清水直子委員長が全代議員を指名するプレカリアートユニオン定期大会「指名翼賛選挙」は、なぜ違法・無効なのか?

プレカリアートユニオンの違法「翼賛選挙」……清水直子氏本人の弁明

プレカリアートユニオンでは、既にご紹介したように、委員長・清水直子氏が、毎年の大会でほぼ全ての代議員を指名し、組合員には一切選挙・立候補の機会が与えられないまま、自らを執行委員長に任命し、他の都合のよい人物を執行委員などに充てそれによってプレカリアートユニオンから清水直子氏自身に対し700万円弱にもなる高額な役員報酬を支払わせています。

これについて、清水直子氏は、

「プレカリアートユニオンの定期大会は正式に成立し、組合員も定期大会であると認識し、定期大会で選出された代表者、執行部が実際に組合の運営を執行しています。」

「東京都労働委員会から資格審査証も発行されています。」

と弁明しています(3月13日付「回答書」)

DMUは、正直なところ、清水直子氏の見識に驚かされました。

まず、都労委の資格証明書は、5条2項については、形式審査によって発行されるものです。

つまり、その規約が実際には違反されているものであっても、規約として存在していれば、審査を通過して資格証明書が発行されるのです。

問題になっているのは、清水直子氏が昨年度定期大会を招集するにあたって、規約を遵守したかどうかなのですが、清水直子氏の弁明は、「規約は法律に適合している」という趣旨なのです。

そこは論点じゃありません。

論点は、清水直子氏が、その法律に適合した規約に違反し、自らを当選させ、経済的利益を得ているという点です。

違法翼賛選挙「開き直り」清水直子委員長の驚きのロジック

残りの部分ですが、仮に規約に違反していても、

組合員は定期大会だと思っている
実際に清水直子氏ら執行部が実権を握っている

(正式に成立し、は意味が明らかではないのでここでは省きます。規約違反なのに”正式”は無いと思いますが。)

から合法だというのです。

これには、当研究所代表も、深いため息をつきました。

というのも、これって要するに、会社の金を横領して買い物をした人が、

店員もオレのお金だと認識している!
オレが実際に、その現金を持っている!

だからオレの金だ!
と主張するのと、なんら変わらないですよね。

こういうのを「開き直り」といいます。

そして、開き直りは、小学校の職員室から裁判所まで、どこに持っていっても通用しません。

判例は違法選挙に厳しい判断、どうなるプレカリアートユニオンの違法選挙問題

たとえば、有名な全日本海員組合執行委員長選挙無効事件(第1審)は、組合の役員選挙に、泡沫候補のひとりが入場を拒まれたことを理由として選挙自体の無効を認めています。

判例から紹介しましょう。

被告(海員組合)らは,仮に,原告(泡沫候補)主張にかかる本件選挙の瑕疵,すなわち本件入場拒絶ないし直接無記名投票によらなかったという点が違法と評価されるとしても,それは手続上の違法にすぎないから,本件選挙の無効事由とはなり得ない旨主張する。

これについて,団体内部における意思決定手段としての決議等に違法がある場合,それが手続上のものであろうが,決議の内容上のものであろうが違法であることに変わりはなく,その効力は否定されるのが原則である…………このようにみると,前記会社法の規定の準用がない労働組合のような団体においては,前記原則にかえり,決議等に違法がある場合,それが手続上のものであるか内容上のものであるかを問わず,原則として無効事由となると解するのが相当である(少なくとも,会社法830条,831条の準用のない団体において,手続上の違法を一律に不問に付する合理的な理由はない。)。

もっとも,決議等の内容について違法がある場合はともかく,手続上の違法には極めて軽微なものも存し,そのすべてが決議の無効をきたすとすれば法的安定性を損なうおそれも否定できないことから,それが重大なものでなく,かつ,明らかに決議等の内容に影響を及ぼさないと認められる特段の事情がある場合には,例外的に決議等の無効事由とならないものと解される。

被告海員組合がいう「それは手続上の違法にすぎないから,本件選挙の無効事由とはなり得ない旨主張する」というのは、要するに、仮にミスがなくても(泡沫候補が入場できていても)、結果は変わらないでしょ、ということです。

しかし裁判所は、この主張を一蹴しています。手続上のものか実質上のものかを問わず、あくまでも原則は無効である、ということです。

もちろん、ごく些細なミスですぐに無効となるのは、社会生活上望ましくありません。そこで、明らかに決議等の内容に影響を及ぼさないと認められる特段の事情があれば有効を維持できるという余地も残してはいます。

しかし、清水直子氏がほぼ全ての代議員を指名するという行為が、決議の内容に影響を及ぼさないはずがありません。

私が清水直子氏なら、確実にコントロールできると見込まれる者を出席させますし、プレカリアートユニオン内での聞き取り調査の結果、そうであった可能性は高まりつつあります。

現在、詳細な分析をおこなっています。

ちなみに、上記で紹介した判決は、その後東京高裁で取り消されて、選挙無効の判断は失われています。とはいえ、ここでは詳細に立ち入ることはしませんが、上で紹介した労働組合の選挙・大会の有効性に関する一般原則が否定されたわけではありません。

泡沫候補のひとりを入場拒否しただけでも無効判断が出ることがあるのに、清水直子氏が代議員を全員指名したプレカリアートユニオンの「定期大会」が有効といえる余地があるのでしょうか。

そして、そのようにして選出した臨時執行委員会による、当研究所代表に対する「権利停止処分」は果たして有効なのか。

この点が、仮処分事件の大きな争点となっています。

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