原告ら準備書面(3)(令和2年3月23日,令和元年(ワ)第17942号損害賠償請求事件)

原  告  X外1名
被  告  Y外1名

準備書面3

2020(令和2)年3月23日

東京地方裁判所民事第42部にG係御中

原告ら代理人弁護士 嶋崎 量
同   竹村
同   中村

第1 被告DMU準備書面(1)に対する認否

1 「第1 本件の経緯」

(1)「1 はじめに」(1頁)

第一文は否認する。本訴訟は、原告X2及び根本個人が原告となるものであって、被告DMUに対する不当労働行為に該当する余地はない。

第二文は、訴外労組が乙B2号証の内容を公表したことは認める。第三文は、否認又は争う。

本件は、被告らが、原告ら個人に対し、訴状記載の人格権侵害を行ったことを問題とするものであって、訴外労組による損害賠償請求ではないことは明らかである。第四文は否認又は争う。

訴状記載のとおり、本件ブログ記事は、原告らの人格権を侵害するものであって、その違法性も阻却されるものではない。

(2)「2 原告ら並びに訴外労組と被告組合との労使関係」(2頁)

第一文及び第三文は認否の限りでない。第二文は争う。

(3)「3 訴外労組の労働環境と被告組合」(2頁)

本件と関連しない事実主張であって、認否の限りでない。繰り返しになるが、本件は、被告らによる原告ら個人に対する人格権侵害が問題となっているところ、「訴外労組の労働環境」などは関係しない。それらの事情によって、当該人格権侵害が正当化されることもない。

(4)「4 訴外労組への団体交渉申入と原告らによる攻撃」(3頁)

上記(3)と同様、本件と関連しない事実主張であるため、認否の限りでない。

(3)「5 原告Xの介入と被告組合監視目的での盗聴行為」(4頁)

上記(3)と同様、本件と関連しない事実主張である。

もっとも、原告Xの「盗聴行為」については、被告らによる人格権侵害についての違法性阻却に関連するため(いわゆる「真実性」の要件)、以下のとおり認否する。

第一文及び第七文、第八文は否認する。原告Xは、訴外労組の組合員ではあるが「入職」した事実はないし、原告Xが被告Yの活動を盗聴したことなどない。

(6)「6 3.18権利停止処分と原告太田の関与」(4頁)

上記(3)と同様、本件と関連しない事実主張であるため、認否の限りでない。

(2)「7 原告Xによる盗聴・盗撮行為」(5頁)

第一文について認める。第二文は否認する。「平常の業務」なるものは不明であるが、被告Yは、訴外労組の許可等を受けないまま、訴外労組の資料等をコピーするなどしていた。第三文は認める。被告Yが、異様な雰囲気で資料をコピー等したりしていたため、原告Xにおいて連絡したものである。

第四文及び第五文は否認する。原告Xはそのような行動をとっていない。第六文は不知。第七文のうち、被告Yが原告Xを問い詰めたことは認め、その余は否認する。

第八文は否認する。後述するが、2019年3月18日の正確な出来事は、甲第12号証(原告X陳述書)3頁記載のとおりである。原告Xは、訴外労組の許可無く資料を印刷していた被告Yを注意したところ、被告Yは激高し、その注意を聞かなかった。

原告Xは、訴外労組の委員長に被告Yの常況を録音録音するようにと伝えられたため、被告Yにも分かるようにICレコーダ一を取り出したが、被告Yは「何してるんですか!」「人権侵害」などと激高し、結局、録音はできなかった。

なお、原告Xは、被告Yに対し、録音していないことを説明し、被告Yも納得している。

(3)「8 被告組合による抗議活動の展開」(6頁)

上記(3)と同様、本件と関連しない事実主張であるため、認否の限りでない。

2 「第2原告太田に関する投稿記事が違法性を有しないこと」

(1)「1 本件ブログの原告太田の氏名の記載が『アウティング』に該当しないこと」(7頁)

第一文は認める。

ただし、原告X2は、単に原告X2の実名を公開することのみによって「アウティング」にあたると主張しているものではない。原告X2は「太田曉彦」という実名に関係する範囲において、自身がセクシュアル・マイノリティであること、「中野千曉」という通称を用いていること、訴外労組で諸活動をしていることを公表していなかった。

また、原告X2は、自身のセクシュアル・マイノリティとしての活動範囲においては、自身の実名(太田曉彦)を公表していなかった。にもかかわらず、被告らによる訴状別紙記事番号11によって、原告X2の実名が「太田曉彦」であること、原告X2(太田曉彦)がセクシュアル・マイノリティであることをインターネットという誰でも閲覧できる媒体で公表したのである。

第二文ないし第四文は否認又は争う。被告ら主張は、結論を述べるだけであって、その結論を導く理由を一’切不していない。

(2)「2 原告太田が『セクシュアル・マイノリティ』であるという記載が『アウティング』に該当しないこと」(7頁)

第一文は認める。第二文は認める。

記事番号11(甲6の11)には、訴外労組の警告書(甲4)を写真で掲載しているところ、その警告書には「自身がセクシュアルマイノリテイであることを明かして、セクシュアルマイノリテイ労働相談などに対応している書記長の中野千曉さんの氏名を無断で漏洩させています」と記載されている。

また、記事番号11・2頁では、訴外労組等の指摘を要約して、「(太田曉彦さんは)セクシュアルマイノリティである」「実名は、セクシュアルマイノリティを開示していない領域でも使用せざるを得ない」「職場や親族にセクシュアルマイノリテイであることを知られてしまう」などと記述している。

第三文は否認する。

上記記事番号11の記載は、①「太田曉彦」が、「セクシュアル・マイノリティ」であり「中野千曉」という通称を用いていること、②「セクシュアル・マイノリティ」である「中野千曉」の実名が「太田曉彦」であることを公開していることは明らかである。

第四文及び第五文は争う。

(3)「3 原告太田が『セクシュアル・マイノリティ』であるという記載が、訴外労組の主張を引用したものにすぎないこと」(8頁)

第一文は認める。その正確な記載は、上記(2)で引用したとおりである。

第二文は、否認する。

上記記事番号11の記載からすれば、被告らは、ことさらに原告X2がセクシュアル・マイノリテイであることを強調していることが分かる。

第三文は、否認する。原告X2がセクシュアル・マイノリティであり、そのためセクシュアル・マイノリテイとしての諸活動を行うにあたっては通称を使用していたことは被告Yも十分認識していたところである。

第四文は、記事番号11の引用部分については認め、その余は否認する。

記事番号11は、訴外労組の警告書を掲載しつつ、①「太田曉彦」が、「セクシュアル・マイノリテイ」であり「中野千曉」という通称を用いていること、②「セクシュアル・マイノリテイ」である「中野千曉」の実名が「太田曉彦」であることを公開している。

なお、訴外労組に抗議するにあたって、これらを公開する必要性も相当性も皆無である(被告らと訴外労組との紛争に閨して、上記①及び②は全く関連性のない事柄である)。

第五文は、記事番号11の引用部分については認め、その余は否認する。

記事番号11を読めば明らかなとおり、被告らは、それ自体未公開の警告書(申4)を公開するだけでなく、あえて訴外労組の指摘を要約して、「(太田曉彦さんは)セクシュアルマイノリテイである」「実名は、セクシュアルマイノリティを開示していない領域でも使用せざるを得ない」「職場や親族にセクシュアルマイノリテイであることを知られてしまう」などと記述している。

被告らは、訴外労組が警告した点をあえて公開することで、殊更に①「太田曉彦」が、「セクシュアル・マイノリティ」であり「中野千曉」という通称を用いていること、②「セクシュアル・マイノリテイ」である「中野千曉」の実名が「太田曉彦」であることを公開したのである。

第六文及び第七文のうち乙B20の記載は認め、その余は本件と関係しない一般論であり認否を要しない。

本件は、被告らが、原告X2個人のブライパシー等の人格権を侵害したという事案であって、労働組合が使用者の対応をブログ等で批判するという問題ではない。第八文は争う。

(4)「4 原告太田が男子トイレを使用している事実の記載がブライパシーの侵害にあたらないこと」(10頁)

第一文は認める。第二文は否認する。

そもそも、原告X2が「男子トイレ」を利用しているという事実をもって、原告X2が「セクシュアル・マイノリテイ」であることを否定することにはならず(原告X2は身体的性別が男性であるため、やむを得ず男子トイレを利用している)、何ら「必要不可欠」な記載ではない。

むしろ、性別に違和を覚えながら生活せざるを得ない当事者にとって、トイレの利用をどのようにしているかという点は極めて秘匿性の高い情報であるところ、被告らはあえてそれを掲示したのである。そもそも、性的指向の問題とトイレの利用等は関係ない。

第三文は否認する。原告X2は、「中野千曉」という通称においては、セクシュアル・マイノリティとして社会生活を送っている。訴外労組においても、「中野千曉」としてセクシュアル・マイノリテイであることを明らかにしたうえで活動している。

例えば、セクシュアル・マイノリテイの労働者からの相談対応にいて、自身がセクシュアル・マイノリティであることを明らかにし、セクシュアル・マイノリテイへの配慮が議題となる団体交渉等においても自身(中野千曉)がセクシュアル・マイノリテイであることを明らかにして意見を述べるなどしている。

これらのことは、訴外労組において共に活動に従事していた被告Yにおいても十分に認識していたことである。第四文及び第五文は否認又は争う。

上述したとおり、債権者中野がセクシュアル・マイノリティであることは、原告X2が「中野千曉」という通称で社会生活を送る範囲においては共有されていた事実関係である。

被告らによる原告X2の実名公表は、訴外労組をはじめとする当該範囲に対し、セクシュアル・マイノリティである「中野千嘵」の実名が「太田曉彦」であることをアウテイングしたのである。

第六文は争う。被告らによるブライパシー侵害(アウティング行為)は、被告らと訴外労組との紛争の存在によって正当化されるものではない(アウティングの必要性と相当性は一切認められない)。

第3 「原告太田の顔写真の掲載が違法性を有しないこと」(11頁)

(1)「1 原告太田の顔写真掲載が原告太田の肖像権を侵害しないこと」(11頁)

第一文は認める。第二文及び第三文は否認又は争う。

モザイクで目隠し加工されているものの、そのモザイク加工は薄く、目の部分も認識可能なものとなっているところ、容易に原告X2を特定できるものである(甲14〔甲6の11をカラーコピーで再提出する〕)。

また、原告X2の通称と実名も公開されていることも考えれば、その顔写真とあわせて原告X2を特定するのは容易である。

第四文のうち原告X2が訴外労組の書記長であったことは認め、その余は否認する。第五文は否認する。

(2)「2 原告太田の顔写真掲載が原告太田の肖像権を侵害しないこと」(12頁)

第一文は認める。第二文は認める。

原告らは、被告らによる投稿が「犯罪報道」と主張するものではなく、まるで犯罪者であるかのような悪印象を持たせる加工と主張している。

第三文は争う。第四文は本件訴訟と関係なく認否の限りではない。

いずれにしても、原告X2は、被告Yの使用者ではないことは明らかであり、比較対象として間違った主張である。

第五文は否認する。第六文は否認する。

第七文は争う。

第2 被告DMU準備書面(3)に対する反論

1 被告準備書面(3)について

被告DMUは、準備書面(3)において訴状に対して認否反論している。

そこには、訴外労組に関する指摘も縷々されているが、本訴訟は原告ら個人への人格権侵害が問題となっているのであって、それら指摘は何ら関係しない。以下では必要な範囲で、被告DMUの同書面における主張に反論する。

なお、上記第1において認否反論したものと重複する点については、割愛する。

2 原告X2の通称使用について(3頁)

被告DMUは、「原告太田が中野某を名乗っていたのは、訴外労組の活動においてのみである。…それは、セクシュアル・マイノリティとは無関係の慣習である」などと主張する(3頁)。また、「原告太田は、被告らが知る限り、『セクシュアル・マイノリティとしての諸活動』に該当する活動を、何もしていない」とも主張する。

しかし、上記被告DMUのいずれの主張も事実ではない。

原告X2は、訴外労組においてセクシュアル・マイノリティであることを明らかにしながら活動している。特に、訴外労組におけるセクシュアル・マイノリティの労働相談においては、自身がセクシュアル・マイノリティの当事者であることを明示したうえで相談を聞くなどしている。

また、原告X2は、2002(平成14)年頃より、京都にあったLGBTに関するサークルおいても活動していた。原告X2は、訴外労組及びセクシュアル・マイノリティの諸活動においては、通称である「中野千曉」を用い、その実名(太田曉彦)を秘匿していた。

原告X2は、それら訴外労組とセクシュアル・マイノリティの諸活動以外の社会生活(例えば職業生活)においては、「太田曉彦」の実名を用いて生活し、自身がセクシュアル・マイノリテイであることや通称を秘匿している。

3 本件ブログの運営について(4頁)

被告DMUは、被告DMUが本件ブロダを運営していることは認めるものの、本件ブログの投稿記事は被告DMUの総意によるものであって被告Yによるものではないと主張する(4頁)。

しかし、本件ブロダは、本件ブログの管理者である被告Yにおいて執筆掲載されているものである。ブログ記事それぞれについて被告DMUの議論確認等などされていない(被告らからその具体的内容も示されていない)。

4 原告X2及び原告Xの立場について(10頁)

被告DMUは、原告X2は訴外労組のナンパーツ一であり(7頁)、原告Xについて「使用者の近接する地位にある」として(10頁)、それぞれ—般組合員ではないと主張する。

しかし、原告X2が一般私人であること、訴外労組の代表者でもないことは動かしがたい事実である。その原告X2に対し、訴状記載のような違法行為(アウティング等)が許容される余地はない。

また、被告DMUは、原告Xが、訴外労組から「組合潰しのために雇い入れられた職制者」であること、「盗聴・盗撮行為」を行うことなどを根拠に上記のような主張をするが、もはや妄想の類いという他ない。

5 原告Xの「録音機器の設置」について(10頁)

被告DMUは、原告Xが、「訴外労組の事務所に録音機器を設置し、組合経営者である関ロに引き渡していた」などと何の根拠もなく主張する。

何の根拠も示されないこのような主張に対して反論は要しないが、念のため、原告Xは、そのような盗聴行為はおろか、無断で労働相談や会話を録音したこともないことを強調しておく。

6 原告Xの「盗聴」行為について(13頁)

被告DMUは、原告Xが2019(平成31)年3月18日に訴外労組において盗聴・盗撮行為を繰り返していることを自白したなどとし、被告Yも盗聴されたなどと主張する(13頁)。

しかし、そのような事実はない。3月18日のやり取りは甲6号証の10・2〜3頁に引用されているとおりであるが、この具体的経緯は以下のとおりである(上記引用は下記のやり取りの一部分である)。

同日午前10時頃、被告Yは、訴外労組の事務所にて、複合機を用いながら何か作業していた。被告Yは、何か急いでいるようでもあり、異様な雰囲気で作業していた。いつもなら被告Yがいない時間帯であることもあり、原告Xは不審に思った。

しかし、事務所には被告Yの他には原告Xしかおらず、原告Xは、訴外労組の執行委員長である清水直子氏に連絡し、被告Yが事務所の複合機を用いて何か作業をしていると伝えた。

すると、清水氏は、原告Xに対し、「前田さんに止めるように伝えてください」と依頼した。そこで、原告Xは、被告Yに対し、「許可をもらっているのですか」「今、スキャンしているものが組合に関係のない私用で使うものならやってはいけないと思います」と穏当に注意した。

すると、被告Yは、「許可なんてもらう必要はない」「あなたには関係ない!」などと激高し、注意を聞きいれなかった。

原告Xが清水氏に連絡したところ、清水氏からは「録音・録画しておいてください」と伝えられた。原告Xは、事務所にあるICレコ一ダ一の使い方が正確には分からなかったが、そのICレコ一ダ一を用いて録音しようと思い、被告Yにも分かるとおり、1Cレコーダ一を持ち出し録音しようとした。

被告Yは、さらに激高し、「何してるんですか!」と詰め寄った。原告Xは、正確に伝えようと思い、「記録しています」と伝えた。

被告Yからは、「清水さんから?」と訪ねられたので、その点も「はい」と答えた。しかし、被告Yは「人権侵害」などと激高したため、原告Xは動揺してしまい録音をすることができなかった。

被告Yは、原告Xに対し「録音した」などと激高し、「その録音したものがユニオン側から証拠として提出される」、「そうなったら、私はあなたを相手にする」などと責め立てた。

原告根未は、録音していなかったため、「録音などしていません」と何度も説明し、納得させるために原告XのスマートフォンやICレコーダーを見せて確認させるなどした。

結果、被告Yは、「分かりました。やっていないんですね」と納得していたのである。

以上のとおりであり、原告Xは、盗聴盗撮を行っていることを認めたことはないし、実際に被告Yとのやり取りも録音等していない。

7 原告Xの肖像権侵害について(15頁)

被告DMUは、記事番号5ー①の原告Xの顔写真は、既にインターネット上に公開されていたものであると主張したり、その他の記事の顔写真も含めて目の部分にモザイク処理を施しているため肖像権侵害にあたらないと主張する(15〜17頁)。

しかし、既にインターネット上に公開されているものは原告Xが同意したものである。他方で、原告Xはその顔写真を被告らに引用されることも、加工されることも同意していない。被告DMUの主張は、肖像権侵害の有無に影響を与えるものではない。

また、被告らによる原告Xの顔写真の加工は、人物の識別機能を防ぐものとなっていない。それら顔写真は原告Xの実名とともに公開され、しかも目の部分だけが細いモザイク加工がされたのみであって、人物の特定機能は十分に果たされている。

被告らにおいて、本当に原告Xの肖像権に配慮するのであれば、顔全体にモザイク加工すれば足りるにもかかわらず(その方が容易である)、被告らはあえて人物識別を可能としたまま原告Xの顔写真を掲載したのである。

8 原告X2の損害について(20頁)

被告DMUは、本件ブログを探知して当該記事を閲覧するのは、本件紛争の閨係者だけであり、原告X2には損害が発生したにすぎないなどと主張する(20頁)。

しかし、当該主張は失当である。まず、インターネット検索サイト「Google」において「中野千曉」と検索すると、訴状別紙の記事などが検出される(甲15の1)。また、「太田曉彦」と検索すると、同じく当該記事などが検出される(甲15の2)。

同記事には、原告X2がセクシュアル・マイノリティであると述べていることや、その実名が「太田曉彦」であることなどが明らかにされているのであって、本件紛争関係者以外の者が原告X2の通称や実名を検索すれば当該記事を閲覧することになる。

原告X2が就職活動等をした場合、使用者側が原告X2の通称や実名を検索することは十分にあり得ることである。実際、原告X2は、セクシュアル・マイノリティ関連の複数の知人から、本件記事に関することを指摘され、その実名を知られるなどの被害が生じている。

そもそも、本件ブログを実際にどのような者が閲覧したか否かは大きな問題ではない。「閲覧される状況」にあることが、原告X2にとって大きな精神的苦痛であることは言うまでも無い。

第3 被告らの行為は組合活動として正当化されないこと

1 労使関係の問題ではなく、少なくとも組合活動として保護が弱いこと

原告らは、被告労働組合と労使関係にあると主張する訴外労働組合の組合員ではあるものの、被告労働組合の使用者または使用者の意思決定に重大な影響を与えることができる、経営者的地位でもない。したがって、憲法及び労働組合法等の民事免責として射程外とまでは言えずとも、少なくともその及ぶ保護の程度は極めて弱い。

この点、原告らは、それぞれ訴外労働組合の運営を決定する権限もなく、代表者(経営者)ですらない。つまり、訴外労働組合の運営は、「大会が組合の最高議決機関」(甲16・規約12条1項本文)である。被告らと訴外労働組合との係争については、最高議決機関である「大会」で決定すべきことがらである。

さらに、訴外組合において、執行委員会が「大会の決定にもとづく組合業務についての日常の決定、執行にあたる」(甲16・規約13条1項)のであって、原告X2はその13名のうち1人であるに過ぎない(当時)。さらに、原告Xにいたっては何ら役職につかない一組合員に過ぎない。

また、原告X2は、訴外労働組合の書記長であったが、訴外労働組合における書記長職は「執行委員長、副執行委員長を補佐するとともに、組合の日常的な業務を執行し、文書及び記録の整理・保管にあたり、書記局会議を招集し主催する」(甲16・規約18条)に過ぎず、規約上も訴外組合の「日常的な業務を執行」する権限しかないのであるから、原告らと訴外労働組合の係争について判断をするような訴外労働組合の運営について重要な意思決定や業務を単独で遂行する地位にはない。

なお、訴外労働組合において、規約上、労使関係上想定される「経営者」に相当する代表権を有するのは、執行委員長(「組合を代表し、業務を統括する」)である。仮に書記長に事故などがあった場合にも職務を代行するのは「副執行委員長」である(甲16・規約18条)。したがって、書記長に過ぎない原告X2には仮に執行委員長に事故があってもなお、組合を代表する権限はない。

以上より、原告らは被告労働組合の使用者または使用者の意思決定に重大な影響を与えることができる経営者的地位にもないので、原告らに対する名誉毀損などの本件ブログなどの表現行為は、労働組合の活動として保護が及んだとしてもその程度は弱く、正当化され民事免責され得ない。

2 仮に労働組合の活動であるとしても被告らの行為は正当化されない

労働組合の表現行為であっても無制約では無く、人格権・名誉権など他の人権との調整による制約があるのは当然であり、その観点から被告らの本件表現行為はいずれも正当化され得ない。

具体的には、組合の情宣行為の限界として、「前提として摘示した事実がおおむね真実であるか真実と信じるに相当な理由があり、会社の名誉・信用等を不相当に侵害したり、役員・管理職者などの不相当な個人攻撃や誹謗中傷、私事曝露などに及んだりしない内容」である限り正当性が認められるに過ぎない(菅野和夫「労働法第12版」【弘文堂】983頁)。

また、労働組合の表現行為も、あくまで組合活動として保護が及ぶものであって、労働問題の論評のうえで必要性や関連性が求められ、労働組合活動としての公道でのビラ配布が「当該労働問題の論評のうえで必要性や関連性のない営業機密公表に及んだとして正当性なし」とされた裁判例もある(上記の菅野983〜984頁でも紹介されている、コニ力事件・東京高判平成14年5月9日労判834号72頁)。

被告らの本件表現内容は、労使関係の当事者である「使用者」ではなく、その一構成員に過ぎない原告らの人格権・名誉権侵害などの表現であって、何ら労使紛争とは関係がない「不相当な個人攻撃や誹謗中傷、私事曝露」そのものである。

また、かかる表現行為の対象も、被告らが主張する労使紛争に少なくとも主要な関与も無い原告らに対するものであって、訴外労働組合代表者への表現行為である場合とは、労働組合活動として及ぶ保障は次元を異にする。さらに、かかる表現行為は、被告らとその使用者である訴外労働組合との係争の解決に向けて、何ら必要性も関連性がなく解決には結びつかないものである。

また、いずれも原告らの名誉・人格権を侵してまで、労使関係に無関係な世間に広く拡散させるべき社会的な価値はなく世間に拡げる意味ないのであり、労働組合として表現行為を行うべき必要性はない。

本件原告らの名誉・ブライパシーなどの内容は、いずれも労使関係に無関係な世間に広く拡散させる社会的な価値は見出せない。さらに、被告らによる加害行為の態様も重要である。

本件加害行為は、(公道などで労使関係に接点のある人物に情報の受領者を限定せず)敢えてインターネットを用いて広く社会全体に向けられた、労働問題とは無閨係な内容の人権侵害を伴う表現行為である。公道でのビラ配布などと比較したとき、インターネット上の公開により原告らの名誉・ブライパシーなどが侵害される影響は計り知れないほど大きい。

以上より、本件表現行為は、いずれも原告らの人格権・名誉権侵害などの表現であって、何ら労使紛争とは関係がない「不相当な個人攻撃や誹謗中傷、私事曝露」そのものであるから、被告らの本件表現行為はいずれも正当化され得ない。

3 小括

以上により、被告らの行為はいずれにせよ労働組合の活動として正当化されることはない。

第4 仮処分決定後も続く人格権侵害(本件加害行為の悪質性)

準備書面1で主張したとおり、訴状記載の記事については、その一部は被告らが違法性を自認することによって任意削除され、その他についても違法性等が疎明されたことによって、2019年7月10日及び同12日には原告らの記事削除の申立を認める仮処分決定が発出されている(甲10の1及び2)。

被告らは同仮処分決定に従い、記事を削除した。しかし、被告らは、本訴訟提起後においても、同趣旨のf己載を内容とするTweetを繰り返している(別紙)。すなわち、上記仮処分決定がだされた2019年7月10日及び同12日以降も、同年7月16日、同8月14日、同8月22日等、繰り返し、セクシュアル.マイノリテイである原告X2の実名をTweetで公開し(甲17の1〜7)、原告Xが盗聴しているような表現(魔のカメラを操る根本美樹氏)のTweet、「仲間をカネに換えた」と誹謗するTweetを公開しているのである(甲17の1、8)。

これらは被告らが、仮処分決定という公的判断をも事実上無視し、原告らに対する人格権侵害を断続的に継続して常態化しているものであって、被告らによる本件加害行為の悪質性を基礎づけるものである。

以上

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