被告ら準備書面(4)/証拠説明書(令和2年5月10日,令和元年(ワ)第17942号損害賠償請求事件)

令和元年(ワ)第17942号損害賠償請求事件
原  告    X1 外1名
被  告    Y1 外1名

令和2年5月10日

東京地方裁判所民事第42部にG係 御中

被   告           Y1
被   告           Y2
代 表 者           Y1
TEL   03―4221―0094
FAX   0433―303―404

準 備 書 面 (4)

被告らは,本書面で,原告ら準備書面3に対する反論(再反論)をする。括弧内の頁数は,同準備書面における対応部分を示すものである。

第1  「被告DMU準備書面(1)に対する認否」(1頁)

1  「本件の経緯」(1頁)

⑴については,否認ないし争う。

原告らが,被告Y2の求釈明(令和元年8月24日)の第2(訴外ユニオンから受領した「支援」の具体的内容)に回答できないのは,原告らが訴外ユニオンから受けた「支援」が,訴外ユニオンの被告Y2に対する不当労働行為として訴訟提起自体が権利の濫用になる内容だと自認するからである。

原告らは,本件訴訟の提起が不当労働行為に該当する余地がないというのであれば,速やかに,訴外ユニオンから受けた「支援」の内容を回答するべきである。

⑶ないし⑸については,否認ないし争う。

被告Y2の活動は,それが正当な限界を超えない限りにおいて労働組合の活動として保護を受け,「債務不履行による解雇,損害賠償等の問題を生ずる余地がなく,また,違法性を欠くものとして,不法行為責任を生ずることもない」(最大判昭和41年10月26日)から,被告Y2の正当な活動の限界を論じるにあたって,原告らが職制者として勤務し,直接に被告らに対する一連の不当労働行為に関わっていた訴外ユニオンと被告らとの間での,本件各投稿記事の公表時点までの労働争議の経緯は,本件と密接に関係する事実主張である。

⑸について,原告X2は,訴外ユニオンに入職している。

令和2年3月26日,訴外ユニオンは,東京都労働委員会に提出した準備書面において,訴外ユニオンが原告X2に対して,①「行動費」と称して1時間当たり1200円を支払っていたこと,②タイムカードを打刻させていたこと並びに,③訴外ユニオンの役職員でタイムカードを所持・打刻していたのは,原告X2以外には,いずれも訴外ユニオンの役員である原告X1と清水直子こと関口直子氏,佐藤智秋氏の3名だけであったことを,いずれも認めた(乙B29,4頁目の4(8))。

上記によれば,原告X2が訴外ユニオンの役員に次ぐ待遇の職制者として雇用あるいは委嘱され,あたかも被告Y2の結成と時を同じくして訴外ユニオンに入職していたという事実関係は明白である。

追って同⑺との関係で詳細に述べるが,原告X2は,その入職から一貫して被告らの活動を盗聴・盗撮し続けており,原告X2は,被告Y1に対して,それを自白している(乙B16)。原告X2の累次にわたる虚偽主張は,原告X2の主張全体の信用性を低下させている。

⑹は争う。訴外ユニオンと被告らとの労働争議の経緯は,本件と密接に関連する事実主張である。

⑺は否認ないし争う。

被告Y1は,訴外ユニオンのアルバイトとしての日常業務に従事しつつ,被告Y1の所有に属する文書(例えば,被告Y1が訴外ユニオンに置いていた,被告Y1の訴外株式会社Cにおける給与明細書)を探し,原本を回収する一方で,訴外ユニオンのために,回収した資料のコピーを取っていただけであるが,原告X2は,そのような被告Y1の何をもって「異様」というのであろうか。被告Y1がコピーしている資料自体か,少なくとも訴外ユニオンに残したコピーを見れば,原告X2においても,被告Y1が何らの不正行為をしていなかったことが一見して理解できたはずである。

つまるところ,①原告X2が,訴外ユニオンから「行動費」と称する金銭を得ることを目的として活動していたところ,②勤務中の被告Y1の様子を清水某こと関口直子氏に仔細に通報し(これ自体,被告Y2に対する違法な監視活動である),③関口氏は,何ら根拠なく,被告Y1が不正行為をしていると決めつけ,原告X2に違法な盗聴,盗撮行為を指示し,④原告X2が,自らの良心に照らして行為の適否を判断することなく,あたかもナチスドイツのアイヒマンのように盗聴・盗撮行為に及んだというのが本件の真相である。

付言するが,原告X2又は訴外ユニオンは,資料をコピーしている被告Y1の様子を録音する必要も,録画する必要もなかった。

被告Y1は,訴外ユニオンの業務用複合機を使用してコピーの作業にあたっていたので,訴外ユニオンにおいて,被告Y1が,その権限に属さない物をコピーして持ち去ったと考えるのであれば,被告Y1が立ち去った後,いつでも,コピーされた資料のログあるいはイメージを複合機上で確認できたからである。

しかも,本件においては,被告Y1がその所有に係る文書の原本を持ち帰る一方,被告Y2にコピーを置いて行ったのであるから,被告Y2としては,複合機のカウント数と被告Y1が残した資料の実枚数を比較し,それが概ね一致することを確認すれば,それだけで,容易に,被告Y1に何らの不正もないことを確認できたはずである。

ところが,原告X2は,以上のように,全く必要性,相当性がないにもかかわらず,ひそかにICレコーダーとスマートフォンを取り出し,被告Y1を盗聴,盗撮したのである。

原告X2は,本件盗聴行為をしていなかったと主張するようであるが,被告Y1が,盗聴行為を開始した原告X2に対して,「どうして,事業所の中で録音機を作動させているんですか。」と尋ねたところ,「私それは前から言われまして,言われているんで。」と回答し,録音機を作動させたこと自体は認めている。しかも,原告X2は,清水某こと関口直子氏の指示を受けて,「前から」,そのような盗聴行為を続けていたことも認めている(乙B16の2)。

さらに,原告X2は,被告Y1に分かるように公然とICレコーダーを取り出したとか,被告Y1が原告X2の盗聴行為がないとして納得していたとか縷々主張するが,その根拠を一切示していない。

むしろ,乙B16に示された原被告間の会話の態様とその内容,とりわけ,被告Y1に盗聴が露見し,「何をしているんですか。」と注意された際の原告X2の反応からして,原告X2が公然と盗聴を開始した事実も,被告Y1が原告X2の盗聴行為について同意又は納得した事実もないことは自明である。

⑻は争う。その理由は,既に同⑶ないし⑸について述べた通りである。

2  「原告X1に関する投稿記事が違法性を有しないこと」(3頁)

⑴は,被告Y2が記事番号11を公表したことは認めるが,その余は否認ないし不知。原告X1は,結論を述べるだけであって,その結論を導く理由を一切示していない。

特に,原告X1が,「セクシュアル・マイノリティとしての活動」を一切していないことは,ここで強調しておく。被告Y1は,訴外ユニオンのアルバイト職員として原告X1と共に勤務していた頃,原告X1から「セクシュアル・マイノリティとしての諸活動」の話を聞いたことは一度もない。本件訴訟においても,被告らが再三促しているにもかかわらず,原告X1が,いつ,誰と,どのような活動をしていたのかを示していない。

原告X1が「セクシュアル・マイノリティとしての諸活動」の内容を一切提示できないのは,原告X1が「セクシュアル・マイノリティ」であるという主張と同様に,「諸活動」なるものも,やはり根も葉もない虚偽主張だからである。

⑵について,記事番号11の記載内容は認める。

ただし,原告X1も自認するとおり,それらの記載は,いずれも,訴外ユニオンが作成した「警告書」(甲4)の内容であるか,少なくともその要約なのであるから,被告らによる表現ではない。

⑶は否認ないし争う。

第1文について,原告X1がセクシュアル・マイノリティであることが強調されているという評価は争うが,仮にそうであるとしても,記事番号11の内容は訴外ユニオンの「警告書」及びその要約にすぎないから,原告X1がセクシュアル・マイノリティであること(という虚偽主張)がことさらに強調されているとしても,そうしたのは訴外ユニオンであって,被告Y2ではない。

第2文について,被告Y2は,同警告書の内容を改変しておらず,その全文を掲載している。それゆえ,記事番号11の内容から,被告Y2が,殊更に原告X1がセクシュアル・マイノリティであることを「強調」したという意思を推定することはできない。

そもそも,原告X1はセクシュアル・マイノリティではなく,セクシュアル・マイノリティとしての諸活動など一切していないことは既に述べた通りである。

第3文について,原告X1は,被告Y1が,訴外ユニオンでの就労に際して,原告X1が「セクシュアル・マイノリティとしての諸活動」をしている事実及び原告X1がそこでは中野某という変名を使用していた事実を知っていたというが,原告X1は,被告Y1に対して,いつ,いかなる場所で,どのような手段を用いて,いかなる「セクシュアル・マイノリティとしての諸活動」の存在を了知させたというのであろうか。

かえって,原告X1は,記事番号11(甲6の11)にも記載されているように,男性の服を着用し,男子トイレに出入りするなどして,あかたもセクシュアル・マイノリティではないかのような言動を繰り返していたのである。しかも,被告Y1に至っては,原告X1と男子トイレで遭遇したことさえある。

このように,被告Y1は,原告X1がセクシュアル・マイノリティであることを通知されたことは一度もなく,そのような認識を持つのが当然であるような機会に遭遇したこともなかったのである。

第4文について,記事番号11において原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという訴外ユニオンの虚偽主張が強調されているのは訴外ユニオンの問題であること及び本件において被告らと訴外ユニオンとの労働争議の内容及び経緯が不法行為の成否に直接関係する重要な論点であることは既に論じた。

また,訴外ユニオンは,被告らとの労働争議に関係して,訴外ユニオンの側から原告指摘の①及び②を持ち出し,それらを理由として被告Y2のブログを削除するように要求してきたのであるから,①及び②が労働争議に無関係であるとは到底いえない。

第5文について,原告X1は,被告Y2が「警告書」を要約したことを論難するようであるが,インターネットでの情宣活動において,読者に理解を促す目的で,全文を掲載している文書について要約を加えるのは一般的な表現手法であるから,不当なものでもなければ,原告X1に対する悪意又は加害の意思に基づいて選択された表現手法でもない。

また,訴外ユニオンは,訴外ユニオンが労働者側となって労働争議に取り組む場合には,使用者から来た書面をインターネット上に無断で公表しているから(乙B20),訴外ユニオンが使用者として労働組合に書面を送付するなどした場合,訴外ユニオンは,その書面が公表されることについて黙示に承諾しているものということができるし,その内容も,公表されることを前提として推敲されていると考えるべきであることを付言しておく。

第6文について,被告Y2は,訴外ユニオンも使用者に対して実施しているように(乙B20),原告X1という男性を真実に反して「セクシュアル・マイノリティ」に仕立て上げ,それを理由として被告Y2の活動を中止するように「警告」するという使用者訴外ユニオンの不誠実な対応を批判する目的で「警告書」(甲4)を公表し,記事番号11を投稿しただけである。

⑷は否認ないし不知,主張は争う。

第2文について,セクシュアル・マイノリティにおいては,性転換手術を受けるなどして,あるいは手術を受けていなくても,個室を使用することを前提に出生時の性と異なる性別のトイレに出入りする者が多い。

したがって,原告X1が男子トイレしか使用していないという事実は,「警告書」の前提となっている事実関係が虚偽であることを説明するために必要不可欠なものである。

第3文について,原告X1の社会生活は,被告らの関知するところではない。

被告Y1は,原告X1がセクシュアル・マイノリティである旨の説明を受けたことは一度もない。また,原告X1がセクシュアル・マイノリティの労働者から相談を受けている様子を見聞きしたことはなく,セクシュアル・マイノリティに関係がある団体交渉に出席したこともない。

第4文について,被告Y1は,原告X1が「『中野千暁』という通称で社会生活を送る範囲」と位置づける訴外ユニオンに加入して4年目になるが,その活動のいかなる場面においても,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという説明を受けたことは一度もない。

被告Y1は,訴外ユニオンに在職していた平成30年5月から平成31年3月までの間に,原告X1が労働相談を受けている場面や,訴外ユニオンへの加入手続きを受け付けている場面に遭遇したことがたびたびあったが,その中で,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるということを加入者に一律に説明していたなどの事情はなかった。

原告X1が,何をもって,「中野千暁」という通称で社会生活を送る訴外ユニオンにおいて,自らがセクシュアル・マイノリティであるという事実関係を共有していたというのか不明である。

かえって,第3文について提出された原告X1の主張を前提としても,セクシュアル・マイノリティの労働者であると申し出て原告X1に労働相談を依頼するか,少なくともセクシュアル・マイノリティに関係のある団体交渉に出席しない限りは,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという情報に接する機会はなかったものと考えるのが自然である。

3  「原告X1の顔写真の掲載が違法性を有しないこと」(7頁)

⑵について,原告X1は,問題となる写真の加工態様が「犯罪報道」に類似するものではないことは認めながら,なぜか,それが「犯罪者であるかのような悪印象を持たせる加工」であると主張するようである。

しかし,犯罪報道に類似しない方法で写真を加工しているのに,なぜ,それによって,一般読者が,原告X1について「犯罪者であるかのような悪印象」を持つことになるのか不明である。原告X1は,結論を述べるだけであって,その結論を導く理由を一切示していない。

また,本件投稿が被告Y2の使用者である訴外ユニオンに対する団体行動として正当なものであれば,それが不法行為にならないことから(上記最大判昭和41年10月26日参照),被告らは,それによって,原告X1に対しても責任を免れる。

したがって,原告X1の主張は失当である。

第2  「被告DMU準備書面(3)に対する反論」(8頁)

1  はじめに

被告Y2も,既に認否,反論又は主張をした部分と重複する部分においては,記載を割愛する。

2  「原告中野の通称使用について」(8頁)

原告X1は,①訴外ユニオンにおけるセクシュアル・マイノリティの労働相談及び②京都にあったLGBTに関するサークルにおいて,セクシュアル・マイノリティであることを明らかにしながら活動していたと主張する。

しかし,既に述べたとおり,被告Y1は,訴外ユニオンにおいて,原告X1がセクシュアル・マイノリティの労働相談に応じている様子を見たことは一度もない。

京都でのサークル活動なるものについて被告らは知らないが,セクシュアル・マイノリティに関係する社会運動においては,セクシュアル・マイノリティの権利擁護に賛同する者であれば,セクシュアル・マイノリティの当事者でなくても活動に参加できるのが一般的であるところ,原告X1がそのようなサークルで活動したとしても,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという根拠にはならない。

いずれにせよ,原告X1は,上記①及び②の両者について,準備書面においてその存在を主張するばかりで,その裏付けとなる証拠を何一つ提出していない。

原告X1は,それらの場所において,「自身がセクシュアル・マイノリティの当事者であることを明示」していたのであれば,それに符合する議事録などの文書が残っていることが自然であるところ,原告X1がそれを提出できないのは,それが虚偽主張だからである。

また,原告X1は,訴外ユニオンとは別に「職業生活」を営んでいるというが,これも虚偽主張である。原告X1にとっては,雇用保険に加入している(乙B30)訴外ユニオンでの就労こそが「職業生活」である。雇用保険は,同時に複数の事業主に対して雇用関係にある場合でも,「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係」にある事業主でしか加入することができないからである。

原告X1は,原告X1が訴外ユニオンと関係なく「職業生活」を営んでいることを前提として,そのような原告X1が「就職活動」をする際に不都合が生じる可能性があることを挙げて各投稿記事による損害を縷々主張するが(準備書面3・12頁),原告X1は,あろうことか訴外ユニオンに就職しているのである。

このように,原告X1の主張の主要部分は,いずれも,何らの裏付けもない虚偽主張なのである。原告X2と同様,本件の基礎となる事実関係について虚偽主張を繰り返す原告X1の態度は,その主張全体の信用性を失墜させるに十分なものである。

3  「本件ブログの運営について」(9頁)

原告らは,被告Y2のブログが,もっぱら被告Y1によって執筆,掲載されているという。

しかし,被告Y2のブログは被告Y2の規約,規程に基づく組合の自治と対話,すなわち組合民主主義に基づいて管理されているところ,使用者である原告らは,何を根拠として,被告Y1だけがそれらを執筆,掲載していると主張するのであろうか。

原告らは,(被告Y2ではなく)被告Y1による不法行為の発生を主張しているところ,不法行為の主体,あるいは行為者が被告Y1であることの主張・立証責任はもっぱら原告らにあるのであって,被告Y1が,使用者である原告らに対して,被告Y2における議論,確認の方法又は経緯についての具体的内容を示す義務はない。

しかも,被告Y2は,そのことを裏付ける資料の1つとして,既に評議会議事録(乙B14)を提出している。

他方で,原告らは,本件ブログにおける投稿記事をもっぱら被告Y1だけが執筆,掲載していることについて,現在までに,何一つ,具体的な主張,立証をしていない。

4  「原告中野及び原告X2の立場について」(9頁)

原告らは,原告X1が訴外ユニオンの役員であり,また,原告X2については,既に述べたように,訴外ユニオンに入職し,被告Y2に対する監視活動を対価として活動していた者であるにもかかわらず,それらが一般私人であるという。

しかし,原告X1は,原告X1の主張を前提とすれば,訴外ユニオンの代表者ではないとしても第3位の役員である書記長の地位にあり,訴外ユニオンの執行委員会においては,代表者である執行委員長と同様に,一人一票の議決権を行使することができた。

原告らは,訴外ユニオンのような労働組合においては,その代表者だけが使用者責任を負うべきであると主張するようであるが,まったくの誤りである。本件において,訴外ユニオンの被告Y1に対する懲戒解雇は,外形上,訴外ユニオンの規約に基づく権利停止処分として行われたところ,訴外ユニオンの規約において,権利停止処分は,代表者の専決事項ではなく,執行委員会の決議事項である(甲16,第7条3)。

つまり,原告X1は,少なくとも本件においては,訴外ユニオンの代表者と同程度に被告Y1の労働条件を左右しうる地位にあったのである。

したがって,原告X1が負うべき使用者責任及び被告らの団体行動に対する受忍限度は,訴外ユニオンの代表者と何ら異なるところがない。

原告X2についても,訴外ユニオンから報酬を受領していた者であって,「一般組合員」ではないことは,報酬の支払者である訴外ユニオンが認めている以上,動かしがたい事実である。

5  「原告X2の『録音機器の設置』について」(9頁) 

原告X2は,被告Y1に対して,清水某こと関口直子氏の指示に基づいて,「前から」,被告らを盗聴・盗撮していたことを自白している(乙B16)。

原告X2は,何ら原告X2に損害を与えていなかったばかりか,原告X2を解雇したデイズジャパンの団体交渉の担当者まで務めた被告Y1に対して,その対価として多額の金銭が得られるというだけの醜悪な動機のためにその盗聴を請負い,そのことを認めておきながら(乙B16),何をもって,被告らの主張につき「何の根拠も示されない」と非難するつもりであろうか。

原告X2は,被告らの言動を録音・録画を監視し,それを使用者である訴外ユニオンあるいは清水某こと関口直子氏に引き渡すことで報酬を受けていた「盗聴請負人」以外の何者でもなく,本件訴訟でさえ,訴外ユニオンからの「支援」に基づく不当労働行為として提起しているというのである。

原告X2に何らの損害を与えていないばかりか,原告X2のデイズジャパンに対する団体交渉に協力してきた被告Y1という労働組合の仲間の信頼を裏切り,金銭の見返りを受けることだけを目的として,商行為(ビジネス)としての盗聴・盗撮行為に及び,その後も本件訴訟を提起するなどして被告らへの嫌がらせを続けている原告X2の行動は,社会的に重大な非難に値するものであることを改めて指摘しておく。

6  「原告X2の『盗聴』行為について」(9頁)

否認ないし争う。

訴外ユニオンに設置されていたICレコーダーは,オリンパス社製の一般的なものであったから,フォトジャーナリズムの企業であるデイズジャパンを「ほとんど一人で運営,全体を管理」(乙B25)していたというベテランの記者若しくは編集者である原告X2において,その操作方法が分からなかったはずがない。

しかも,原告X2は,ICレコーダーだけでなく,原告X2のスマートフォンを被告Y1に向けた状態で録画機能をオンにし,録音もしていた。そのことは,原告X2にそれらを指示した立場である訴外ユニオンが都労委で自白した動かしがたい事実である(乙B17,5頁1〜2行目)。

要するに,ICレコーダー云々を措くとしても,3月18日のやり取りは,少なくとも原告X2のスマートフォンによって録音・録画されており,3月17日以前の被告らの活動も,原告X2によれば,「前から」録音・録画していたというのであるから(乙16),結局のところ,原告X2は,被告らを盗聴・盗撮したのである。

この点について,訴外ユニオンは,令和2年3月26日,原告X2がスマートフォンで録音・録画していた旨の自白を撤回するという趣旨の準備書面を提出してきた。しかし,労働委員会の調査手続に民事訴訟規則は適用されないところ,陳述をしていないから自白の撤回が可能であるという訴外ユニオンの主張は失当である。

そもそも,都労委における訴外ユニオンの主張は,補強証拠にすぎない。それを措くとしても,3月18日当日の原告X2の発言(乙B16)によれば,原告X2は,訴外ユニオンあるいは清水某こと関口直子氏の指示に基づいて,被告らを(3月18日より)「前から」盗聴・盗撮していたからである。

これらを総合すると,原告X2が,被告Y1に敵対する筋合いですらないにもかかわらず,訴外ユニオンから金銭を受領することを目的とする商行為として,醜悪にも被告らを盗聴・盗撮していたという本件の真相が見出される。

7  「原告X2の肖像権侵害について」(11頁)

不知ないし争う。

原告X2が肖像を公開した場所は,「インターネット放送局」を自称する『世田谷コンシェルジュ』であるところ,そのような公共性の高い場所で公開された肖像がインターネット上の他の場所において引用される蓋然性が高いことは当然であり,原告X2も予見していたはずである。

原告X2は,そのことを知りながら『世田谷コンシェルジュ』の取材に応じ,「インターネット放送局」を通じてその肖像を全世界に対して公表したのであるから,それが被告らを含む不特定の者に引用されることについて黙示に同意している。

また,被告Y2がなした加工は,むしろ原告X2の肖像権に配慮するためになされたものであるが,かかる加工によって,まったく加工がなされなかった場合と比較して,原告X2の特定性が減少していることは自明である。

被告Y2としては,訴外ユニオンに労働相談をすれば,それがプライバシー保護の要請が強く働くものであるにもかかわらず,いつ,訴外ユニオンによって「前から」盗聴・盗撮を命じられている原告X2に録音・録画されているか分からないという公共性の高い事実を伝達する必要性,実際に原告X2が盗聴して知り得た情報を根拠として被告Y1を懲戒解雇した訴外ユニオンに対する抗議活動としての相当性,並びに原告X2の肖像権保護の要請を比較衡量し,その均衡を図るための最善の方法として,原告X2の目線の加工という手段を選択しただけである。

8  「原告中野の損害について」(11頁)

否認ないし争う。

被告Y2は,本件各投稿記事のURLを,そのツイッターに記載する方法でしか拡散していない。

仮に,原告X1が主張するとおり,Google社の検索エンジンにおいて本件ブログが検出されるとしても,それは,被告らの許可を得ることなく本件ブログの内容を取得し,内容を精査せずにGoogle社のデータベースに追加して検索に供するというサービスを営利事業として提供しているGoogle社の問題であり,被告らは無関係である。

「Google検索」の提供がなければ,本件ブログの内容が誰にでも閲覧される状況に至ることはなく,そのURLを知った者しか閲覧できない状況であり続けたはずである。

以上から,原告X1は,本件ブログが「Google検索」で検出されたことによって被害が生じたというのであれば,かかる損害はGoogle社による「Google検索」の提供なくしては発生しなかったのであるから,Google社に対して責任を追及するべきである。

なお,原告X1の主張を前提としても,原告X1は,訴外ユニオンに就職しているから(乙B30),原告X1が,その「就職活動」に起因して何らかの損害を蒙る現実的な可能性はないことを改めて指摘しておく。

第3  「被告らの行為は組合活動として正当化されないこと」(12頁)

1  「労使関係の問題ではなく,少なくとも組合活動として保護が弱いこと」(12頁)

否認ないし争う。

既に述べたように,訴外ユニオンの被告Y1に対する懲戒解雇が,執行委員会決議による権利停止処分の名を借りてなされた以上,それを席上で提案し,しかも訴外ユニオンの代表者と同じ数量の議決権をもって賛成した原告X1は,原告らがいう「被告労働組合の使用者または使用者の意思決定に重大な影響を与えることができる経営者的地位」に属する人物である。

原告X1は,被告Y1に対する懲戒解雇を企図,実施しておきながら,何ら使用者責任を負わず,「一般組合員」あるいは「一般私人」を擬態し続けるつもりなのであろうか。

仮に,原告X1が訴外ユニオンの「運営」を単独で決定する地位にないとしても,本件において不当労働行為として争いの対象となっている権利停止処分を決定する地位にはあったのであるから,本件労働争議において,原告X1が経営者としての責任及び被告Y2の活動に対する受忍義務を負うべき地位にあるという結論は何も変わらない。

原告X1は,執行委員会あるいは役員の職責に関する原則に関する規定だけを持ち出して,あたかも原告らが訴外ユニオンの日常的な業務に関する権限しかなかったかのような印象を作出しようとしているが,こと被告Y1に対する懲戒解雇たる権利停止処分に関しては執行委員会の決議事項であるから(甲16・訴外ユニオン規約第7条3),それによって原告X1の使用者責任が左右されることはない。

原告X1は,非常時において清水某こと関口直子氏を代行する地位にあるか否かを問題にするようでもあるが,訴外ユニオンにおいて,平成31年3月の時点での専従者は,フルタイマー(役員又は正社員)である清水某こと関口直子氏,原告X1,訴外佐藤智秋氏の3名だけであり,他方で,パートタイム労働者(アルバイト)は,被告Y1以外には,被告Y2の組合員である訴外T氏しかいなかった。

そのため,訴外ユニオンに勤務してすらおらず,遠方である静岡県内に居住している訴外仲英雄副執行委員長(当時)と比較して,原告X1の訴外ユニオンに対する事実上の影響力は遙かに大であったのである。

実際に,平成31年2月上旬,訴外ユニオンの代表者である清水某こと関口直子氏がアメリカに外遊し,2週間も事務所を不在にするという事態があったが,この間,副執行委員長である仲氏が事務所に来たことはなく,原告X1が清水某こと関口氏を代行して訴外ユニオンを運営し,被告Y1ら従業員を使用していた。

原告X1の使用者責任及び受忍限度を検討するにあたっては,このような訴外ユニオンの経営の実情が十分に考慮されるべきである。

原告X2が役員に次ぐ地位にあり,被告Y2に対する監視活動という違法行為の対価として報酬を受けていたことは既に述べた。

よって,被告Y2の訴外ユニオンに対する抗議活動の結果として原告らに何らかの損害が生じたとしても,それは被告Y2の団体行動権に基づく正当な権利行使であるから,私法上の免責を受ける。

2  「仮に労働組合の活動であるとしても被告らの行為は正当化されない」(14頁)

争う。

被告Y2は,あくまでも,使用者である訴外ユニオンが虚偽主張(原告X1がセクシュアル・マイノリティであること)を前提として被告Y2に活動中止を命令したことに対する抗議活動のために記事番号11を公表した。

使用者たる訴外ユニオンの被告Y2に対する対応を問題とする当該表現行為は,訴外ユニオンとの係争の解決に向けて必要かつ関係性があり,それが不当労働行為でもある以上,それに対する批判は,紛争の解決に直接関係するものである。

「警告書」(甲4)は,労働争議の過程において使用者が労働組合に送付した文書であり,それを公表すること又は要約すること,並びにその文書の内容を含む使用者の対応について批判することが「労使関係に無関係の私事暴露や個人攻撃」と評価することは到底できないから,それらが「不相当な個人攻撃や誹謗中傷,私事暴露」であるとはいえない。

そもそも,記事番号11において原告X1のプライバシー(と称する虚偽主張)の内容が公表されたのは,原告X1が経営している訴外ユニオンの書面において,原告X1のセクシュアリティについての虚偽主張を根拠として被告Y2の活動の中止を命令したからであるから,被告らに責任はない。

また,既に述べたように,被告らは,被告Y2のツイッターにしか本件各投稿記事のURLを記載しておらず,労使関係に接点のある人物にしかURLを通知していないところ,本件ブログを,その内容に関係なくインターネット上で検出可能にさせ,全世界から検出可能にしているのは,あくまでもGoogle社のような検索エンジンの提供会社であって,被告らは,それらの検索エンジン提供会社に対して掲載を許諾したことは一度もない。

以上要するに,本件ブログにおける表現行為は,あくまでも訴外ユニオンに対する抗議活動の範疇に留まるものであるところ,原告らは,訴外ユニオンの労務政策に直接関与しうる地位にある。

仮に,本件各投稿記事がインターネット上で拡散されていたとしても,それは被告らの了知するところではなく,あくまでもGoogle社のような検索エンジン会社の単独行為である。

いずれにせよ,原告らが問題とする行為は,被告Y2の団体行動として私法上の免責を受けるものであるか,あるいは,検索エンジン提供会社の単独行為であって,もとより被告らの責任の範疇外のものである。

第4 「仮処分決定後も続く人格権侵害」(15頁)

本件に無関係の事実主張であるから,認否しない。

ただし,被告らが御庁の仮処分命令に違反したことは一度もないことを強調しておく。原告らは,投稿記事削除の仮処分命令にすぎないものを,あたかも投稿差止めの仮処分命令であるかのような印象操作をしながら被告らを論難するが,それらは要件事実を全く異にするものであり,ツイッターでの投稿をもって,被告らが仮処分命令を「事実上無視」したと評価することはできない。

原告らは,被告らによる表現行為を差止めるに十分な理由があると考えるのであれば,そのような命令を求めて再度の申立てをすればよいだけである。

第5 被告らの主張

1  被告らが原告X1がセクシュアル・マイノリティであることを過失なく知らなければプライバシー侵害の不法行為責任は発生しないこと

原告X1は,本件ブログの各投稿記事が,「セクシュアル・マイノリティ」に対する「アウティング」に該当することを前提に,それらが原告X1に対するプライバシー侵害になると主張するようである。

別紙記事番号6(甲6の6),同8(甲6の8),同9の③(甲6の9),同11の②(甲6の11)は,単なる原告X1の氏名の表示であり,同11の②は,原告X1の社会的評価を低下させる要素が全くない記載であるが,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという引用部分が存在する記事番号11はさておき,それ以外は,単に「X1」として原告X1の氏名を表示しているだけであるにもかかわらず,原告X1のプライバシー侵害であると位置づけられている(訴状7頁中段)。

さらに,原告X1は,別紙11の⑤(甲6の11)における,原告X1が男子トイレに入るという記載が,原告X1のプライバシーを侵害するとも主張している(訴状6頁下段)。

これらの主張は,原告X1が「セクシュアル・マイノリティ」であり,原告X1の氏名を表示することが,それだけで「アウティング」を構成するということを前提としなければ,到底,成り立たないものである。

すると,上記の各記載は,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという事実が認められなければ,プライバシー侵害の不法行為を構成しないはずである。

したがって,被告らが,原告X1がセクシュアル・マイノリティであることを知らず,知らなかったことについて過失がなければ,仮に原告X1がセクシュアル・マイノリティであったとしても,被告らに不法行為責任は発生しない。

2  原告X1が「セクシュアル・マイノリティ」ではないこと

もっとも,本件では,被告らが原告X1がセクシュアル・マイノリティであることについて過失なく善意であることはもとより,原告X1が「セクシュアル・マイノリティ」であるという事実は存在しない。

以下,「セクシュアル・マイノリティ」の本邦における定義と,原告らが被告らの「アウティング」の違法性を裏付けるものとして援用してきた国会の附帯決議(訴状6頁)を参照しつつ,その理由を述べる。

(1) 「セクシュアル・マイノリティ」のいかなる類型にも該当しないこと

「セクシュアル・マイノリティ」(Sexual Minority)とは,日本語の「性的少数者」に対応する概念であるが,人事院は,性的少数者について,「性的指向あるいは性自認に関するマイノリティのことを指す」と定義している。
そして,人事院は,性的少数者の類型として,いわゆるLGBTを列挙している(乙B22)。LGBTとは,それぞれ,

① レズビアン(Lesbian)=同性を好きになる女性
② ゲイ(Gay)=同性を好きになる男性
③ バイセクシュアル(Bisexual)
=性別に関わらず,異性を好きになることもあれば同性を好きになることもある人
④ トランスジェンダー(Transgender)
=こころの性とからだの性が一致していない人

の頭文字を連ねたものであるところ,原告X1は男性であるから,①に該当しないことは自明である。

②及び③についても,被告らは,原告X1が他人に恋愛感情を抱いている様子を目撃したことはないし,人づてに聞いたこともない。原告X1も,自らが②もしくは③であることを主張していない。

④についても,被告らが知る限り,原告X1は,男性として社会生活を営んできており,男性以外の性別で社会生活を営んでいるのを見た者は誰もいないから,原告X1の「こころの性」が男性ではないということはできない。原告X1も,自らが④であることを主張していない。

原告X1は,「セクシュアル・マイノリティ」を何ら具体的に定義せず,あえてそれを曖昧にしながら縷々主張しているが,このように,セクシュアル・マイノリティの具体的な定義を参照すると,原告X1がいかなるセクシュアル・マイノリティの類型にも該当せず,したがってセクシュアル・マイノリティではないことが明らかになる。

(2) 「セクシュアル・マイノリティとしての諸活動」が明示されないこと

原告X1は,同人がセクシュアル・マイノリティであることを前提として,「訴外ユニオンやセクシュアル・マイノリティとしての諸活動では,「中野千暁」を通称として用いており」(訴状4頁上段)と主張している。

しかし,被告らは,原告X1が,セクシュアル・マイノリティの当事者であると明示して何らかの活動をしているのを見たことも聞いたことはなく,原告X1も,被告らが釈明を求めているにもかかわらず,そのような活動の客観的な実績の存在を立証しない。

以上から,原告X1が,セクシュアル・マイノリティとして活動してきたという事実はない。

(3) おわりに

原告X1は,国会の各附帯決議の存在を援用して(訴状6頁上段)「アウティング」の違法性を縷々述べるが,それらの附帯決議は,一致して,「アウティング」を,「性的指向・性自認の望まぬ暴露」と定義している(乙B27,28)。

しかし,本件では,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるという前提を欠くばかりか,被告らは,原告X1の性的指向や性自認を知らないし,公表してもいない。

原告X1の氏名若しくは原告X1が「セクシュアル・マイノリティ」であると位置づける訴外ユニオンの「警告書」(甲4)を見ても,到底,それによって原告X1の性的指向・性自認を知ることはできない(被告Y2準備書面⑴,7〜8頁)。

そして,原告X1がセクシュアル・マイノリティであるか否かを判断するまでもなく,原告らが援用する国会の附帯決議を前提とすれば,被告らは,原告X1に対して何らのアウティングをしていない。

畢竟,本件において,被告らの原告X1に対する不法行為は,何ひとつ認められないのである。

原告X1は,数々の虚偽事実を前提として自らの「被害」を声高に主張する前に,訴外ユニオンの経営者として,総会を適法に開催せず,会計を隠蔽するという不法行為を繰り返しておきながら,訴外ユニオンにほとんど出勤することなく,被告Y1と比較して高額な報酬と自由な休暇を謳歌し,訴外ユニオンの負担において厚生年金にまで加入しながら,雇用するアルバイトであった被告Y1(並びに訴外T氏)ら非正規労働者には法定の福利厚生さえ全く与えなかったばかりか,残業代,有給休暇さえ付与せずに酷使し,そのような労働条件に不満を持った被告Y1が労働組合を結成して団体交渉を申し入れるや不当解雇,団交拒否という不当な対応に出たことを恥じ,自省するべきではあるまいか。

本件ブログにおける原告X1に対する批判は,いずれも,原告X1が使用者として実施してきた一連の醜悪な不当労働行為に対する労働組合の対抗言論として衡平かつ適切なものである。

以 上

証拠説明書(令和2年5月10日)

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