平成30年(ネ)3440号原状回復請求控訴事件

〈前略〉Reno,NV

U.S.A.

控訴人

Y社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

原田學植

同訴訟復代理人弁護士

東京都北区〈以下省略〉

被控訴人

X株式会社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

牧野和夫

工藤英知

主文

  1  原判決を取り消す。
2  被控訴人の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,第1審,2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨

 主文同旨

第2  事案の概要

 1

 本件は,被控訴人において,控訴人との間でインターネット上の電子掲示板「◎◎」のサーバー管理業務を月額2万米ドルで委託する旨の業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結し,控訴人に多額の業務委託料を前払したが,控訴人の債務不履行により本件業務委託契約を解除したので,控訴人は,前払金合計112万8000米ドルの返還義務を負うし,仮に,本件業務委託契約が存在していなかったのであれば,控訴人は法律上の原因なく上記金員を利得したので不当利得返還義務を負うと主張して,控訴人に対し,本件業務委託契約の解除に基づく原状回復請求権又は不当利得返還請求権に基づき,112万8000米ドル及びこれらに対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(遅延損害金の起算日は,うち26万米ドルについては訴状送達の日の翌日(平成27年7月7日),うち5万米ドルについては平成28年9月1日付け訴え変更申立書送達の日の翌日(同月6日),うち81万8000米ドルについては平成29年8月31日付け訴え変更申立書送達の日の翌日(同年12月9日)である。)の支払を求める事案である。
原審が被控訴人の請求を全部認容したところ,控訴人は,これを不服として控訴した。

 2  前提事実(争いのない事実のほか,証拠により容易に認定できる事実を含む。)

   (1)  当事者

 控訴人は,平成10年に設立された,主としてサーバーの運営・管理を業務内容とする米国法人である(乙1【枝番を含む。以下同じ。】)。D(以下「D」という。)は,設立時の控訴人代表者であり,長らく代表者の地位にあったが,現在は,退任している(乙11)。
被控訴人は,ソフトウェアの企画,開発の受託等を目的として,平成14年9月に設立された株式会社である。

   (2)  ◎◎

 被控訴人代表者は,平成11年頃,「◎◎」と称するインターネット上の電子掲示板(以下,単に「◎◎」という。)を開設した(甲13,乙11)。
その後,控訴人は,◎◎のサーバーの提供・管理の業務を行った(その他に控訴人が行った業務の有無や,控訴人と被控訴人との間の契約内容については,後記のとおり,争いがある。)。

   (3)  被控訴人から控訴人に対する送金

 被控訴人は,平成14年以降,複数回に分けて,毎年1000万円以上の送金を控訴人に行うようになった(甲12,19)。
平成23年以降は,被控訴人から,控訴人に対し,以下の送金(合計85万米ドル)がなされた(これ以外の送金の有無については,後記のとおり争いがある。)。
ア 平成23年5月9日 10万米ドル(816万8000円)
イ 同年8月2日 12万米ドル(941万6400円)
ウ 同年11月2日 12万米ドル(951万1200円)
エ 平成24年5月11日 12万米ドル(971万2800円)
オ 同年10月30日 6万米ドル(485万2800円)
カ 平成25年7月10日 12万米ドル(1225万6800円)
キ 同年10月15日 12万米ドル(1194万9600円)
ク 平成26年1月8日 4万米ドル(423万1200円)
ケ 同年2月21日 5万米ドル(517万4500円)

   (4)  ◎◎のサーバーへのアクセス不能

 被控訴人ないし被控訴人代表者は,平成26年2月19日以降,◎◎のサーバーにアクセスすることができなくなった。

   (5)  解除の意思表示

 被控訴人は,平成27年7月6日送達の本件訴状をもって,控訴人に対し,控訴人の債務不履行を理由として,本件業務委託契約を解除する旨の意思表示をした。

 3  争点及びこれに対する当事者の主張

   (1)  国際裁判管轄の有無(争点1)

 この点についての当事者の主張は,以下を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第4の1のとおりであるから,これを引用する。

 (被控訴人の主張)

 控訴人は,◎◎という日本国内で閲覧可能な日本語サイトの事業を行う者であり,かつ,被控訴人の本件訴えは,控訴人の日本における業務に関するものであるから,民事訴訟法3条の3第5号によっても,国際裁判管轄が認められる。

 (控訴人の主張)

 本件訴訟提起時点で◎◎を運営していたのは,控訴人ではなくフィリピン法人のa社(以下「a社」という。)であり,そのことは,被控訴人が同社に対して商標権侵害差止等請求訴訟を提起したことによっても裏付けられている。◎◎は,当初は,控訴人と被控訴人の共同事業として管理運営されていたが,控訴人は,平成26年には,◎◎の管理運営業務からは離れることとなった。

   (2)  本件業務委託契約に基づき,被控訴人は,控訴人に対し,業務委託料の前払をしたか(争点2)

 (被控訴人の主張)
   ア 本件業務委託契約の成立

 被控訴人は,平成14年2月,控訴人との間で,被控訴人が月額2万米ドルの業務委託料を支払い(支払方法は,毎月末日までに翌月分を支払う。),控訴人が◎◎のサーバーの管理業務を受託する旨の本件業務委託契約を締結した。
控訴人は,本件業務委託契約の成立を争い,◎◎は,控訴人と被控訴人との共同事業であったなどと主張するが,その具体的な内容を何ら明らかにできていないし,◎◎のサーバーを乗っ取った事実を説明しようとしないなど,控訴人の主張には信用性がなく,そのような控訴人の訴訟態度が本件業務委託契約の存在を裏付けている。

   イ 業務委託料の前払

 平成22年までは,本件業務委託契約の状況に特段の問題はなかったが,控訴人は,平成23年頃から,被控訴人に対し,本件業務委託契約の業務委託料の前払を求めるようになった。そこで,被控訴人は,前提事実(3)記載の合計85万米ドルのほか,以下のとおり,合計101万8000米ドルを控訴人に送金した(以下,前提事実(3)記載の各送金と併せて,「本件各送金」という。)。その頃,サーバー利用料金は,技術の進化によって,平成14年当時よりも大分安価なものになっていたから,◎◎のデータ量が増加したことを考慮しても,業務委託料を月額2万米ドルよりも引き上げる理由は存在しなかったし,被控訴人代表者とDは親族でもなく,1億円を超える金員を無償で贈与するような人的関係にもなかったから,本件各送金が平成23年以降の本件業務委託契約の業務委託料を前払したものであることは明らかである。
(ア) 平成23年2月22日 8万米ドル(657万1000円)
(イ) 同日 16万8000米ドル(1379万9100円)
(ウ) 平成24年2月24日 5万米ドル(400万4020円)
(エ) 同年3月5日 10万米ドル(869万0962円)
(オ) 同年8月6日 38万米ドル(2969万7000円)
(カ) 平成25年3月1日 24万米ドル(2452万円)

   ウ 前払委託料の返還義務

 ◎◎のサーバーの管理をしていた控訴人は,平成26年2月19日,前提事実(4)のとおり,被控訴人が◎◎のサーバーにアクセスできないようにして,◎◎を乗っ取ったため,被控訴人は,本件業務委託契約を解除した。被控訴人は,平成26年2月分から平成30年10月分までの業務委託料合計112万8000米ドルを前払していたから,控訴人は,これら金員の返還義務を負う。

 (控訴人の主張)
   ア 本件業務委託契約の不存在

 平成14年2月時点で,◎◎は,被控訴人代表者と控訴人との共同事業であったから,一方が他方に対して業務を委託するといった関係にはなかった。当時の役割分担は,被控訴人代表者が広告・広報業務を担い,控訴人がサーバー管理やプログラミング等の技術全般業務を担うことになっていた。
平成14年頃,控訴人と被控訴人との間で月額2万米ドルといった約束が取り交わされたものの,その金員の性格は,広告事業収益の分配金であって,そもそも,◎◎のサーバーの維持管理には,月額5万米ドルから7万米ドルを要したのであり,月額2万米ドル程度で賄えるものではなかった。

   イ 被控訴人からの送金増額の趣旨

 本件各送金のうち,前提事実(3)の各送金については,前記アのとおり,共同事業の利益の分配金であるし,その他の送金の事実は不知ないし否認する。
被控訴人からの送金額が増加したのは,◎◎のサーバーの利用量が増加したのに伴い,控訴人の費用負担が増加したことから,分配される利益を増額したことによるものであって,控訴人と被控訴人との間で,前払の合意等は存在しなかった。そもそも,いつの時点から前払が始まったのかという点に関する被控訴人の主張は変遷しており,そのこと自体,前払がなかったことを裏付けている。

   ウ 前払委託料の返還義務の不存在

 以上のとおり,本件業務委託契約が存在しておらず,前払の事実も認められないから,控訴人が金員の返還義務を負うことはない。仮に,何らかの金員の返還義務を負うとしても,その額を争う。

   (3)  本件業務委託契約の成立が認められなかった場合における不当利得の成否(争点3)

 (被控訴人の主張)

 仮に,控訴人と被控訴人の間に,本件業務委託契約が成立していなかったとすると,控訴人は,そもそも法律上の原因なく利得して,そのために被控訴人が損害を被ったことになるから,控訴人は,被控訴人に対し,当該利得を返還する義務を負う。

 (控訴人の主張)

 争う。

第3  当裁判所の判断

 1  認定事実

 前記前提事実のほか,証拠(甲13,乙11,17,証人D,被控訴人代表者のほかは後掲)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

   (1)  

被控訴人代表者は,平成11年頃,◎◎を開設したが,控訴人の役員であったC(以下「C」という。)からの連絡があったのを契機として,控訴人が,◎◎のサーバーを提供することとなった。

   (2)  

控訴人は,◎◎のサーバーの提供・管理といった業務や,ウェブサイトの技術的な改良を行ったほか,平成13年には,◎◎のアダルト版(成人用の卑猥な話題を扱う掲示板)である「△△」といった電子掲示板を開設し,平成14年頃には,◎◎の古いスレッドを閲覧できるなどの利点を有する「〈省略〉」と称するビューアソフト(以下「◎◎ビューア」という。)を開発した(乙18)。
そして,平成14年頃,被控訴人代表者とCないしDとの間で,被控訴人が控訴人に対し,概ね月額2万米ドルを支払うといった合意がされたが,この合意について,覚書や契約書といった書面が作成されることはなく,また,月額2万米ドルという額も,確たる根拠に基づいて決められたものではなかった。

   (3)  

その後,◎◎は,社会的注目を集め,利用者が急激に増加し,それに伴い,◎◎のデータ通信量やサーバー管理の業務も増加していった。
被控訴人は,平均して毎月1000万円程度の◎◎の広告収入を得るようになり,控訴人に対し,上記(2)で合意した金員の送金を行っていたが,送金額は,年によって大きく変動していた(例えば,1年間の具体的な送金額は,平成16年が約3200万円,平成17年が約2250万円,平成18年が約3000万円,平成19年が約4000万円である。)。一方,控訴人は,サーバーの維持管理コストが増加したが,毎月10万米ドル程度に上る◎◎ビューアの売上と被控訴人からの送金により,利益を得ることができていた(甲12)。

   (4)  

Dは,被控訴人代表者に対し,送金額の増額を要求するようになり,被控訴人代表者は,当時,資金的余裕があったことから,Dの要求に応じて,本件各送金(ただし,平成26年2月21日の5万米ドルの送金を除く。)を行った。なお,平成25年8月頃には,◎◎ビューアの個人情報が流出する事故が発生し,それによって,◎◎ビューアのサービスは停止を余儀なくされ,その販売収益を得られなくなった控訴人は,厳しい経営状況に追い込まれた(甲3,4)。

   (5)  

控訴人は,平成26年2月19日,被控訴人が◎◎のサーバーにアクセスできないようにし,同年3月以降,◎◎の広告収入を被控訴人が受領できなくなり,控訴人が同収入を取得するようになった。
◎◎のサーバーにアクセスできなくなった被控訴人代表者は,Dの要求に応じて,同月21日,5万米ドルを控訴人に送金したが,結局,被控訴人が◎◎のサーバーにアクセスできるようにはならなかった。

   (6)  

◎◎のドメインである「○○.net」の登録者は,平成12年時点では,被控訴人側であったが(登録者名は明記されていないものの,被控訴人の現在の本店所在地が登録されている。),平成18年2月6日時点では,控訴人となり,同年4月時点では,別の会社に変更された。その後も,登録者は,様々な会社に移動したが,平成24年5月3日以降,Dが出資を行ったフィリピン国の法人であるa社が「○○.net」の登録者である。なお,同日以降も,「○○.net」の登録サービス提供者としては控訴人が,また,同ドメインの運営面や技術面に関する連絡先としてはDが,それぞれ登録されていた(甲15,乙5ないし7,21)。
被控訴人代表者は,平成28年5月,世界知的所有権機関の調停仲裁センターに対し,自らが「○○.net」の正当な権利者であるとして,a社の登録・使用に対する異議を申し立てたが,棄却された(乙22)。

 2  争点1について

 控訴人は,◎◎という日本国内で閲覧可能な日本語のサイトのサーバーの管理や◎◎ビューアの販売等の業務を行っており,本件訴えは,そのような控訴人の業務に関するものである。また,控訴人は,平成26年2月19日以後は,◎◎の広告収入を得ることもできるようになったことが認められるところ,その後,控訴人と◎◎との関係が変化ないし終了したことを認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,本件訴訟提起時点においても,控訴人は,日本において事業を行う者に当たるというべきであるから,本件訴えは,民事訴訟法3条の3第5号により,日本に国際裁判管轄があると認められる。
控訴人は,本件訴訟提起時点で◎◎を運営していたのはa社であって,平成26年には,控訴人は,◎◎の管理運営業務からは離れた旨主張するところ,確かに,平成24年5月以降,◎◎のドメインの登録者は,a社とされている(前記1(6))。しかし,ドメインの登録者と事業の主体が必ずしも一致するものではないところであるし,a社は,Dの出資した会社であって,その実態が判然としないところがある。また,「○○.net」の登録者は,平成24年5月の時点で既にa社になっているのであるから,平成26年に◎◎の管理運営業務から離れたという控訴人の主張と合致するものではなく,同年に控訴人が◎◎に関する地位を手放すことになる何らかの契機があったことをうかがうことはできないし,控訴人が「○○.net」の登録サービス提供者等とされていることや,証人Dも,平成26年3月以降,控訴人が◎◎の広告収入を得ていたとの趣旨の供述をしていること(証人D・18頁,33頁)に照らしても,控訴人の上記主張は採用できない。

 3  争点2について

   (1)

 被控訴人は,平成14年2月,控訴人との間で本件業務委託契約を締結したことを前提に,平成23年以降,控訴人に対し,業務委託料の前払を続けた旨主張する。
しかし,平成14年2月時点で,被控訴人が未だ設立されていなかった点(前記前提事実(1))はさて措くとして,控訴人は,◎◎のサーバーの提供・管理というにとどまらず,ウェブサイトの技術的な改良,関連する電子掲示板の開設,◎◎ビューアの開発・販売といった業務を行っていたこと(前記1(2)及び(3))からすると,控訴人と被控訴人との間の契約関係が,サーバーの管理業務に関するものだけであったということには,大いに疑問の生じるところである。
仮に,サーバーの管理の対価という点に絞って見るとしても,月額2万米ドルという額で合意したことを裏付ける契約書等の書証が一切ないということは,会社同士の契約としては不自然といわざるを得ないし,被控訴人代表者も「当時の転送量が,ちょうど100メガか180メガで,で,掛ける1万円みたいな,すげえざっくりした計算」と述べるように,明確な根拠を欠いて定められたものであることからすると,この額の合意が,法的に確たるものであったとはいい難い。また,一応の額の合意があった後,数年が経過する中で,◎◎の利用者数やデータ量も大きく変化するなどの事情変更が生じていたのであるから,上記のようにあいまいな形でなされた額の合意について,それを変更するということも十分に考えられるところ,実際,平成16年以降,為替変動では説明のつかない送金額の大きな変化(基本的には増加)が生じていたところである(前記1(3))。
そして,平成23年以降の送金額の増加について,これが前払の趣旨であったというのは,被控訴人代表者が供述するのみであって(前払という以上は期間の特定や会計上の処理等が問題になるはずであるが,これらの点に関するやり取りがされた形跡もない。),他に,これが業務委託料の前払であったことを認めるに足りる証拠もない。かえって,前記のとおり,被控訴人代表者とDが契約書類等を取り交わすこともないまま長期間,多額の送金を行うといった間柄にあったこと,控訴人の◎◎への関与は,単なるサーバーの管理業者というにとどまらないものであったと認められる上,サーバーの管理費用に限ったとしても,月額2万米ドルといった額に確たる根拠はなく,実際に,前払が始まったと被控訴人が主張する時期よりも相当前の時点で,送金額が大きく変動していたこと等を踏まえると,あえて毎月の支払額を固定した上で,何年分も先の前払を行っていたというよりも,送金額が増額されたのは,単純に控訴人が求めた増額に被控訴人が任意に応じていたものと見るのがむしろ自然ということができる。
なお,被控訴人は,控訴人代表者とDは,1億円以上もの額を無償で贈与するほどの人的関係になかった旨を主張するが,上記のように解した場合には無償の贈与に当たるものではあり得ないから,被控訴人の主張は,そもそもその前提を欠くものであるし,会社間で書面での合意や確認を何らすることなく,数年先にわたって多額の代金の前払をするということも同じく通常では考え難いところであるといえる。また,被控訴人代表者は,当時,金銭に余裕があったと供述しているのであるし(被控訴人代表者25頁),業務上の送金額の増額であって,かつ,1回に億単位の送金をしている訳ではないのであるから,Dの増額要請に応じる抵抗感も比較的小さかったと考えられるところである。したがって,被控訴人の上記主張は採用できない。

   (2)

 被控訴人は,控訴人が◎◎は控訴人と被控訴人の共同事業であったなどと主張するが,その内容が不合理であるし,◎◎の乗っ取りについても説明しようとしないなど,控訴人の主張や証人Dの供述は信用できず,そのことによって,被控訴人の主張が裏付けられる旨主張する。
しかし,◎◎を巡って,控訴人が◎◎ビューアの販売収益,被控訴人が広告収入といった利益をそれぞれ得ていたという意味では,表現の適否はともかくとして,これを控訴人が「共同事業」と称するのも理解し得ない訳ではないし,毎月支払われていた2万米ドルの趣旨についても,被控訴人がサーバーの管理等に要する技術的コストそれ自体を支払っていると見るのか,それとも技術的なコストを負担していた控訴人が利益を確保できるようにするための分配調整金と見るのかは,見解の相違にすぎない面もあり(証人Dは,◎◎のサーバーの維持管理コストに2万米ドル以上かかっていた旨を供述するところ,これを前提とすれば後者と理解するのが自然ということができる。),これらの点に関して,証人Dが意図的に虚偽の内容を供述していたものとは断じ難い。他方,確かに,証人Dの供述は,控訴人とa社の関係や,被控訴人による◎◎のサーバーへのアクセスをできなくした経緯等に関して,不自然不合理な内容も含んでおり,その一般的な信用性が高いとはいえないが,仮に,証人Dの供述に意図的な虚偽内容が含まれているとしても,それは主として,被控訴人を◎◎のサーバーにアクセスできないようにして,◎◎の広告収入を獲得したことを取り繕う目的であると推測されるところであり,前記(1)で認定判示した内容が左右されるといったものではないし,◎◎の「乗っ取り」行為以前に被控訴人が控訴人に送金した金員の性格について,それが業務委託料の前払であったということが推認できるというものでもない。

   (3)

 以上によれば,原状回復請求に基づく被控訴人の請求は,理由がない。

 4  争点3について

 前記3において説示したとおり,被控訴人は,◎◎について行われた業務に関連して,控訴人に対して金員を送金していたものであって,控訴人からの増額の求めに対して,それが本意であったかどうかはともかく,任意に増額した金員を送金していたものであるから,不当利得は成立しない。

 5  

以上によれば,被控訴人の請求は全部棄却すべきところ,これと異なる原判決は失当であり,本件控訴は理由があるから原判決を取り消し,請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

 東京高等裁判所第4民事部
(裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 今岡健 裁判官 橋爪信)