平成29年(ネ)第4039号損害賠償等請求控訴事件

平成30年1月31日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 太田 勝
平成29年(ネ)第4039号損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第14419号
口頭弁論終結日 平成29年11月29日

判     決

1 本件各控訴をいずれも棄却する。

2 1審原告らの控訴費用は1審原告らの負担とし、1審被告らの控訴費用は1審被告らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

 1 1審原告ら

 (1)原判決中1審原告ら敗訴部分を取り消す。

 (2)1審被告らは、1審原告X1に対し、連帯して1622万5000円及びこれに対する平成25年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (3)1審被告らは、1審原告組合に対し、連帯して、1617万円及びこれに対する平成25年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (4)1審被告会社は、1審被告会社発行の週刊誌「別冊宝島」及び読売新聞の朝刊東京版社会面全面広告欄に、原判決別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を、同目録記載の条件でそれぞれ1回掲載せよ。

 (5)訴訟費用は、第1、2審とも、1審被告らの負担とする。

 (6)前記(2)及び(3)につき、仮執行宣言

 2 1審被告ら

 (1)原判決中1審被告ら敗訴部分をいずれも取り消す。

 (2)前項の各取消部分に係る1審原告らの請求をいずれも棄却する。

 (3)訴訟費用は、第1、2審とも、1審原告らの負担とする。

第2 事案の概要

 1 

本件は、労働組合である1審原告組合及びその代表者(執行委員長)を務める1審原告X1が、1審被告会社が発行する雑誌「別冊宝島」2063号(平成25年9月29日発行。以下「本件雑誌」という。)に掲載された、「二代目弘道会の手に落ちた“錬金術の都”京都の闇社会」と題する1審被告一ノ宮執筆の生地(以下「本件記事」という。)の記述によって、その名誉を毀損されたと主張して、1審被告らに対し、共同不法行為に基づき、損害賠償金各1650万円及びこれに対する本件雑誌の発行日(不法行為日)である平成25年9月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払、並びに民法723条に基づき、名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告の掲載を求めた事案である。

   原判決は、1審原告らの請求のうち、1審被告らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償金として、1審原告X1について27万5000円、1審原告組合について33万円及びこれに対する上記遅延損害金の連帯支払を求める限度で請求を一部認容し、その余の請求をいずれも棄却したところ、1審原告ら及び1審被告らのいずれもが、それぞれの敗訴部分の取消し等を求めて控訴を提起した。

 2 

前提事実等、争点及び争点についての当事者の主張は、次のとおりの原判決を補正し、後記3のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほかは、原判決の事実及び理由」中の第2の2から4までに記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)

 (1)原判決5項21行目末尾の次に、改行の上、次のとおり加える。

  「ウ 論評の相当性

     本件記述6は、1審原告組合の組合員において、マイクロバスや街宣車を駆使して、平日に、数十人単位で、繰り返し業務妨害行為を行った等の関西宇部事件判決(乙5)で指摘されている事実を前提とする論評である。そして、その前提事実につき、主要な部分において真実であることの証明があるか、真実と信ずるにつき相当な理由があり、かつ、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでなく、表現行為者が主観的に正当と信じて行ったものであるから、本件記述6を含む記事の執筆及び掲載は名誉毀損の不法行為とはならない。」

 (2)原判決6項5行目末尾の次に、改行の上、次のとおり加える。

  「ウ 論評の相当性

     本件記述6については、その前提事実の真実性及び相当性が認められないから、相当な論評として違法性が阻却されることはない。」

 3 当審における当事者の補充主張

 (1)1審原告らの主張

   ア 本件記事の表題の下方部分の「加水された生コンクリートが使用された、名神高速道路大山崎インターチェンジ付近の工事現場」との記述及び掲載写真(以下、これらを併せて「本件記述8」という。)は、本件表題や本件記事のリード部分の記述とあいまって、1審原告らが加水された生コンクリートにより不当な利益を得ていたかのような印象を一般読者に与えるから、1審原告らの社会的評価を低下させるものである。

   イ 本件雑誌50項2段目の3行目から4行目にかけての「半グレ集団ともいえる「R労組」T委員長」との記述(以下「本件記述9」という。)は、1審原告らを軽蔑的に呼称するものである。半グレとは、明確な団体形式を採ることなくして、従前の暴力団同様の移報行為を重ねている者に対する呼称で、強い否定的評価が込められたものであり、1審原告らの名誉感情を著しく傷つける侮辱行為である。

   ウ 本件記述8及び本件記述9を含む記事の執筆及び掲載はいずれも不法行為を構成し、1審原告らはそれぞれ、各記述につき100万円、合計200万円の損害を被ったものであるが、本件においては、共同不法行為に基づく損害賠償請求金として、本件各記述によるものと合わせ、既に請求している1650万円の限度で連帯支払を求めるものである。

 (2)1審被告らの主張

    1審原告らの主張は争う。

     なお、本件記述9については、名誉毀損を主張する趣旨と解されるが、1審原告らを半グレ集団と記述することについては真実性又は相当性があり、違法性が阻却される。

第3 当裁判所の判断

 1 

当裁判所も、1審原告らの請求は、1審被告らに対し、共同不法行為に基づき、1審原告X1について27万5000円、1審原告組合について33万円及びこれらに対する法定遅延損害金の連帯支払を求める限度で請求を一部認容し、その余の請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正し、後記2のとおり当審における当事者の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中の第3の記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)

 (1)原判決7項12行目冒頭から同25行目末尾までを、次のとおり改める。

「 本件記述2においては、ホテルのロビーにおいて、1審原告X1が生コン販売会社の経営者と打合せをしている際、山口組弘道会系の暴力団幹部の西田から、また悪巧みしているとの罵声を浴びせられたことが示されている。これは、本件記述2に続く本件記事の記述も合わせて読めば、1審原告らが暴力団である山口組系弘道会淡海一家と以前から何らかの関係があることを前提に、両者間であつれきが生じていることを摘示するものと解される。しかしながら、1審原告らは、長年にわたり、生コン業界の労働条件の向上のため、暴力団から襲撃を受けることもあったが、暴力団と対峙しながら労働組合活動を継続してきたとしており(甲7、26、27、原審1審原告X1本人)、具体的な出来事等に言及しつつその旨が記載された書籍等も複数出版されるなどしているところであるから(甲8、9、28)、上記のような事実を摘示する本件記述2は、その延長上の出来事を示したものと理解することができるし、本件記事において、1審原告らのと西田の関係について具体的に記述されているわけではない。したがって、本件記述2からは、一般読者が、1審原告らと暴力団が何らか関係を有するという抽象的な印象を超えて、その関係が反社会的なものであるなどの具体的事情を読み取るのは容易ではないというべきであるから、本件記述2が1審原告らの社会的評価を低下させるものとまでは認められない。」

 (2)原判決8項5行目の「関係」を「親密な関係」に改める。
 (3)

原判決9項18行目末尾の次に「また、本件記述6は、その文脈からすれば、1審原告X1の有する影響力に関する記述の一部であり、1審原告X1の指示の下で1審原告組合が前記のような活動を行っていたことも摘示するものと解されるから、1審原告X1の社会的評価も低下させるものと認められる。」を加える。

 (4)

原判決10項18行目の「本件記述6は」から同22行目の「社会的評価も」までを、「本件記述2は1審原告らの社会的評価を低下させるものとは認められないが、その余の記述は原告らの社会的評価を」に改める。

 (5)

原判決11項15行目冒頭から同12項9行目末尾までを削り、同10行目の「イ」を「ア」に改める。

 (6)

原判決12項21行目冒頭から同23行目末尾までを、次のとおり改める。

   「 確かに、天城建材センターへの資金提供を目的に、1審原告X1により、1審原告組合から京都生コンクリート協同組合の加盟企業を経営する千原善造宛てに合計30億円を超える約束手形が振り出されたことがうかがわれ、1審原告X1から、その実態について必ずしも十分な説明がされているとはいえない状況にある(乙18の1・2、19、28、1審原告X1本人)。

     しかしながら、前記告発状は、1審原告X1に批判的又は敵対的な立場を採る亡村上(乙14の1、27、1審原告X1本人)の作成に係るもので、その内容の信用性については慎重な吟味を行う必要があるところ、亡村上への取材結果(乙27)は、前記告発状の内容が敷衍されているにとどまり、1審原告らとA会との資金関係を裏付けるに足りる具体的事情は認められない。

 (7)

原判決13項12行目末尾の次に、改行の上、次のとおり加える。

   「 確かに、京都の土木建築業界においては、A会がこれを仕切り、工事を受注する業者から、受注金額に応じた一定割合の金員を徴収していたことが、山口組幹部の髙山清司の刑事事件の審理において前提とされており(乙12の2・5)、1審原告X1が京都を含む関西地区に生コンクリート業界を取りまとめる立場にあったことなどからすると、1審原告らとA会が親密な関係にあったとしても、不自然とはいえないように思われる。」

 (8)

原判決13項26行目の「ウ」を「イ」に、同14項4行目の「A」を「本件記述2の出来事の現場に居合わせた生コン販売会社の経営者から話をきいた「A」という人物(以下、単に「A」という。)」にそれぞれ改める。

 (9)

原判決14項9行目の「前述したとおり、」を削り、同12行目の「原告X1」から同13行目の「あるから」までを「Aがそれらの事情を知るに至った事情や、Aが1審被告一ノ宮に話をするに至った経緯等は不明であるから」に改める。

 (10)

原判決14項22行目から同23行目にかけての「あるものの、その経緯も明らかではなく、当該部分において」を「あり、1審原告X1がそのような山口組の内部事情を知るに至ったことから、1審原告X1が山口組関係者と何らかの関係を有していることがうかがえるところではあるが、同じ」に改める。

 (11)

原判決15項6行目から同7行目にかけての「、すなわち半グレ集団」及び同8行目の「ア」を削り、同10行目の「乙」の次に「5、」を加え、同11行目の「反社会的」から同12行目の「半グレ集団」までを「1審原告組合が反社会的な活動を行うことのある集団」に改める。

 (12)

原判決16項1行目の「淡海一家」から同3行目の「(前記(ア))までを「平成21年頃、淡海一家の組員と思われる者が1審原告組合の会館に押しかけ、1審原告X1に会わせるように要求したこと(弁論の全趣旨)のほか、これまで述べたとおり、1審原告X1が暴力団関係者と何らかの関係を有することがうかがわれること」に改める。

 (13)

原判決16項11行目の「記載があり」から同17項17行目末尾までを、次のとおり改める。「記載がある(乙36・2枚目)。確かに、本件帳簿の記載自体からはその具体的事情は必ずしも明らかではなく、また、1審被告一ノ宮が、KYが1審原告組合の会館を訪れた際に100万円を持ち帰った旨を亡村上から聞いたと述べるものの(乙35・16項)、亡村上の供述の録音を起こしたもの(乙27、34)にはその記録がない。

しかしながら、本件帳簿は1審原告組合の会計担当者が作成した裏帳簿とされており、他の資料からうかがわれる資金の動き(乙38、39の1・2)と符合する記録もあるなど、相応の信用性が認められる。

そして、本件帳簿は、その性質上、記載に具体性を欠くことはやむを得ないところ、その記載自体からでも、同月30日までに200万円、同月31日に100万円が1審原告組合書記長のT1の扱いで山口組YK組系KY組総長であるKYに流れたことがうかがわれる。

そうすると、KYが1審原告組合の会館に来たときに現金を持ち帰ったのかや、1審原告組合からKYに対する資金提供が定期的であったのかについては不明であるものの、上記bのとおり、KYが1審原告組合の会館に出入りしていたとの亡村上の供述があることも併せ考えると、1審原告組合がKYに一定の資金を提供したことについて、1審被告一ノ宮ひいては1審被告会社が真実であると信ずるにつき相当の理由があるということができる。

dそして、上記b及びcにおいて相当性が認められる事実は、本件記述4が摘示する「1審原告組合の事務所に山口組系組員が出入りし、定期的に大金を持ち帰ったこと」という事実の重要な部分であると解されるから、この摘示事実については相当性が認められる。」

 (14)

原判決17項18行目の「エ」を「ウ」に、同22行目の「オ」を「エ」に、同23行目冒頭から同26行目の「事実が」までを次のとおりそれぞれ改める。

   「 1審原告組合が行った抗議活動は、街宣車やマイクロバスを用い、拡声器を用いて騒ぎ立てたり、実力を行使したりし、繰り返し対象企業の業務を妨害するもので、不法行為法上違法の評価を免れないと判断されるような態様で行われたものであり、これにより1審原告組合が解決金を取得することがあったことが認められるが(乙5、20、29、33の1〜3、弁論の全趣旨)、1審原告組合が業務妨害専門の街宣部隊を編成していたことまで認めるに足りる的確な証拠はない。

    したがって、本件記述6において摘示された事実のうち、重要な事実について、」

 (15)

原判決18項2行目の「できない」の次に「から、論評としても相当とはいえない」を加える。

 (16)

原判決18項3行目の「カ」を「オ」に、同19項1行目の「キ」を「カ」に、同2行目冒頭から同4行目の「照らせば」までを「これまで述べたとおり」に、同5行目の「前記ア」から同9行目の「除く。」までを「本件記述3及び本件記述4において摘示された事実のうち1審原告X1が山口組と親密な関係にあるという事実、本件記述5及び本件記述6」にそれぞれ改める。

 (17)原判決19項13行目の「ク」を「キ」に、同14行目冒頭から同23行目末尾までを次のとおりそれぞれ改める。

   「 以上からすれば、本件記述4において摘示された事実のうち、1審原告X1と山口組が親密な関係にあるという事実以外の事実については相当性が認められ、違法性阻却事由が認められる。

     しがたって、1審被告らは、本件各記述のうち、本件記述1、本件記述3、本件記述4において摘示された事実のうち1審原告X1が山口組と親密な関係にあるという事実、本件記述5及び本件記述6について、1審原告らに対する名誉毀損による共同不法行為責任を負うというべきである。」

 (18)

原判決19項25行目の「原告らの」を「前記1及び2で述べたとおり、本件記述2は1審原告らの」社会的評価を低下させるものとまでは認められないし、他の本件各記述は1審原告らの社会的評価を低下させるが、実際に1審原告らが暴力団と一定の関係を有するとうかがわれることからすれば、その社会的評価の低下の程度は著しいものではなく、また、本件記述4におて摘示された事実の一部については相当性が認められるところである。このような1審原告らの」に改める。

 (19)原判決20項5行目冒頭から同6行目の「ないから、」までを「前記のとおり、1審原告らが暴力団と一定の関係を有することがうかがわれるから、1審原告らの」に改める。

 2 当審における当事者の補充主張に対する判断

 (1)本件記述8について

    本件記述8は、名神高速道路大山崎インターチェンジの工事において、加水された生コンクリートが使用されたいた旨を示すものであり、本件表題や本件記事のリード部分の記述と併せて見れば、1審原告が生コンクリートに加水するという不正な方法により生み出された利益を得ており、それが弘道会に流れているかのような印象を与える可能性があることは否定できない。

 しかしながら、本件記事には上記不正に関連する具体的事情は何ら記述されていないのであるから、一般読者としては、本件記述8によって、上記不正と1審原告らとの関連性を確認することはできず、弘道会との関連性についても具体的事実を読み取ることは困難である。 したがって、本件記述8が1審原告らの社会的評価を低下させるものとは認められない。

 (2)本件記述9について

    1審原告らは、本件記述9は、1審原告X1が代表者を務める1審原告組合を半グレ集団と呼称するものであり、これによりその名誉感情を傷つけられた旨の主張をする。

    しかしながら、本件記述4においても1審原告組合が半グレ集団と呼称されており、1審原告らはこの部分も含めて名誉毀損の不法行為が成立すると主張するものであるから、本件記述9についても実質的には同趣旨の主張をするものと解され、本件記述4と合わせて評価すれば足りるというべきである。そして、本件記述4において摘示された事実のうち、半グレ集団との記述により摘示された、1審原告組合が反社会的な活動を行うことのある集団であるという事実に関し、不法行為が成立するとは認められないことは、補正の上引用した原判決が認定説示するとおりである。

    なお、半グレ集団又は半グレとの呼称について、必ずしも厳密な定義が存在するわけではないが、一般的には、暴力団、暴走族等の既存の組織には所属せず、暴力団、暴走族等と同様の、反社会的な活動を行う集団を指すとされているところ(甲12,13の1・2、29から31まで)、本件記述4については、補正の上引用した原判決が認定説示するとおり、1審原告組合が反社会的な活動を行うことのある集団であることについて相当性が認められるのであり、上記定義に照らしても論評としての域を逸脱するようなものとは認められず、違法性を認めることはできない。

 (3)まとめ

    したがって、1審原告らの上記補充主張はいずれも採用することができない。

 3 結論

   以上のとおりであるから、当裁判所の上記判断と同旨の原判決は正当であって、本件各控訴はいずれも理

由がない。

 よって、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第12民事部

   裁判長裁判官 杉原則彦

      裁判官 渡邉和義

      裁判官 吉岡大地

これは正本である。

平成30年1月31日

  東京高等裁判所第12民事部

   裁判所書記官  太田 勝