投稿記事削除仮処分命令申立書(令和元年5月2日)

投稿記事削除仮処分命令申立書

2019(令和元)年5月2日

東京地方裁判所民事第9部御中

債権者代理人弁護士竹村和也

当事者の表示

当事者目録記載のとおり

被保全権利

人格権に基づく妨害排除請求権としての削除請求権

申立の趣旨

債務者は、別紙人格権侵害投稿記事一覧表の各投稿記事のうち「記述の引用」欄記載の記述を仮に削除せよとの裁判を求める。

申立の理由

第1 被保全権利

1 当事者

(1)債務者

債務者は、申立外の労働組合「プレカリアートユニオン」(以下「申立外労組」という)の組合員であり、「DMU民主一般労働組合」(以下「DMU」という)なる組織を立ち上げたと称し、その「代表者書記長」を名乗っている。

なお、債務者は「Y1」を通称としている(疎甲1号証・本件ブログ〔そのうち評議会議事録〕)。

債務者は、DMUの発信媒体として、ドメイン名を「DMU.OR.JP」とするブログを運営している(疎甲第2号証.WHQIS検索)。

(2)債権者X1

債権者X1(以下「債権者X1」という)は、申立外労組の組合員であり、自然人である。債権者X1は、申立外労組の如何なる役員にも就任しておらず、一般組合員である。

2 債務者の削除義務

(1)債務者による投稿記事

債務者は、本件ブロダにおいて別紙人格権侵害投稿記事一覧表(以下、単に「別紙」という)の記事を含む複数の記事を投稿し、インターネット上で誰でも閲覧することができる状態にしている。

債務者は、別紙記載の投稿記事を投稿しているところ、後述のとおり、同記事の内容は、単に債権者X1を中傷し、同人の人格権を侵害するものであり、インターネットを通じて不特定人に広く公開され、現在もその状態に置かれている。

(2)債権者X1に対する人格権侵害等

ア 債権者X1が違法な「盗聴」行為をしたことなどを公開することによる人格権侵害(名誉権侵害)

(ア)債権者X1が盗聴行為をしたこと等の公開

記事番号1は、債権者X1が「盗聴器をしかけるという不当労働行為を繰り出し」たこと、

記事番号2は、①「性犯罪企業デイズジャパン出身」の債権者X1が「アウティング・人権侵害・秘密録音」をしたこと、②「深刻な数々の性犯罪事件で知られるブラック企業デイズジャパンで長年働いていた」「札付き」である債権者X1が「盗聴・秘密録音」したこと、

記事番号3は、債権者X1が債務者を盗聴するため盗聴器を電話機の裏に設置したこと、

記事番号4は、「性犯罪企業デイズジャパン」出身の債権者X1が「常時盗聴」していたこと、

記事番号5は、②債権者X1が「盗聴」・「盗撮」行為を行っていること、③債権者X1が「デイズジャパン(広河隆一氏)」から「人権侵害のDNA」を持ち込んだこと、④債権者X1は、「前職において深刻な人権侵害を見逃しながら長年働いてきたばかりか、プレカリアートユニオンの職員として、盗聴行為という重大な違法行為・不当労働行為を現に行って」いること、⑤債権者X1は「数々の性暴力、深刻な犯罪行為で知られたデイズジャパンの元従業員である」ところ、「秘密録音、盗聴、盗撮といった違法行為」を行っていること、

記事番号6は、①債権者X1が盗聴行為を行ったこと、②債権者X1がデイズジャパン出身であること、

記事番号7は、②債権者X1は、プレカリアートユニオンのアドルフ・アイヒマン」であり「デイズジャパン元従業員」であること、③債権者X1は、「非正規労働者の人権を踏みにじるために働く、まるでナチスドイツでヒトラーの忠実な犬としてユダヤ人大量虐殺の主導的役割を果たし、戦後も『私は指示に従っただけだ』として責任から逃れ続けようとしたアドルフ・アイヒマンのような人物」であり、「性犯罪で知られたデイズジャパン(広河隆ー社長)」出身であること、④債権者X1は、債務者や相談者等に対して「盗聴」行為を行っていること、⑤債権者X1が盗聴器を作動したことなどを認めていること、⑥「デイズジャパン」の債権者X1は違法行為である「盗聴」行為・組合潰しを行っていること、⑦債権者X1は「ブラック企業」である「デイズジャパン」出身であり、「盗聴」行為を行ったことなどが示されている。

以上の記事は、(A)「性犯罪企業デイズジャパン」出身であり、そこで深刻な人権侵害を見逃してきた債権者X1が、(B)申立外労組において、違法な「盗聴」・「盗撮」行為を行い、非正規労働者等の人権侵害を行っていること、(C)そして、それはユダヤ人大量虐殺を主導的に行ったアイヒマンのようであることを示すものであるが、いずれも債権者X1の名誉を棄損する違法なものである。

(イ)債権者X1の名誉毀損を侵害する違法なものであること

上記のうち(A)については、一般読者(閲覧者)からすれば、あたかも債権者X1が、昨今、性暴力等の報道がなされた「デイズジャパン」において、広河氏の問題行為に加担し続け、そのことと結び付けて同人が「人権侵害」に及んできた人物であると認識させるものであり、その社会的評価を著しく低下させるものである。

(B)については、一般読者(閲覧者)からすれば、(A)において広河氏の問題行為に加担してきたと結び付けられている債権者X1が、事実と異なるにもかかわらず、申立外労組においても「盗聴」「盗撮」という違法行為を行っていることを認識させるものであり、その社会的評価を著しく低下させる。

(C)についても、債権者X1がナチスドイツのアイヒマンと評することで、一般読者(閲覧者)からすれば、債権者X1が無自覚に違法行為を繰り返す人物であることを容易に認識させるものであり、やはり、その社会的評価を著しく低下させる。

(ウ)違法性阻却事由は存しないこと

上記記事は、債権者X1の名誉を棄損する違法なものであるが、その違法性を阻却する事由も存在しない。

a 公共の利害に関する事実ではないこと

まず、上記(A)乃至(C)の何れの指摘も、何ら公共の利害に関する事実ではない。債権者X1は、一般私人であり、かつ、申立外労組の一般組合員でしかない。

後述のとおり、本件ではそもそも「盗聴」など行われていないが、仮に当該行為が問題になったとしても、それはあくまでも申立外労組の問題であり、債権者X1の行為であることを公表する公共性は存しない。

なお、債務者が(A)債権者X1の前職(デイズジャパン)を公表し、あたかも債権者X1が当該前職において広河氏の問題行為に加担していたであろうことを公表することの公共性もない。

b 公益目的ではないこと

また、上記(A)乃至(C)の何れの指摘も、何ら公益を図る目的によるものではなく、単なる債務者による債権者X1に対する嫌がらせ行為にすぎない。

そのことは、(A)や(C)の表現方法に見られるように殊更に扇情的な表現(性犯罪企業、人権侵害のDNA、アイヒマン、ユダヤ人の大量虐殺等)が用いられていることからも分かる。

c 真実性も認められないこと

そもそも、上記(A)乃至(C)の共通の基盤となっている、債務者が本件ブログにおいて記述する「盗聴」行為は、真実ではない。

債権者X1は、当時、申立外労組とトラブルとなっていた債務者との会話について、申立外労組の執行委員長である債権者清水から「録音・録画しておいてください」と伝えられ、その記録のために録音しようとしただけである。

しかも、債権者X1は、債務者の面前でICレコーダーを取り出し録音しようとしたのであって、秘密に録音しようとしてもいない(だからこそ、債務者は、記事番号7の記載のとおり録音に抗議しているのである)。

そして、債権者X1は、債務者による執拗な抗議を受け、結局は、録音をしていない。

「盗聴」とは、第三者間における会話を当事者の同意を得ずに録音することを意味する。債権者X1が行おうとしたのは、自身が会話当事者である会話であり、「盗聴」の定義には該当せず、そのため、債権者X1による行為が「盗聴」であると評価されること自体が誤りである。

また、債権者X1は、ICレコーダーを取り出して目の前で録音をしようとしたのであって、「秘密録音」でさえない。しかも、結局、債権者X1は、録音をしていない。

以上のとおり、本件においては、債権者X1が「盗聴」を行ったことは真実ではなく、記事番号7に記載されているやり取りからしても、債務者が、債権者X1が盗聴行為を行ったと信ずるについて相当の理由があったとも解することはできない。

d その他の違法性阻却事由

上記(A)及び(C)が、仮に論評による名誉棄損行為であったとしても、その違法性は阻却されない(論評による名誉棄損の違法性阻却事由については、最判平成16年7月15日民集58巻5号1615頁等)。まず、(A)及び(B)の論評は上述aのとおり公共の利害に関するものではなく、bのとおり公益目的もない。

そして、(A)及び(C)の論評の前提となる事実は、債権者X1の「盗聴」行為は真実ではない。なお、「盗聴」という事実における重要な要素は「第三者間」の会話の「無断」録音であって、会話を「録音」すること自体は重要な部分とは言えない。

そして、(A)及び(C)は、いずれも債権者X1の人格を攻撃するための不必要な表現を用いており、論評としての域を逸脱している。

特に(A)は、債権者X1は、デイズジャパンという会社に所属していただけにもかかわらず、デイズジャパンを、報道されたことのみを基にして、しかも、その報道のリンク先を提示しながら、「性犯罪企業」「広河隆一」と表現し、これと債権者X1が同社に所属していたことのみを結びつけることによって、あたかも債権者X1が広河氏の問題行為に加担したかのような指摘を執拗に繰り返しており、悪質という他ない。

以上より、(A)及び(C)が論評であったとしても、その違法性が阻却される余地はない。

イ 債権者X1の顔写真等を公開することによる人格権侵害(肖像権・名誉権侵害)

(ア)債権者X1の顔写真の公開

別紙の記事番号5ー①、7ー①の写真は、「X1」と債権者X1の実名を明記したうえで、債務者が撮影した債権者X1の顔写真を掲載している。

(イ)債権者X1の顔写真の公開は肖像権を侵害する違法なものであること

「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益」を有し、「人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり、人の容ぼう等の撮影が違法とされる場合には、その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は、被撮影者の上記人格的利益を侵害するものとして、違法性を有する」(最判平成17年11月10日民集59巻9号2428号)。

債権者X1は、債務者から容ぼうを撮影されることにつき承諾したことはなく、記事番号5ー①、7ー①の写真は債権者X1に無断で撮影されたものである。

そして、債権者X1は、申立外労組の何の役職にも就かない一般組合員であり、一般私人であるところ、承諾なく容ぼうを撮影されることが許容される地位にはない。

その他、債務者が、債権者X1の写真を撮影することの必要性は全く存在せず、むしろ、上記アのとおり、債権者X1が「盗聴」行為を行った犯罪者であるかのように指摘するなどしていることからすれば、その個人識別性を高めることを目的に撮影されたものであると解する他ない。

以上の諸事情からすれば、前掲最判平成17年11月10日の考慮要素からしても、記事番号5ー①、7ー①の写真を撮影し、それを誰でも閲覧できるインタ一ネット上で公表することは、債権者X1の肖像権を侵害する違法なものである。

なお、記事番号5ー①、7ー①には、債権者X1の肖像権に配慮し目隠し加工をすると称して、写真の目の部分にモザイクが施されている。しかし、かかるモザイク加工は、肖像権へ配慮したかのように振る舞うだけで、実際に債権者X1の肖像権には配慮されず、かえって債権者X1に悪印象を与える加工処理となっており悪質である。

そして、記事番号5ー①、7ー①の写真は、モザイクが施されてはいるものの、債権者X1の実名等とともに公開され、さらに写真の目の部分のみの細い目伏せ処理以外は何らモザイク加工がされておらず、人物の特定機能が十分に果たされており、債権者X1の肖像権侵害の成否に影響するものではない。

肖像権に配慮するのであれば、顔全体にモザイク加工をすれば足りる(作業としては容易かつ可能である)。かかるモザイク処理の方法、むしろ、写真の目伏せ処理のみを行い人物識別を可能としたまま、あたかも債権者X1が犯罪者であるかのような悪印象を与えるモザイク処理であり、悪質である。

(ウ)債権者X1の顔写真の公開は名誉権を侵害する違法なものであること

上記の通り、記事番号5ー①、7ー①の写真は、記事番号6及び11の本文において、債務者が、債権者X1が「盗聴」行為等の犯罪行為を行ったということを主張することと併せて掲載されたものであるが、あえてモザイクで目の部分のみを隠すような加工をしている。

このような表現行為(モザイクによる目隠し加工)は、一般読者(一般閲覧者)からすれば債権者X1があたかも犯罪者であるかのように見えるものであって、債権者X1の社会的評価を低下させるものであり、名誉棄損にもあたる。

また、債務者による当該投稿は、単に申立外労組の内部を批判するものにすぎず何ら公益目的によるものではなく、専ら債権者X1の名誉や肖像権を侵害することを目的とする不当なものであるし、債権者X1の目隠し画像が公共の利害に関するものでもないため、その違法性が阻却されることはない。

ウ 債権者X1の音声や顔写真等を映像にて公開することによる人格権侵害 

別紙記事番号7—⑧は、(i)「一度の違法行為が人生を変えることもある」「盗聴請負人X1はデイズにかえれ」と記載された画像や(ii)債権者X1の顔写真を無断で掲載しつつ、(iii)債権者X1と債務者との会話を音声ファイルとして掲載している。

(i)の文言が債権者X1の名誉を毀損し、その違法性阻却の事由もないことは上記アと同様である。また、(ii)の債権者X1の顔写真が債権者X1の肖像権を侵害することは上記イと同様である。さらに、(iii)は、債務者が、債権者X1との会話を無断で録音した「秘密録音」であるが、当該音声を話者である債権者X1の同意なく掲載するものである。

自身の声等も人格権の一部を構成するものであるところ、それを無断で掲載することは人格権侵害となり違法である。なお、債務者は、同じ音声ファイルを動画投稿サイトである「YouTube」にアップロードしたが(疎甲4号証の1)、債権者X1の申立によって、YouTubeによるプライバシーガイドラインに基づく審査を経て削除された(疎甲4号証の2)。

エ 小括

以上のことから、債務者が本件ブログに掲載した記事によって、債権者X1の人格権及び肖像権が侵害されていることは明らかである。そして、債務者は、本件ブログの記事を削除する権限を有しているのであるから、債務者は債権者X1に対して別紙の記事を削除すべき作為義務を負っている。

よって、債権者X1は、債務者に対し、人格権に基づき、別紙の記事を削除するよう請求する権利を有する。第2保全の必要性債権者X1は上述のとおり、盗聴行為を行っている犯罪者という名誉棄損の事実(乃至は論評)を公開されるという権利侵害を現在も受けている。

また、当該情報とともに自身の顔写真も公開され、その肖像権等が現在も侵害されている。それらはインターネット上で行われており、世界中の誰でも常に閲覧することが可能な状態である。

しかも、それは短時間で容易に複製・閲覧されるものであり、現に債務者は本件ツイッターにリンクを貼るなどして拡散している。よって、それを直ちに削除させる保全の必要性は当然に認められる。

第3 結論

以上より、申立の趣旨記載の申立が認められる。

以 上

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