仮処分命令申立書(プレカリアートユニオン定期大会出席妨害事件)

仮 処 分 命 令 申 立 書

令和元年8月22日

東京地方裁判所民事第   部  御中

 

債権者                高 木 〇 〇

当事者の表示               別紙当事者目録のとおり
仮処分により保全すべき権利                          団結権に基づく組合活動参加権・団体交渉権

 

申 立 の 趣 旨

債務者は,債権者が,令和元年9月14日のプレカリアートユニオン定期大会に出席するのを,仮に妨害してはならない。
との御裁判を求める。

申立の当事者

債権者高木

債権者高木は,債務者プレカリアートユニオン(以下「債務者ユニオン」)の組合員である。

債権者高木は,若年性高血圧症と不眠症,気分変調障害を患って身体障害認定を受けている。そのため,疲労やストレスが蓄積すると血圧が急上昇し,就労困難となることがある。

債権者高木は,上記疾病を理由として生活保護決定を受けているが,福祉事務所からは,半就労・半福祉の方針で自立を目指すよう指導されている。

債務者プレカリアートユニオン

債務者ユニオンは,東京都渋谷区代々木4丁目29―4西新宿ミノシマビル2階に本部を置く労働組合である。個人加盟を原則とし,200名前後の組合員を擁する。

債務者ユニオンでは,執行委員長が組合を代表し,業務を統括する(規約第18条)。執行委員は各専門部を担当し,組合業務を執行する。執行委員長,執行委員,及び書記長はいずれも役員であり,大会において,代議員の直接無記名投票によって選ぶ(同第17条)。

大会は,執行委員および,組合員の直接無記名投票によって選出された代議員によって構成される(同第12条)。

規約に基づき,債務者ユニオンの組合員は選挙権および被選挙権を享有する。ただし,権利停止処分を受けた場合,これを失う(選挙大会規定第2条)。大会運営委員会は,執行委員会によって任命され,選挙に関する一切の権限をもつ(同第4条)。

債務者ユニオンでは,令和元年9月14日,令和元年度の定期大会(本件大会)が開催される予定である。

関口直子氏は,債務者ユニオンの組合員であり,6月23日の債務者ユニオン臨時大会で執行委員長に選任されたとして,債務者ユニオンを占拠,実印や預金通帳を占有するなどしている者である。

関口氏は,債務者ユニオンでの活動において,旧姓の「清水」を使用することがある。

武内惇氏は,債務者ユニオンの組合員であり,関口氏と同様に6月23日の債務者ユニオン臨時大会で執行委員に選任されたとして,債務者ユニオンを占拠している者である。

本件の経緯

債権者高木の債務者ユニオン加入と組合活動

債権者高木は,平成29年6月20日,債務者ユニオンに加入した。債権者高木は,債務者ユニオン加入後,債権者高木に残業代等を支払わずパワーハラスメントによって退職に追い込んだ申立外中央梱包運輸株式会社との労働争議に取り組む一方,組合員として,他の組合員の使用者に対する抗議活動に積極的に取り組んだ。

債権者高木の債務者ユニオンでの就労

平成30年夏頃,債権者高木と中央梱包運輸との労働争議は和解によって解決した。

そこで,債権者高木は,平成30年8月頃,外形上債務者ユニオンの代表者として行為していた関口氏に,福祉事務所の指導を踏まえ,債権者高木をアルバイトとして雇用することを申し込んだ。

関口氏は,債権者高木が本件疾病を患っていることを承知しながら,所定労働時間を週1日,週2時間程度として債権者高木を雇用した。上記雇用契約の事実及び労働条件は,債務者ユニオンの執行委員会議事録に記載された。(ただし,同議事録では,債権者高木の所定労働時間は3時間とされている。)

ところが,債権者高木が実際に債務者ユニオンで就労したところ,所定労働時間である2時間ないし3時間を超える残業が毎日のようにあり,毎週の出勤日数も,緊急の業務を命じられるなどして,週3日,4日と増えていった。

しかし,債務者ユニオンは,債権者高木に対して,残業代等を一切支払わなかった。

申立外DMUの結成と「質疑書」の提出

平成31年3月2日,債務者ユニオンでは,債権者と同じく債務者ユニオンのアルバイトをしていた申立外前田史門氏が,債務者ユニオンの「組織内労組」として労働組合のデモクラティック・ユニオン(以下「DMU」)を結成した。

債権者高木はDMUの結成に参加しなかったが,債権者高木自身の労働条件も上記のとおり劣悪なものであったことから,組合結成は無理からぬものと考えた。

ところが,関口氏及び債務者ユニオンは,3月14日,債務者ユニオンのアルバイトは労働者ではないと主張してDMUとの団体交渉を拒否し,3月18日には,DMUの結成が「分派活動」であると主張して,前田氏を1年間の権利停止処分に付した。

これに対し,DMUは,直ちに不当労働行為の救済を求めて審査を申し立て,以後,東京都労働委員会による審査が継続している(都労委平成31年(不)第20号プレカリアートユニオン事件,以下「本件不当労働行為調査事件」)。

債権者高木は,アルバイトは労働者ではないという債務者ユニオンの見解はじめ一連の紛争に債務者ユニオンのアルバイトとして不安を抱いたことから,4月1日,債務者ユニオンと執行委員会(役員)を名宛人として,「質疑書」を提出した。

同質疑書において,債権者高木は,債務者ユニオンにおける大会選挙の適法性や,債務者ユニオンのアルバイトや専従職員の労働者性について疑問に思うところを質したが,関口氏,武内ら債務者ユニオンの執行委員会は,同質疑書を見て,債権者高木がDMUに加入したと考え,一切回答をしないことを決め込んだ。

もっとも,現実には,債権者高木はDMUに加入しておらず,同質疑書に対して誠実な対応さえあれば,むしろDMUには加入しないつもりであった。

債権者は,4月9日頃まで質疑書に対する回答を待機したが,債務者ユニオンからは一切の回答がなかった。それどころか,その頃,債務者ユニオンの専従職員である申立外佐藤智秋氏から,「組合活動か労働か分からないという方には組合活動に参加して頂くわけにはいきません。」と言い渡され,アルバイトとしての就労を拒否されるようになり,事実上解雇された。

債権者高木のDMU加入と関口氏による組合私物化の発覚

4月12日,債権者高木は,上記の事態を受け,DMUに加入することを決心した。DMUは,その日のうちに,債権者高木の未払賃金等を議題とする団体交渉を申し入れた。

また,DMUが証拠を精査した結果,関口氏が執行委員長に就任したと主張する平成27年以来の債務者ユニオンの大会選挙が,議決権者である大会代議員の全員を関口氏が指名し,組合員には選挙権・被選挙権がないという違法,無効なものであり,関口氏の債務者ユニオン執行委員長としての地位に疑義があることが判明していた。

これを放置しては,債務者ユニオンの労働者である債権者高木や前田氏に関して債務者ユニオンと有効な労働協約を締結できないことから,DMUは,債務者ユニオンにおいて,規約に基づく民主的かつ適法な大会を開催することを要求していた。

関口氏らによる債権者高木及びDMUへの攻撃

関口氏らは,債権者高木がDMUに加入するや,債権者高木を含むDMU組合員への攻撃を開始した。

前田氏に対しては,関口氏らが,同氏らに関して事実無根の誹謗中傷をするビラを各所に500通もバラ撒き,またインターネット上に投稿した。さらに,前田氏に対する処分の通知書を,債務者ユニオンが入居するユニオン運動センターの出入口に貼り出した。

債権者高木に対しては,関口氏が,債務者ユニオンの内部において,「高木さんは,生活保護を受給しているから,残業代を支払う必要はない。」として,高木のプライバシーを暴露しながら,不当な風説を流布し始めた。

本件アクションの実施

上記を受けて,DMUは,使用者である債務者ユニオンに対する抗議行動を強化することを決定した。

DMUは,その一環として,4月29日,債務者ユニオンの上部団体である申立外全国ユニオン(連合加盟)が主催する東京レインボープライドにおける労働相談の付近で,「連合傘下プレカリアートユニオンは非正規差別をやめろ」などと記載されたプラカードを持ち,佇立する抗議活動(カウンターアクションと称する,以下「本件アクション」)を実施した。

本件アクションには,債権者高木のほか,DMUの代表者である前田氏,及び申立外名倉マミ氏が参加した。

もっとも,債権者高木らが本件アクションを始めたところ,全国ユニオンの事務局長であり,関口氏の夫である申立外関口達矢氏が来て,「今日はプレカリアートユニオンの相談員は来ないから,抗議活動はやめてくれ。」と要求し,次いで申立外市橋耕太弁護士が来て,「これは全国ユニオンの活動ではなく,労働弁護団の活動である。労働弁護団の営業権を侵害するなら,法的措置をとる。」という趣旨のことを述べた。

そこで,債権者高木らは,やむを得ず,1時間程度で本件アクションを切り上げた。

また,市橋弁護士の要求に応じる形で,債権者らは,労働相談をしているテントから2メートル以上離れた場所で佇立することになった。そのため,全国ユニオンの労働相談に人が来なくなるなど,その運営に直接影響が生じるようなことはなかった。

本件臨時大会

関口氏は,DMUの指摘にもかかわらず,平成27年以来の,組合員に選挙権及び被選挙権がない定期大会は有効だと主張して譲らず,DMUに対する3月14日付「回答書」においても,「プレカリアートユニオンの臨時大会は,他の労働組合からの要求によって開催するものではありません。」と主張し,債務者ユニオンを占拠し続けていた。

しかし,関口氏による違法な組合運営の発覚を受けて,労働協約が無効に帰することを懸念した債務者ユニオンに対する使用者のうち2社が団交拒否をするに及び,関口氏は,「外部からの指摘を受け,法的な問題はないものの瑕疵があった。」として,令和元年6月23日,債務者ユニオンの臨時大会を開催することを余儀なくされた(本件臨時大会)。

ところが,本件臨時大会も,債権者高木らを排除するために仕組まれた違法,無効なものでしかなかった。

具体的には,関口氏は,①債権者高木と意見を同じくする名倉氏からの大会代議員立候補届を無効なものとして扱い,②債権者高木には立候補届すら送付せず,③組合費を,執行委員会の承認なく3ヶ月以上滞納して組合員資格を喪失した(規約第10条3項(4))者を,関口氏が指名して,少なくとも地域ブロック支部の大会代議員候補としてでっち上げていた。

債権者高木は,6月22日付「通知書」をもって上記事実を指摘し,抗議を申し入れたが,関口氏らによる説明ないし対応はなかった。

6月23日,関口氏らは債務者ユニオン臨時大会を開催したが,本件臨時大会の出入口に置かれていた出席者名簿によると,名倉氏からの立候補届は無効なものとして扱われ,代議員名簿から削除されていた。

しかも,債務者ユニオン大会の決議のうち,少なくとも役員の選出及び同盟罷業権の確立,及び規約の改廃は,債務者ユニオン組合員の直接無記名投票によって選ばれた大会代議員の決議によらなければならないところ(規約第17,21,24条),本件臨時大会では,なぜか,所属する支部で大会代議員に当選しない限りは,執行委員会として大会を「構成」し,討議に参加する資格しかない(規約第12条)はずの関口氏らが,債権者高木や名倉氏と同様に,所属の地域ブロック支部(但し,仲英雄氏についてのみ静岡支部)の大会代議員として立候補した形跡がないにもかかわらず,全員,大会代議員として本件臨時大会に参加していた。

また,債権者高木らの6月22日付「通知書」を受けてか,地域ブロック支部の代議員として立候補し,当選したはずの水戸麻由紀氏や押見貴之氏は,大会代議員ではなく,「組合員」の名簿に記載されていた。

結局,本件臨時大会では,いかなる支部においても大会代議員に選出されていない,執行委員を自称する関口氏ら6名が大会代議員11名の過半数を占める形で開催され,関口氏らを執行委員長に選任する決議及び「過去の全ての定期大会及び執行委員会の決議を追認する」決議などが可決された。

東京都労働委員会による当事者追加決定

他方,DMUは,本件不当労働行為調査事件において,関口氏による平成27年以来の違法・無効な組合運営の事実を前提に,一貫して,関口氏に債務者ユニオンの代表権がないことを前提とする主張を展開していた。

そうした中,DMUは,6月5日付「不当労働行為救済追加申立書」において,次のとおり,当事者追加の申し立てをした(但し,文中に「平成30年7月9日」とあるのは,「平成30年9月7日」の誤である。また,引用部分中の「本件定期大会」とは,上記平成30年9月7日の定期大会のことである)。

申立人は,被申立人における平成30年7月9日の定期大会の不存在又は決議の無効を主張している。ところで,本件定期大会が不存在又は決議無効に帰した場合,申立人組合員との労働契約の相手方は,その申し込みをしたのが関口氏であり,実際に関口氏の業務命令に基づいて労働に従事していた以上,法人であるプレカリアートユニオンではなく,関口氏であると考えるほかにない。

実際,申立人に対する不当労働行為の行為者は,その大部分が関口氏である。勤務中における業務命令も,その大部分が関口氏によるものであった。賃金面においても,関口氏が被申立人プレカリアートユニオンを私物化していたため,関口氏の資産とプレカリアートユニオンの資産の区別はなかった。

よって,本件定期大会が不存在又は無効に帰した場合に備えて,また,関口氏による不当労働行為を抑止するため,関口氏を被申立人とする必要がある。

上記を受け,東京都労働委員会は,関口氏の意見も聴いた上で,7月19日,公益委員会議の決定で,関口氏を本件不当労働行為調査事件の被申立人として追加した(労働委員会規則第32条の2の2項)。

関口氏による「弁明の機会の付与」

8月7日,関口氏は,債権者高木に対して,「弁明の機会の付与」と題する書面を送付してきた。

同書面は,本件アクションの実施が,債務者ユニオンの統制及び秩序,組合活動を乱す行為であるから,債務者ユニオンとして統制処分を検討するので,弁明の機会として,8月17日午後5時に,東京都新宿区西新宿7丁目19―6東洋ビル501号室に出頭することを要求する内容であった。同様の書面は,本件アクションに参加した前田氏,名倉氏にも送付された。

ところで,債務者ユニオンでは,統制処分のための弁明の場所が債務者ユニオン事務所以外の場所であったことは一度もなかった。

そこで,債権者高木らが,東洋ビル501号室について調査をしたところ,株式会社西村髙木なる素性の分からない会社が登記されており,佐藤昇平なる男が住民登録をしている形跡もあった。

また,インターネットで検索し,さらに,他人をして実際に同ビルの玄関口まで訪問させたところ,表札や郵便受を見る限り,同室が,貸会議室やレンタルスペースとして一般に貸し出されている形跡はなかった。

そのうえ,ビルの所有者は陳凱群なる台湾人の男であったが,同姓同名の者が,平成27年頃,ヘロイン密輸の疑いで台湾警察に逮捕されていることも判明した。

そのため,債権者高木は身の危険を感じ,8月15日頃,DMUと債務者ユニオンとの労使紛争の経緯も含めて所轄の小岩警察署に相談に行ったところ,相談に応じた警察官から,「その場所には行かない方がいい。」とのアドバイスを受けた。

また,債務者ユニオンの,関口氏らを執行委員長として選任したとする6月23日の臨時大会自体が違法・無効なものであり,東京都労働委員会においても,それを前提として関口氏を被申立人に追加する決定があったことを踏まえ,債権者高木は,8月17日午後2時頃,関口氏の自宅に赴いて「回答書」を交付した。

8月17日午後5時頃,債権者高木は東洋ビル501号室に行かなかったが,前田氏は,この場所に赴いた。

前田氏が部屋の入口から内部の様子を確認したところ,「弁明の機会の付与」によれば(債務者ユニオンの)執行委員会が弁明を聞くはずであったのに,その場に居たのは,関口氏と,記録係と称する社会保険労務士の申立外稲葉一良氏だけであった。また,その室内やドアの様子を見ても,その場所が貸会議室であるという形跡はなかった。

なお,前田氏は,501号室が貸会議室ではなかったこと及び関口氏以外の執行委員が誰も来ていなかったことに当惑し,“弁明”に応じることなく東洋ビルを辞去した。

「制裁の通知」の送付

8月19日,関口氏は,債権者高木に,電子メールで,「制裁の通知」と題する書面を送付してきた。同書面によれば,債権者高木は,債務者ユニオンで1年間の権利停止処分を受けたので,「事務所への立ち入り」を含む一切の組合活動への参加を禁止するとのことであった(本件権利停止処分)。

債権者高木の組合活動参加権及び大会参加の必要性

債権者高木の組合活動参加権

労働組合員は,団結権の一部として組合活動参加権(組合活動に参加する権利)を有する。労組法第5条2項各号は,いわゆる組合民主主義に基づく組合活動参加権の内容を具体的に規定するものである。当然ながら,債務者ユニオンの規約にも,労組法5条2項各号と同旨の各規定が置かれている。

債権者高木は,債務者ユニオンの組合員である以上,債務者ユニオンの規約に基づいて有効に権利停止処分に付されない限り,債務者ユニオンの選挙権及び被選挙権を享有するのであり,また,債務者ユニオンの組合員たる資格を失わない限り,債務者ユニオンの組合員として債務者ユニオンに立入り,債務者ユニオンの大会に出席する権利がある。

債権者高木が本件大会に出席する必要性

債務者ユニオンでは,関口氏が債務者ユニオンを私物化する目的に基づく違法な大会運営が繰り返されており,債務者ユニオンの労働者を組織するDMUとしても,適法に選挙された代表者を早期に選出し,労働協約の締結に向けて団体交渉を進展させる必要がある。

そのため,債務者ユニオンのアルバイトとしてDMUの組合員であると同時に,債務者ユニオンの組合員資格をも有する債権者高木としては,債務者ユニオンにおいて大会代議員に立候補し,支部員の投票によって大会代議員として選出され,完全な発言権及び表決権をもって討議に参加することで,債務者ユニオンの民主的な話し合いのもとに正当な代表者を選出するよう働きかける必要がある。

本件権利停止処分の違法性

不利益取扱又は支配介入の不当労働行為であること

本件権利停止処分は,債務者ユニオンの労働者を組織するDMUが,使用者である債務者ユニオンの非正規労働者に対する差別に抗議するために実施した本件アクションが,使用者である債務者ユニオンの「統制,秩序または組合活動」を乱したとして,債権者高木の組合員としての権利を剥奪する内容である。

それ自体,債権者高木の労働者としての権利行使を理由として職場から排除し,債権者高木を組織するDMUに打撃を与えるものであり,当然に不利益取扱及び支配介入の不当労働行為を構成する。

関口氏に債務者ユニオンの代表者としての資格がないこと

関口氏らは,6月23日の本件臨時大会で,それぞれ債務者ユニオンの役員である執行委員長及び執行委員に選任されたと主張している者であるが,本件臨時大会には,臨時大会に出席して代議員となる意思があった債権者高木及び名倉氏を違法に排除する,また,大会代議員でない関口氏らが,議決権者の過半数を占めて役員選出の決議に参加するなど,決議の結果に影響を及ぼすべき数多くの重大な瑕疵があった(7頁)。

したがって,本件臨時大会における,関口氏らを各役員として選任する決議は不存在であるか,少なくとも無効なものである。

東京都労働委員会も,上記のことを前提として,関口氏の意見を聴いた上で,公益委員会議の決定で関口氏を被申立人として追加したのであるから,関口氏には,債務者ユニオンの執行委員長としての地位がないものと考える以外にない。

そのため,関口氏らには,債務者ユニオンの執行委員会として債権者高木を権利停止処分にする権原自体がない。

上記のとおり,債務者ユニオンの代表権に争いが生じている状況であるからこそ,債権者高木らを含む全組合員が平等に参加する形での,民主的で瑕疵のない定期大会の開催が不可欠なのである。

本件権利停止処分が不当な目的に基づくこと

仮に,関口氏が債務者ユニオンの執行委員長としての地位にないとまでは直ちにいえないとしても,関口氏が,債権者高木を権利停止処分に付すことを企画し,実際に「弁明の機会の付与」を送付するなどしたのは,上記のとおり,債権者高木が以前から「質疑書」を提出し,6月23日の本件臨時大会から排除されたことにも書面をもって異議を述べ,9月14日の定期大会にも地域ブロック支部の大会代議員として立候補するなどしていたことが真の動機であり,権利の濫用として無効なものである。

関口氏は,違法な組合私物化を前提として,実際には自らが指名した,組合員の総意と関係がない“大会代議員”によって選出された執行委員会の“決議”をでっち上げ,自らに「行動費」などの名目で債務者ユニオンから年額560万円以上に及ぶ金銭を給付したり,自らのアメリカ旅行の費用として30万円を給付したりしている。

債権者高木は,本件大会に大会代議員として出席すれば,上記の問題について関口氏に説明を求め,その中で不正が発覚した場合は,関口氏に対する除名処分を含む制裁を提案するつもりであった。

関口氏が,約4ヶ月も前に実施された本件アクションを理由として本件権利停止処分をでっち上げ,債権者高木を定期大会に出席させまいとしているのは,上記の違法な組合運営を継続し又は隠蔽するため,若しくは債務者ユニオン内部での民主的な手続に基づく関口氏への責任追及がなされることを懸念してのこととしか考えられない。

処分対象事実が存在しないこと

また,本件権利停止処分は,債権者高木が本件アクションに参加したことによって,債務者ユニオンの「統制」「秩序」「組合活動」が乱されたことを理由とするものであるが,債権者高木らが本件アクションを実施したところ,主催者である全国ユニオンの関口達矢氏が出てきて,「今日はプレカリアートユニオンの相談員は来ないから,抗議活動はやめてくれ。」と要求し,本件アクションの間,実際に債務者ユニオンの者が労働相談を受けることはなかったのである。したがって,本件アクションによって,債務者ユニオンの統制,秩序,組合活動が乱されることはあり得ない。

さらに,市橋耕太弁護士の主張によれば,同労働相談は労働弁護団の営業活動であったから,債権者高木らは,市橋氏の同主張を受けて,労働相談の場所から2メートル以上離れて佇立せざるを得なかった。そのため,本件アクションの影響で,本件労働相談に来る者が居なくなるようなことはなかった。

このように,本件労働相談の主体が誰であるとしても,本件アクションに関係なく本件労働相談は実施されたのであるから,債務者ユニオンの統制,秩序,組合活動が乱された事実はない。

本件権利停止処分が関口氏の個人的な見解に過ぎないこと

さらに,本件権利停止処分は,もっぱら関口氏の個人的な行為ないし主張であり,6月23日の臨時大会の有効性を前提としても,債務者ユニオン執行委員会の決定と見なすことはできない。

すなわち,「弁明の機会の付与」なる書面を見ても,関口氏の署名・捺印しかなく,他の執行委員は連署していない。また,既に述べたように,前田氏が“弁明”の場所を現認したところ,関口氏と社会保険労務士である稲葉氏の2名しか居なかった。

さらに,「制裁の通知」を見ても,やはり関口氏の署名・捺印しかない。上記に照らせば,本件権利停止処分が関口氏の個人的な見解に過ぎず,債務者ユニオン執行委員会名の冒用であることは明らかである。

権利停止処分になっても定期大会には出席できること

仮に,本件権利停止処分が直ちに無効とまではいえないとしても,債務者ユニオンの規約によれば,権利停止処分の内容は,債務者ユニオン選挙大会規定2条に基づく選挙権,被選挙権を一定期間行使できなくなることに留まる。

上記のように,債務者ユニオンの選挙大会規定が権利停止処分の内容として選挙権及び被選挙権の停止をあえて規定しているのは,権利停止処分によって停止される権利が組合員としての不特定かつ全部の権利ではなく,選挙権及び被選挙権だけが停止されるということを明らかにする趣旨をあきらかにするためである。

とすれば,権利停止処分を受けたとしても,債務者ユニオンの組合員として労働協約の適用を受ける権利,債務者ユニオンの事務所に立ち入る権利,及び定期大会を傍聴する権利等,選挙権及び被選挙権以外の各権利が停止されるわけではない。

したがって,関口氏が作成した「制裁の通知」に記載されている権利停止処分の内容は,債務者ユニオン規約の範囲を逸脱した関口氏独自の主張にすぎない。

保全の必要性

債権者高木の本件大会出席の必要性

債権者高木は,本件大会への出席を妨害されない仮の地位を得ない限り,債務者ユニオンの組合員として大会代議員や役員に立候補したり,適法な代表者の選出に向けて討議に参加したり,関口氏や武内氏,及びその同調者の不正を追及したりすることができず,組合活動上著しい損害を蒙る。

そもそも,債権者高木は,債務者ユニオンのアルバイトとしてDMUに加入し,使用者である債務者ユニオンに団体交渉を申し入れ,債権者高木の労働条件の維持向上を目的に労働協約の締結を目指しているところ,本件大会が瑕疵なく開催され,適法に債務者ユニオンの代表者が選出されない限り,債権者高木の債務者ユニオンにおける労働条件を団体交渉で有効に確定させることができず,債務者ユニオンのアルバイトとしても,やはり著しい損害を蒙る。

債務者ユニオン関係者による本件大会出席妨害の危険

関口氏

関口氏は,法律上の原因なく債務者ユニオンから毎月出金している月額40万円の「行動費」に関する追及を受けることを懸念してか,選任の根拠とされた本件臨時大会や,過去の違法な定期大会選挙の問題について債務者ユニオンの内部で説明を尽くすことなく,債務者ユニオンの占拠という実力を背景として,違法な組合運営を繰り返している。

関口氏は,債務者ユニオンの出入口の鍵を保管している以上,債権者高木を実力で定期大会から排除できる立場にあり,関口氏自身が創作した「制裁の通知」を根拠として,実際にそのような実力行使に及ぶ可能性が高い。

武内氏

武内氏は,法律上の原因なく債務者ユニオンから毎月出金している月額5万円の「行動費」に関する追及を受けることを懸念してか,債権者高木ら対立組合員を極度に警戒している。

8月17日も,その時点では,武内氏の見解を前提としても何らの処分を受けていない債権者高木と名倉氏が,組合員として債務者ユニオンを訪問したところ,債権者高木らの顔を見るなり,「不法侵入です。男1人,女1人。」として警察に通報した。

その後,駆けつけた警察官が通報の理由を理解できず困惑する中,武内氏は,債権者高木が各疾病を患っていることを知りながら,「ここはお前の場所じゃねえと言っているんだ。出て行け。」「誰の許可を得てそこに座ってるんだ。」「とにかく出て行け。」などと絶叫し,債権者高木を恫喝し続けた。

以上のような武内氏による暴力行為のため,債権者高木は疾病を悪化させ,睡眠障害を発症するに至り,22日,医師の診断を受けた。

このように,武内氏は,まったく正当な理由がなくても,虚偽通報や恫喝といった実力行使によって,武内氏と意見が対立しているに過ぎない組合員である債権者高木らを債務者ユニオンから追い出そうとしたのである。

それゆえ,武内氏が,本件権利停止処分を新たな口実として,本件大会でも,債権者高木を実力でその会場から排除しようとするであろうことは,当然に懸念される。

結論

以上のことから,債権者は債務者に対して,申立の趣旨通りの決定を求める。

 

疎 明 方 法

追って提出する。

附 属 書 類

  • 資格証明書 1通
  • 申立書副本 1通

裁判の結果

 

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