしは二十歳の時に堕ろした」と書いてあるビラなんて、本当に嫌な気持ちになるだけです。
痛ましい。あまりに痛ましい。副社長は逆に清水らを訴えてもいいでしょう。本当に言ったとしても拡散していいことといけないことがあります。
さっき言ったように、副社長の年齢は不明ですが、二十歳で妊娠して余裕を持って産み育てられる状況であることはあまりないと思います。非常に苦労するか、止むなく中絶するかのどちらかでしょう。一度でも中絶をするとその後、妊娠しにくい体質になることもあります。ただひたすら悲しい話、痛ましい話です。
こうしたことは全て私の勝手な憶測ですので、全然違っていたら副社長には申し訳ありませんが、辛い経験が思い出されたあまりについ、若くて幸せそうな女性社員に向かって悪辣な口を利いてしまったのではないかと想像します。
それぐらいの妬み嫉みの心は私にだって覚えがあります。
(文:組合員 N)