福岡労委令和2年(不)第6号山川運輸不当労働行為救済申立事件 決定書

決定書(写)

     福岡市南区大橋4 ― 3 — 5
申立人  首都圏青年ユニオン連合会
     執行委員長  X1

     静岡県富士市蓼原218番地の8
被申立人 山川運輸株式会社
     代表取締役  鈴木 裕

上記当事者間の福岡労委令和2年(不)第6号山川運輸不当労働行為救済申立事件について、当委員会は、令和3年1月14日第2123回及び同月21日第2124回公益委員会議において、会長公益委員山下昇、公益委員服部博之、同大坪稔、同所浩代、同上田竹志、同德永響及び同森裕美子が出席し、合議の上、 次のとおり決定する。

主文

本件申立てを却下する。

理由

1 事案の概要

本件は、申立人首都圏青年ユニオン連合会の令和2年2月28日以降7回の団体交渉(以下「団交」という。)申入れに対し、被申立人山川運輸株式会社が新型コロナウイルスの感染状況に鑑み県をまたぐ移動はすべきでないなどとして団交開催に応じなかったことが、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為であるとして、団交応諾を求めて申し立てられたものである。

2 当委員会の判断

当委員会が申立人組合の資格審査を行った結果、別紙(資格審査決定書の「適合しない理由」)のとおり、申立人組合は労働組合法2条の規定に適合しない。

したがって、申立人組合が労働組合法上の救済を受ける資格を有するものと認めることはできないから、本件申立ては却下する。

3 法律上の根拠

以上の次第であるので、当委員会は、労働委員会規則33条1項2号に基づき、主文のとおり決定する。

令和3年1月21日

福岡県労働委員会
会長  山下 昇

【別紙】

資格審査決定書の「適合しない理由」

(1)

労働組合法2条は、同法でいう「労働組合」を、「労働者が主体となって 自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目 的として組織する団体又はその連合団体をいう。」と定義している。

まず、労働組合法2条の労働者が「主体となって」というのは、当該団体の構成員中、その大部分の者が労働者であって(量的面)、しかも、その団体の主要な地位を労働者が占めている(質的面)こと、すなわち、労働者が量質ともにその団体の構成員の主体とならなければならないという趣旨である。

したがって、労働者でない者が、量質いずれにおいてもその構成員の主体とならない限度において、労働組合に加入することは差し支えないわけであるが、逆に、例えば、労働者でない者がたとえ数的にはその構成員の大部分を占めない場合であっても、それらの者が実質的に当該団体の中心的地位を占め、その主体をなしているというような場合には、当該団体は、労働組合法にいう労働組合とは認められないことになる。

そして、労働組合法3条は、同法でいう「労働者」を、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」と定義している。

労働組合法上の労働者は、単に雇用契約によって使用される者のみに限定されず、組合契約、請負契約、委任契約等によって労働に従事する者であっても、他人との間において使用従属の関係に立ち、その指揮監督の下に労務に服し、労働の対価として報酬を受け、これによって生活する者である。

(2)

本件における組合の実態をみると、組合役員は、執行委員長と書記長(兼政策企画委員,広報委員。以下「書記長」という。)の2名であり、執行委員長であるX1令和2年11月27日就任。以下X1であることが認められる(当委員会が行った調査に対する組合の資格審査事項回答書(以下「回答書」という。)

そうすると、X1が、上記の「他人との間において使用従属の関係に立ち、その指揮監督の下に労務に服し、労働の対価として報酬を受け、これによって生活する者」に該当すると認めることはできない。

このように、組合において、労働組合法上の労働者とは認められない者が、組合役員の2名のうちの1名、しかも執行委員長の地位にあって、そうした者が実質的に当該団体の中心的地位を占め、その主体をなしているものというべきである。

したがって、組合は、労働者が主体となっているものとは認められず、労働組合法2条の規定に適合するとは認められない。

なお、組合は、■■■■■■■■■■ではあるが、いわゆる「雇われ社長」であり、別途会社名義及び個人名義で取引先との業務委託契約を締結し、契約の相手方の指揮監督下で業務を行っている実態があるとして、労働組合法上の労働者性が認められるなどと主張しているが(回答書(3)1(2)2)、その実態はなお不明であり、上記判断を左右するものではない。

労働組合法2条でいう「自主的に」とは、労働者が白ら進んで労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として労働組合を結成することをいうのであって、政府、政党、使用者等の外部の者の支配介入を許さず、また、組合幹部の独裁によらず、組合員の総意によって民主的に組織運営されることを要するのである。

そして、組合幹部の独裁を排し組合の民主的運営を確保するために同法5条等の規定を置いている。

労働者が組合の組織,運営に関して自主的でなければならないということは、具体的には、少なくとも、①外部の者の支配干渉を排除して自主的であることを指し、さらに、②組合幹部など一部の者の独裁に対する関係で苜主的であることも求められるというべきである。

本件における組合についてみると、その規約は、「第11条大会は、当ユニオンの最高議決機関であって、議決権を有する組合員をもって構成する。」、「第12条定期大会は、年1回開催するものとし、執行委員長が議決権を有する組合員を招集し開催する。」、「第16条各役員の選挙は、大会における議決権を有する組合員の直接無記名投票によって選出する。」と定めている。

この「議決権を有する組合員」について、規約第15条第1項によると「当ユニオンが組合費を無料とし、組合員の組合運営負担を最小限のものとする趣旨に基づき、本規約において「議決権を有する組合員」とは、組合執行部(執行委員会、書記局、専門委員会)に所属し、予め当ユニオンより議決権を有するものと指定された者をいう。」と規定されている。

そして、組合によると、現在、大会の議決及び役員選任に係る「議決権を有する組合員」はわずか2名であり、この2名は、令和2年11月26日まで■■■■■■■■、同月27日以降は現役員であるX2である(回答書(3)1(1)、臨時大会議事録)。

また、規約上一定の要件を満たした場合、一般の組合員も議決権を取得する旨の規定があるものの、大会の開催に当たり、日程や議題等について議決権を有しない組合員に対しては周知を行っていないなど、事実上、議決権は組合執行部に所属する一部の組合員に制限されている(回答書第1の3(2)、同4(2))。

このように、組合においては、一般の組合員には議決権や役員選任の投票権はなく、一般の組合員は組合の運営にかかわっていない実態がある。

さらに、組合は、平成29年8月1日の東京都労働委員会による法人登記のための資格審査適合決定後、同年9月1日に規約を改正し、組合大会の議決権を「執行部に所属し、予めユニオンより議決権を有するものと指定された者」に制限する内容に改めている。

ここで、労働組合法5条2項9号の規定によると、規約は組合員(全国的規模をもつ労働組合の場合は、その組合員の直接無記名投票により選挙された代議員)の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこととされている。とすれば、東京都労働委員会から資格審査適合決定を受けた当時は、組合の規約改正に係る規定は同号に適合した内容であったものと考えられる。

しかしながら、組合によると、その改正手続は、執行部所属組合員及び協力組合員で手分けして、組合員に電話連絡を行った上で規約改正の同意確認を行い組合員過半数の支持を得たとの方法によるとのことである(回答書第1の7(3))。このような方法が直接無記名投票であるとは到底いえない。このように、組合は一部の幹部によって所定の手続を踏むこともなく規約を変更することができ、実態として、議決権や投票権を一部の者に限定して運営しているものと認められる。

以上の状況を踏まえると、組合は、実態として、公称組合員11万人(実際は、令和2年10月1日時点で72,826人(回答書(2)1(2)〕〉を有する組合の運営を役員2名のみで行っており、組合の運営に対して、役員以外の一般の組合員の意思を反映させることは困難であるといわざるを得ず、組合幹部など一部の者の独裁に対する関係で自主的であるとはいえない。

なお、組合は、規約改正の意向を示しているが、このような実態は外形上規約を改正することによって補正できるものではない。

(3)

また、本件における組合の決算書(令和元年6月1日から令和2年5月31日まで)をみると、収入の部に寄付金収入として50,000円、支出の部に消耗品費10,000円、雑費5,000円、大会費10,000円、委員会費5,000円及び予備費10,000円として計40,000円が計上され、10,000円を次年度に繰り越している。そうすると、組合の支出は40,000円のみということになるが、組合は、一般事務用品や書面印刷代等の事務経費、労働委員会の期日出頭等の旅費及び宿泊費等の組合活動に係る経費は発生しているものの、それらの不足する経費は、有志や各組合員の寄付等の負担によって維持されているとして、決算書に記載がないと主張する(回答書第1の5(3)〕。

また、組合は、組合事務所については、令和2年3月10日の福岡市への移転前の東京都においても、移転後の福岡市(福岡市においても令和2年12月4日付けの報告によると福岡市博多区から南区に移転)においても、組合の活動に賛同する個人や企業から最小限の事務所スペースを無償で提供されていると主張する(準備書面(1)1〈1〉、回答書第1の1〔1〕〕。

であるならば、実際には、組合の運営に当たって決算書よりも多くの経費が必要であるにもかかわらず、決算書からは組合の会計の実態が明らかではなく、結局、外部の者を含む一部の者の出捐によりその経費がまかなわれていたものと認められる。このように、多くの支出を外部の者を含む一部の者の出捐によっている組合財政は、外部の者や組合幹部の多大な影響を受けるものであり、外部の者の支配干渉を排除しているものとは認められず、組合幹部など一部の者の独裁に対する関係で自主的であるとはいえない。

上記⑵及び⑶のとおり、組合は、労働者が白主的に組織する団体とは認められず、労働組合法2条の要件を欠いているといわざるを得ない。

上記1及び2で検討したとおり、組合は労働組合法2条の要件を欠いている。

よって、同法5条2項の要件を検討するまでもなく、組合が、労働組合法に規定する手続に参与し、同法による救済を受ける資格を有するものであると認めることはできない。


底本 令和3年2月18日取得

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