本案前の答弁書(令和元年(ワ)第17942号損害賠償請求事件,令和元年8月20日)

令和元年(ワ)第17942号損害賠償請求事件
原 告  太 田 曉 彦 ほか1名
被 告  宮 城 史 門 ほか1名

令和元年8月20日

東京地方裁判所民事第42部にG係 御中

被 告  DMU 民主一般労働組合
  上記代表者書記長   前 田 史 門
東京都東村山市久米川町3丁目〇〇―〇
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

本案前の答弁書

第1 本案前の答弁の趣旨

1  原告らの請求をいずれも却下する。
2  訴訟費用は原告らの連帯負担とする。
との御裁判を求める。

第2 本案前の答弁の理由

1 本件訴訟の提起は権利の濫用である

① 原告らは訴外労組において被告らの使用者である

 原告らは,いずれも,訴外労組において,被告らに対し,労組法上の使用者の地位にある。
 原告太田は,「中野千暁」と称しながら訴外労組の役員である書記長を自称し(但し,その地位には争いがある),被告前田をアルバイトとして雇用していた訴外労組において,直属の上司として被告前田を使用していた。
 もっとも,訴外労組は,雇用するアルバイトであった被告前田に対して,残業代等を一切支払っていなかったばかりか,有給休暇も与えず,同一業務に従事する者との間で著しい格差があった。
被告前田は,これらの労働条件の改善を求め,平成31年3月2日,被告前田を代表者として被告組合を結成,9日には団体交渉を申し入れた。

 原告根本は,訴外労組の組合員であるが,被告組合が結成されたのと同時期の平成31年3月頃から訴外労組に入職し,訴外労組の意のままに,盗聴・盗撮を含む手段による被告組合に対する組合潰し(不当労働行為)に従事してきた者である。
 原告根本の訴外労組での地位は被告らに明らかではなく,被告組合の問い合わせに対しても訴外労組はこれを説明しようとしないが,訴外労組において,タイムカードを所持・打刻しているのは,訴外労組の役員など職制者だけであるところ,原告根本のタイムカードが存在する。
これらを考え合わせれば,原告根本が,訴外労組で労務顧問のような立場の職制者として勤務しており,被告らに対して使用者としての責任を負うべき立場にあることは明らかである。  

② 訴外労組と被告らとの労働争議

 ところが,被告組合の結成と団体交渉の申し入れに対し,原告らが役員・職制を務める訴外労組は,暴力的なまでの不当労働行為の数々をもって臨んだ。
 具体的には,訴外労組は,団交申入の4日後である3月13日には「団交応諾義務がない」として団交を拒否し,翌14日には,被告組合を「分派活動」と誹謗しながら,その解散を命令した。
 18日には,被告組合の結成が被告前田による「分派活動」であるという独自の見解に基づいて,被告前田を「権利停止処分」に付したとして以後の就労を拒絶し,解雇予告を支払わず,事実上懲戒解雇した。
 もっとも,上記懲戒解雇を決めた臨時執行委員会の録音テープによれば,上記懲戒解雇の実際上の理由は,被告前田が「アスペルガー症候群」であるという原告太田の“診断”を前提として被告組合の結成を「障害の症状」であると位置づける差別主義,あるいは「(残業代等について)敗訴しても損失は少ない」といった損得勘定(コストパフォーマンス)であることが明らかになっている。
 なお,被告組合の結成から懲戒解雇までの間,訴外労組の代表者を名乗る清水直子こと関口直子氏(その地位には争いがある)は,原告根本に命令して訴外労組の事務所に録音・録画機器を設置させるという手段で被告らを監視していた。
 被告組合は,以上の全部について,不当労働行為の救済を求め,逐次東京都労働委員会への申立に及んでいる。

③ 訴権の濫用に基づく訴えは却下される

 裁判を受ける権利は,憲法が保障する国民の権利であるが,いかなる権利も,これを濫用することは許されない(民法第1条,民訴法第2条)。
 そこで,訴えの提起自体が権利の濫用にあたる場合は,これを不適法なものとして却下する運用が実務上定着している。
 例えば,東京高判平成13年1月31日判決(判タ1080号220頁)によれば,高裁は,

「当該訴えが,もっぱら相手方当事者を被告の立場に置き,審理に対応することを余儀なくさせることにより,訴訟上又は訴訟外において相手方当事者を困惑させることを目的とし,あるいは訴訟が係属,審理されていること自体を社会的に誇示することにより,相手方当事者に対して有形・無形の不利益・負担若しくは打撃を与えることを目的として提起されたものであり,右訴訟を維持することが前記民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き,信義に反すると認められた場合には,当該訴えの提起は,訴権を濫用する不適法なものとして,却下を免れないと解するのが相当である。」

と判示した上で,当該訴えについては,

「本件訴訟を提起することにより,被控訴人を訴訟の場に引き出し,
応訴の負担を与え,あるいは訴訟係属を社会的に誇示することにより,被控訴人の社会的評価の低下を意図したものと認定することができる。」

 として,訴え却下の判断をした原審は相当であるとした。

④ 本件訴訟は訴権の濫用に該当する

 これを本件訴訟について検討するに,訴外労組によれば,原告らは,被告らの使用者である訴外労組の「支援」を受けて訴えを提起している。
他方,原告らが名誉毀損・プライバシー侵害だとして論難している被告組合ブログの投稿記事は,使用者である訴外労組に対する抗議活動,すなわち,団体行動権及び団体交渉権としての表現行為に他ならない。
このように,訴外労組に対して団交権を有する労働組合の情宣活動を問題として,使用者である訴外労組の職制者である原告らを“支援”することで損害賠償請求の訴訟を起こさせること自体,労組法第8条の明文に違反し,支配介入(同第7条3号)にも該当する。
 さらに,訴外労組は,本件訴訟の判決どころか,第1回口頭弁論や被告らの答弁書提出さえ俟つことなく,「DMU民主一般労働組合前田史門氏に対して損害賠償請求の訴訟を提起」なる投稿記事をブログ・メーリングリストで発表し,ツイッター,メールマガジンといった通信手段をもって,数千名の購読者に一斉送信した。
 これらに照らせば,原告らが本件訴訟の提起に及んだのは,使用者である訴外労組の被告組合に対する組合潰しとしての不当労働行為行為にほかならず,その目的も,専らその提起を社会的にアピールし,訴外労組の正当性を喧伝し,被告らの社会的評価を低下させることにあるものとしか考えられない。

⑤ 小括

 以上のことから,本件訴訟は訴権の濫用に該当するので,速やかに却下されるべきである。

2 本件訴状には原告らの住所が記載されていない

① 当事者の住所は訴状の必要的記載事項である

 原告らは,本案の当事者であるところ,訴状には,当事者の住所を記載しなければならない(民訴法第133条2項)。
住所の記載がない訴状は,不適法であるから,速やかに却下されるべきである(同第140条)。

② 訴状には原告らの住所が記載されていない

 ところが,訴状及び添付の当事者目録を見ると,原告らの住所として,「東京都渋谷区代々木4丁目29―4 西新宿ミノシマビル2階」と記載されている。
しかし,かかる住所は,プレカリアートユニオン(訴外労組)の住所でこそあれ,原告らの住所ではない。

③ 被告組合は反訴提起を準備している

 被告組合は,訴外労組において,被告組合に対する盗聴・盗撮に及んだ原告根本ならびに,訴外労組の役員として被告組合との団体交渉を拒否した原告太田に対しての反訴提起を準備している。
よって,原告らに住所を記載させない限り,被告組合は,反訴請求において勝訴判決を得ても債務名義の執行をすることができず,著しい損害を蒙る。

④ 小括

 以上のことから,被告組合は,御庁に対し,補正命令で原告らに住所を記載させることを求め,原告らがこれに従わない場合は,本案前の答弁と同趣旨の御裁判を求める。

以 上

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